司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

法制審議会家族法制部会第32回会議(令和5年10月31日開催)

2023-10-31 22:17:19 | 民法改正
法制審議会家族法制部会第32回会議(令和5年10月31日開催)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00342.html

 家族法制の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けたたたき台について議論がされたようである。

 やはり「共同親権」の問題が争点。

「11月以降もさらに内容を詰める。議論がまとまれば来年の通常国会に民法改正案が提出される可能性があるが、曲折も予想される。」(後掲記事)

cf. 日経記事
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE31A530R31C23A0000000/
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「官報の発行に関する法律案」等が閣議決定

2023-10-31 19:18:46 | いろいろ
「官報の発行に関する法律案」及び「官報の発行に関する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案」が本日閣議決定された。

 インターネット官報が正式となり,紙の官報は従たる位置付けとなる。

 公布は,週明けか。

cf. 日経記事
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA311Y80R31C23A0000000/

「官報電子化の基本的考え方」(令和5年10月25日官報電子化検討会議)
https://www.cao.go.jp/others/soumu/kanpo/index.html
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遺言により相続分がないものと指定された相続人は,遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しない

2023-10-31 19:10:28 | 民法改正
最高裁令和5年10月26日第1小法廷決定
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92453

【判示事項】
遺言により相続分がないものと指定された相続人は,遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しない

「民法1050条5項は、相続人が数人ある場合における各相続人の特別寄与料の負担割合について、相続人間の公平に配慮しつつ、特別寄与料をめぐる紛争の複雑化、長期化を防止する観点から、相続人の構成、遺言の有無及びその内容により定まる明確な基準である法定相続分等(※ 民法900条から902条までの規定により算定した相続分)によることとしたものと解される。このような同項の趣旨に照らせば、遺留分侵害額請求権の行使という同項が規定しない事情によって、上記負担割合が法定相続分等から修正されるものではないというべきである。」


 事案の概要は,次のとおりである。

1.関係者
 被相続人 A
 相続人 B及びC
 その他 D(Bの妻)

2.遺言
「Aは、生前、Aの有する財産全部をBに相続させる旨の遺言をしていた。上記遺言は、Bの相続分を全部と指定し、相手方の相続分をないものと指定する趣旨を含むものである。」

3.遺留分侵害額請求
 Cは,Bに対し,遺留分侵害額請求権を行使した。

4.特別寄与料の請求
 Dは,Cに対して,特別寄与料の請求をした。


 おそらく遺留分侵害額請求に対する対抗策として特別寄与料の請求をしたのだと思われるが,すっきりしない感。


民法
   第10章 特別の寄与

第1050条 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
2 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。
3 前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。
4 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
5 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第九百条から第九百二条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。
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吸収合併消滅株式会社の株主が吸収合併をするための株主総会に先立って上記会社に対して委任状を送付したことが吸収合併等に反対する旨の通知に当たる

2023-10-31 18:45:05 | 会社法(改正商法等)
最高裁令和5年10月26日第1小法廷決定
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92454

【判示事項】
吸収合併消滅株式会社の株主が吸収合併をするための株主総会に先立って上記会社に対して委任状を送付したことが会社法785条2項1号イにいう吸収合併等に反対する旨の通知に当たるとされた事例

「本件のように、株主が上記株主総会に先立って吸収合併等に反対する旨の議決権の代理行使を第三者に委任することを内容とする委任状を消滅株式会社等に送付した場合であっても、当該委任状が作成・送付された経緯やその記載内容等の事情を勘案して、吸収合併等に反対する旨の当該株主の意思が消滅株式会社等に対して表明されているということができるときには、消滅株式会社等において、上記見込みを認識するとともに、上記機会が与えられているといってよいから、上記委任状を消滅株式会社等に送付したことは、反対通知に当たると解するのが相当である。」
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会社法第341条は株主総会の決議につき定足数に頭数要件を定款の定めにより設けることを認めていないとした事例

2023-10-30 19:54:28 | 会社法(改正商法等)
東京高裁令和4年10月31日判決
https://lex.lawlibrary.jp/commentary/pdf/z18817009-00-051722350_tkc.pdf

