標記につき,令和6年10月1日,最高裁第三小法廷で,弁論が開かれるらしい。
原審(東京高裁)は,「被相続人の兄弟姉妹(A)が相続人となるべき場合において、兄弟姉妹が相続開始以前に死亡したとき等に、民法889条2項において準用する同法887条2項ただし書により、被相続人の傍系卑属でない者は兄弟姉妹(A)を代襲して相続人となることができないが、傍系卑属であれば代襲相続人となることができる」と判断したらしいが・・・。
これを肯定することは難しいのではないか。昭和37年改正や昭和55年改正の際に,どのような議論がされたのかを考慮すべきであろう(昭和37年改正の際は,ほとんど議論されていないようだ。)。
Bの相続に関して,AがBよりも先に死亡しているとき,X1及びX2は,代襲相続人たり得ない(民法第887条第2項ただし書)にもかかわらず,Bの実子の相続に関して,X1及びX2に代襲相続を認めるのは,平仄が合わないであろう。
cf. 最高裁「事案の概要」
https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/2024/jiangaiyou_05_165.pdf
○ 事案の概要
◇ 被上告人X1、X2の母であるAは、X1 らの出生後に、被相続人の母であるBと養子縁組をしたことにより、被相続人の妹となった。X1 らの祖母とBとは姉妹であったため、養子縁組前からX1 らは被相続人の5親等の傍系親族であったが、X1 らとB及び被相続人との間に養子縁組による新たな親族関係は生じていない。
◇ 本件は、X1 らが、被相続人の死亡以前に死亡したAを代襲して被相続人の相続人となるとして、被相続人の遺産である土地及び建物について、相続を原因とする所有権移転登記及び持分移転登記の各申請をしたところ、これを却下する旨の各決定を受けたため、上告人を相手にその取消しを求める事案である。
○ 原判決及び争点
◇ 原判決は、民法889条2項において同法887条2項の規定を準用するに当たっては、同項ただし書の「被相続人の直系卑属でない者」を「被相続人の傍系卑属でない者」と読み替えるのが相当であり、被相続人の傍系卑属であるX1らは、Aを代襲して被相続人の相続人となることができるとして、X1らの請求を認容した。
◇ 当審における争点は、被相続人の兄弟姉妹(A)が相続人となるべき場合において、兄弟姉妹が相続開始以前に死亡したとき等に、民法889条2項において準用する同法887条2項ただし書により、被相続人の傍系卑属でない者は兄弟姉妹(A)を代襲して相続人となることができないが、傍系卑属であれば代襲相続人となることができるとした原審の判断の適否である。
【参考】
民法
(子及びその代襲者等の相続権)
第887条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第889条 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
cf. 加藤美穂子「兄弟姉妹の直系卑属がもつ代襲相続権」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shiho1949/1979/41/1979_41_45/_pdf/-char/ja
これまでの改正の経緯 by 法務省
https://www.moj.go.jp/content/001143587.pdf