商業・法人登記事務に関するQ&A by 法務省
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho06_00076.html
昨日(令和2年5月28日)付けで更新された。「継続会方式」の解説が詳細になったようである。
【Q2-1】今般の新型コロナウイルス感染症の影響により,定款で定めた定時株主総会の時期までに事業年度に係る計算書類等の作成が間に合わないため,当初予定した時期に定時株主総会を開催した上,役員選任の決議を行うとともに,会社法第317条による続行の決議を得て,計算書類の報告及び承認については継続会において実施することとした場合,改選期にある役員(任期の末日が定時株主総会の終結の時までとされている取締役,会計参与及び監査役)及び会計監査人の任期はどうなるのでしょうか。
【A】 定時株主総会を当初予定した時期に開催し,役員選任の決議を行い,計算書類等の報告及び承認については継続会(会社法第317条)において実施することとした場合において,関係者の健康と安全を配慮しながら決算・監査の事務及び継続会の開催を準備するために必要な期間の経過後に当該継続会が開催されたとき(「継続会(会社法317条)について」参照)は,当初の株主総会と当該継続会とは同一の株主総会であると認められますので,この場合の改選期にある役員(任期の末日が定時株主総会の終結の時までとされている取締役,会計参与及び監査役)及び会計監査人の任期については,当該継続会の終結時までとなるものと考えられます。これは,継続会が開催されるまでの間に定款で定めた定時株主総会の開催時期が満了する場合であっても,同様と考えられます。
もっとも,今般の新型コロナウイルス感染症の影響によりQ2-1の例のように
継続会を開催する場合において,当初の株主総会において役員等を改選する必要があるときは,継続会の開催までに相当期間を要することがあることから,当初の株主総会における決議(会社法第329条第1項)により,当初の株主総会の時点において改選期にある役員等の任期が満了するものとして,その後任を選任する方法によることも可能であると考えられます。
また,同様に継続会を開催する場合には,改選期にある役員等が辞任した上,その後任を選任する方法によることも可能であると考えられます。
<毎年4月1日から翌年3月末日までを事業年度とし,定時株主総会は毎事業年度末日の翌日から3か月以内に招集される株式会社の例>
当初予定していた時期(令和2年6月30日)に定時株主総会を開催し,本株主総会の終結により任期満了する役員を再任する決議を行い,令和2年7月30日に継続会を開催した場合,現任の役員は継続会の終結をもって任期満了により退任すると考えられますので,当初の定時株主総会において再任された役員についてする役員の変更の登記の登記原因は,「令和2年7月30日重任」となると考えられます。なお,
当初の株主総会における決議により,当初の株主総会の時点において改選期にある役員等の任期が満了するものとして,当該役員等を再任する決議を得た場合の役員等の変更の登記の登記原因は,「令和2年6月30日重任」となると考えられます。この場合には,株主総会の議事録に改選期にある役員等の任期が当初の株主総会の時点で満了する旨及びその後任を選任した旨が記載されている必要があると考えられます。
また,当初の定時株主総会の日(令和2年6月30日)をもって役員等が辞任し,同日にその後任の選任の決議を得た場合の役員等の変更の登記の登記原因は,それぞれ「令和2年6月30日辞任」,「令和2年6月30日就任」となると考えられます。
※ 「規制改革」の声に対応したもののようである。
cf.
令和2年5月27日付け「定時株主総会の「継続会方式」と役員の任期満了時期」
※ 株主総会の決議も,会社法及び定款の規定に従う必要があるので,継続会方式の場合に,「当初の株主総会における決議により,当初の株主総会の時点において改選期にある役員等の任期が満了するものとし」という点は,若干疑問がある。会社法第332条第1項ただし書には,「定款又は株主総会の決議によって,その任期を短縮することを妨げない」とあるが,これは,選任の時点において任期を短縮して選任することを意図した規定であろう。現任の取締役について,株主総会の決議によって,その任期を短縮するということが,果たして一般的に許容されるのかである。ニーズはともかくとして,会社法的に「よい」と断定してよいのか・・・。
※ 会社法的には,役員選任議案に先行する定款変更により,「継続会が開催される場合には,後任の役員の選任に関する決議がされた当初の株主総会の終了時に,改選期にある役員等の任期が満了する」旨を定めるべきであろう(附則で,役目を終えたら即削除する旨も併せて定めることも考えられる。)。
【Q2-2】Q2-1のケースで,当初の株主総会における決議により,当初の株主総会の時点において改選期にある役員等の任期が満了するものとして,その後任を選任したときは,これらの役員の変更の登記はどのように申請すればよいでしょうか。
【A】 当初の株主総会の時点で改選となった役員等に係る変更登記は,当初の株主総会の日から2週間以内に行う必要があります(会社法第915条第1項)。そのため,
継続会の開催前であっても,当初の株主総会の議事録を添付した上で,当該変更登記の申請をすることができるものと考えられます。このとき,当初の株主総会の議事録には,改選期にある役員等の任期が当初の株主総会の時点で満了する旨及びその後任を選任した旨が記載されている必要があると考えられます。
【Q2-3】Q2-1のケースで,役員(A,B,C,D及びE)のうち,当初の株主総会において,一部の役員(E)の改選が必要であるとして,その役員(E)が当初の株主総会の時点で辞任した上,その後任の役員(F)を選任するとともに,残りの現任役員(A,B,C及びD)の再選の決議をしたときは,これらの役員の変更の登記はどのように申請すればよいでしょうか。
【A】 当初の株主総会の時点で改選された役員(E及びF)に係る変更登記は,当初の株主総会の日から2週間以内に行う必要があります(会社法第915条第1項)。そのため,継続会の開催前であっても,当初の株主総会の議事録及び辞任した役員(E)に係る辞任届を添付した上で,当該変更登記の申請をすることができるものと考えられます。このとき,当初の株主総会の議事録には,新任の役員(F)が当初の株主総会の日をもって辞任した役員(E)の後任として選任された旨が記載されていることが必要です。
なお,当該株主総会の議事録から,当該株主総会においてEが辞任する旨の意思表示をした旨が判明する場合には,別途,Eの辞任届を添付する必要はありません。
再任された役員(A,B,C及びD)に係る変更登記を継続会の終了後に申請する場合には,当初の株主総会と継続会の双方について議事録を作成し,それらを添付して登記の申請をすることになるものと考えられます。
なお,
当該変更登記の申請の際に添付すべき株主リストについては,当初の株主総会において当該変更登記の申請に係る登記すべき事項が決議されていることから,当該決議に係る株主リストが該当するものと考えられます。
※ しかし,Q2-3については,既報のとおり,ちょっとというか,大きな落とし穴がある。定款の補欠規定に要注意である。
cf. 令和2年5月28日付け「継続会開催を予定する場合の取締役選任議案の記載例」
https://blog.goo.ne.jp/tks-naito/e/3e4de2da26418c77b5cf4f89ef1c0f94