「会社法第341条は株主総会の決議につき定足数に頭数要件を定款の定めにより設けることを認めていないとした事例」の評釈である。

cf. 得津晶「頭数要件による株主総会定足数を定める定款規定の有効性」(法学教室2023年8月号)

令和5年8月1日付け「出席株主全員の賛成で決議が成立する旨の定款規定と総会決議の取消し」
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外国人の起業誘致へ要件緩和

2023-10-30 08:23:49 | 会社法(改正商法等)
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA193890Z11C23A0000000/

「政府は事業所などの要件を緩和し、起業の促進に向けた環境を整備する。出入国在留管理庁が2024年度中にも在留資格の「経営・管理」に関する省令などを改正する。
 国家戦略特区と経済産業省に分かれている2つの事業を統合する。事業計画が認められれば全国で2年間滞在できる。」(上掲記事)

「事業計画」の審査のハードルが高ければ,現状と変わらないし,低ければ,ゆるゆるになり過ぎる。

 一部特定少数の大きな声に反応し過ぎの感もある。

 在外外国人のみが代表者である会社設立ができるようになっているので,来日前に設立登記を了してから,ビザの取得でよさそうであるが。
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会社法施行規則等の一部改正のパブコメ

2023-10-27 17:55:29 | 会社法(改正商法等)
「商法施行規則の一部を改正する省令案」等に関する意見募集
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080300&Mode=0

〇 改正の趣旨
 本省令案等は、令和4年12月にデジタル臨時行政調査会が示した「デジタル原則を踏まえたアナログ規制の見直しに係る工程表」を踏まえ、特定の記録媒体の使用を定める規定につき、新たな情報通信技術の導入・活用に円滑に対応することができるよう、商法施行規則(平成14年法務省令第22号)等の一部の改正を行うものである。


 会社法施行規則第222条第1項第2号の「磁気ディスクその他これに準ずる方法により一定の情報を確実に記録しておくことができる物」を「電磁的記録媒体(第224条に規定する電磁的記録媒体をいう。)」を置き換える等の改正がされる。
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法務大臣閣議後記者会見の概要「公証人による定款認証の見直しに関する質疑について」

2023-10-22 10:58:25 | 会社法(改正商法等)
法務大臣閣議後記者会見の概要(令和5年10月17日(火))
https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00454.html

「もうこれは何としても前へ進めたい、進めなければいけない。そういう思いで・・・」

 えっ,えっ~。

「なかなか定款を認証してもらうのに時間が掛かる、スピードが勝負の世界で数か月掛かるみたいな、そういう御批判もありました・・・」

 そんな馬鹿な・・・。そんなことがあるわけがないし,仮にあったとしても,万に一つの事例であろう。「スピードが勝負」ならば,「時間を買う」ために,専門家に相談するのが経営判断である。



○ 公証人による定款認証の見直しに関する質疑について
【記者】
 株式会社の定款申請から認定までについて、オンライン活用の幅を広げられないか有識者会議を開いて検討することになっていますが、オンライン活用をする意義や期待、今後のスケジュールを教えてください。

【大臣】
 今月11日に政府全体の取組として、デジタル行財政改革会議が立ち上がりまして、また開催されまして、その中で岸田総理から各関係閣僚に指示が下りたわけであります。法務大臣の私にも、公証人による定款認証の見直しを行うように、という指示がありました。ちょっとその部分の総理のお言葉を御紹介しますと、途中からですけれど、「この社会変革を進める上でスタートアップの活用、これも重要です。システム調達におけるスタートアップの参入機会の拡大を進めてまいります。これについては小泉大臣に、是非、創業環境の改善のため、公証人による定款認証の見直しをお願いいたします。」、こういう指示を頂きましたので、もうこれは何としても前へ進めたい、進めなければいけない。そういう思いで事務方のほうに、できる限り早期にでき得る限り幅広く検討して、この総理の指示にしっかり応えられる方針を出そうと。そういう検討作業を始めているところであります。
 中身については、まだ本当に鋭意やっているところでありますので、こうだということは申し上げられませんが、今、御質問あったオンラインの活用というのは、今、舞台がデジタル行(財)政改革ですからね。当然、オンラインの活用というのは視野に入ってきます。重要な要素として視野には入ってきます。具体的にそれをどうするかは、もうちょっと我々の検討を深めた上で、道筋が見えたところで御説明したいというふうに思っていますが、スタートアップの企業が、なかなか定款を認証してもらうのに時間が掛かる、スピードが勝負の世界で数か月掛かるみたいな、そういう御批判もありましたので、思い切ってそれを短縮するということを含めて、今、検討を進めておりますので、また遠からず御説明できる機会が来ると思います。
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学校法人のガバナンス改革に関する改正私立学校法は令和7年4月1日施行

2023-10-19 16:10:16 | 法人制度
私立学校法の改正について(令和5年改正)
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiritsu/mext_00001.html

 令和7年4月1日施行である。説明資料のほか,改正対応の寄附行為の変更に関する説明動画も掲載されている。
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芦屋市の「芦」の字の表記について(補遺)

2023-10-18 10:25:37 | 不動産登記法その他
司法書士とくの日記
https://tokucyan-siho.hatenablog.com/entry/2020/09/03/000000

 兵庫県芦屋市の「芦」の字について,住民票や印鑑証明書の住所記載では,くさかんむりに「戸」の文字になっている。

 ところが,

「神戸地方法務局東神戸出張所では、芦屋市の「芦」の文字を、くさかんむりに「戸」の文字の外字で申請しても、普通の「芦」で登記されますので、おそらく、普通の「芦」で統一しているのだと思われます。
(近くの)管轄外の法務局では、くさかんむりに「戸」の外字になっていることが多く(うっかり普通の「芦屋市」で申請しても、(補正指示まではありませが)法務局によっては(神戸地方法務局本局や西宮支局なんかがそうだと思いますが)、きちんと住民票通りの「くさかんむりに「戸」の文字」で登記されます)」(上掲ブログ)

 地名なので,登記所も「統一」すべきでは。

 近くない管轄外の登記所では,困惑ものでしょう。こういうことで,「どっちの字にする?」と確認の電話をする登記所側も,その電話を受ける申請人側も,無用の時間を費やしている感。

cf. 平成29年10月12日付け「芦屋市の「芦」の字の表記について」

 ん~,こういうことでは,「所有不動産記録証明書制度」が機能するとは,とても思えないのだが。

 余談ながら,日司連の「司法書士検索」で芦屋市に事務所がある会員を検索すると,事務所の表示は,普通の「芦」の字と,外字である「くさかんむりに「戸」」の字が混在している。

 何だかな。
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遠隔操作アプリを悪用して借金をさせる副業や投資の勧誘に注意

2023-10-18 09:00:52 | 消費者問題
国民生活センター
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20230607_1.html

 遠隔操作アプリを悪用して借金をさせる副業や投資の勧誘が横行しているようだ。

 エニーデスク(Anydesk)というアプリが使われているらしい。このアプリ自体は,どういうこともないのだが,ツールとして悪用されていることが多いということである。

 御注意を。
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令和5年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)が始まる

2023-10-13 05:11:34 | 会社法(改正商法等)
令和5年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00083.html

 今年度の休眠会社等の整理作業に関して,「会社法第472条第1項の届出,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第149条第1項の届出及び第203条第1項の届出」に関する公告がされた。

cf. 官報
https://kanpou.npb.go.jp/20231012/20231012h01080/20231012h010800010f.html

「令和5年12月12日(火)までに必要な登記(役員変更等)の申請又は「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしない限り、同月13日(水)付けで解散したものとみなされ、管轄登記所の登記官により職権で解散の登記がされますので、御注意ください。」

 登記所からの通知の封筒は,目立たないのか,見過ごされがちであるようであり,御注意ください。

 みなし解散となってしまった株式会社等に対して,翌年2月頃に税務署から「みなし解散法人の申告についてのお知らせ」が送付され,その時点で事態が発覚するケースが少なくないようである。
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スタートアップ設立円滑化のための公証人による定款認証に関する見直し

2023-10-13 04:11:59 | 会社法(改正商法等)
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA12CEA0S3A011C2000000/

「スタートアップ設立円滑化のための公証人による定款認証に関する見直し」の議論が進むようである。

cf. デジタル行財政改革会議(第1回)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/gijishidai1.html
※資料4

 しかし,「手続きの煩雑さが起業の負担」(上掲記事)と,この種の会議では盛んに言われているが,果たして事実なのか。

 株式会社の設立手続は,個人とは別の「法人格」を作出する行為である。株式会社は,本来,会社法その他の法令をきちんと理解した人々が利用すべき「社会の公器」である。しかし,会社法が定める手続をろくに理解しようともせずに,ゲーム感覚で設立手続をしようとして,うまく行かず(定款認証や設立登記の申請が補正の山らしい。),それを理由に,「手続が煩雑,面倒だ。もっと簡単にしろ」という一部の声を取り上げて,必要以上に「見直し」を進めるのは,ちょっと違うのではないか。

「起業の促進」と言えば,聞こえはいいが,「法人格」を作出してはポイ捨てをする,粗製濫造の社会に堕することになりかねない。

 逆に,「法人格」を利用するには,一定のライセンスのようなもの(運転免許のような)を必須としてもよいのではないか。

 今回の見直しが,法治国家としての規律を失わせるようなことにならなければよいが。
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戸籍上の性別を変更するには生殖能力をなくす手術を受ける必要があるとする法律の規定は憲法違反

2023-10-12 16:12:16 | 家事事件(成年後見等)
NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231012/k10014223241000.html

 静岡家庭裁判所浜松支部は,戸籍上の性別を変更するには生殖能力をなくす手術を受ける必要があるとする法律の規定は,憲法に違反して無効だとする判断を示した。

「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」第3条第1項第4号は,性別の取扱いの変更の審判の要件として,「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」を掲げている。

cf. 性別の取扱いの変更 by 裁判所
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_23/index.html
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法務大臣閣議後記者会見の概要「デジタル技術を活用した遺言制度の在り方に関する検討会に係る質疑について」

2023-10-12 09:28:54 | 民法改正
法務大臣閣議後記者会見の概要(令和5年10月6日(金))
https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00451.html

〇 デジタル技術を活用した遺言制度の在り方に関する検討会に係る質疑について
【記者】
 自筆証書遺言の作成におけるデジタル技術の活用に関してお尋ねします。昨日、民間研究会の初会合が開催されて法務省も参加されたかと存じますけれども、可能な範囲で初会議での議論の内容ですとか、改めて議論に期待することをお聞かせください。

【大臣】
 まさに昨日、民間の、民事法の研究者、実務家等を構成員とする、法務省からも担当者が入って研究会が立ち上がりました。高齢化社会の中で、相続あるいは相続制度というものは、大変大きな意味を持ち、多くの方が関わり合いを持つ課題になっていまして、その相続制度を支える大きな仕組みが遺言という仕組みでありますので、日本の社会全体に大きな関心事項となり、重要な課題だというふうに思います。
 昨日の1回目の研究会では、1回目でありますので検討事項を幅広く皆さんで議論していただくと。それぞれの中身についても議論があったかもしれません。こういうことを検討していこうということについて、大枠の意見交換が行われたものと承知しております。これは、利便性も大事だし、一方で遺言の信頼性も大事だし、煩雑であっても困るけれども、信頼性が揺らいでも困るという、そこの知恵の出し方。端的に言えば価値判断につながるかもしれませんが、そういうところを一回深めていかないとしっかりした答えが導けない問題だと思いますので、関係者の方々が積極的に関わっていただいて議論をしていただきたいと思うし、報道機関の方々にも関心を持っていただければ有り難いと思うので、折々、進捗状況について御報告できるようなことがあれば、心掛けて皆さん方にも途中経過をできる限り報告はしたいというふうに思っております。
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