司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

「テレワークに潜む「リモハラ」の危険」

2020-05-31 12:59:41 | コロナウイルス感染症問題
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59671970Y0A520C2000000/

 テレワークにおける上司と部下とのやり取りで,ちょっとしたことが「ハラスメント」につながってしまうというお話。

 人間の社会である以上,相手の言動に不快を感じること,逆に不快感を与えてしまうことは,避けられないが,殊更に,「ハラスメント」と過敏に取り上げるのもどうかと思われる。

 とまれ,注意しましょう,ということで。
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「司法のオンライン化なお遠く」

2020-05-31 12:48:26 | 民事訴訟等
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59798500Q0A530C2EA1000/

「新型コロナウイルスの影響で止まった司法手続きを巡り、オンライン化に向けた動きの鈍さが目立っている・・・感染の再拡大に備え、日本でもIT化を加速すべきだとの声が強まる。」

「政府が進める裁判のIT化では出頭を伴わないウェブでの争点整理や口頭弁論、証人尋問の実施のほか、オンラインでの提訴も検討している。導入には民事訴訟法の改正などが必要なため、実施はウェブでの弁論が2023年度、オンラインでの提訴は2025年度となる見通しだ。」(上掲記事)

 オンラインで代替可能な手続的な部分は,どんどん活用すればよいし,短時間の打ち合わせレベルの会議は,ビデオ会議システムをどんどん活用すればよいが,本質的な部分は,やはり出頭主義を維持すべきであろう。

 オンラインは,手続を円滑に進めるための,あくまでツールに過ぎず,訴訟当事者は,あくまで生身の人間であるのだから。

cf. 裁判手続等のIT化検討会
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/saiban/index.html
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法務省,取締役会議事録の電子署名,「リモート型」と「クラウド型」を認める

2020-05-31 07:15:49 | 会社法(改正商法等)
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59800350Q0A530C2MM8000/

「法務省が取締役会の議事録作成に必要な取締役と監査役の承認についてクラウドを使った電子署名を認める・・・法務省が経団連など主な経済団体に通知した。認めるのは「リモート型」や「クラウド型」と呼ばれる方式だ。署名と署名に必要な鍵をサーバーに保管し、全ての手続きがクラウド上で済む。当事者がネット上の書類を確認し、認証サービス事業者が代わりに電子署名するのも可能となる。」(上掲記事)

 ん~・・・。

 会社法施行規則の改正ということになるであろう。商業登記規則第36条第4項第2号ハの規定による法務大臣の指定も必要か。

 しかし,「規制改革」のパワー恐るべし。

cf. 令和2年5月27日付け「取締役会議事録等の電子署名について」

議事録の電子化に関する法的規制と電子署名 by サインのリ・デザイン
https://www.cloudsign.jp/media/20180215-gijirokudenshika/

会社法施行規則
 (電子署名)
第225条 次に掲げる規定に規定する法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置は、電子署名とする。
 一~五 【略】
 六 法第三百六十九条第四項(法第四百九十条第五項において準用する場合を含む。)
 七~十二 【略】
2 前項に規定する「電子署名」とは、電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
 一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
 二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

cf. 商業・法人登記の申請書の添付書面を電磁的記録で作成している場合について
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji41.html


 通常の取締役会議事録は,「署名」のみ,又は「記名押印」(認印も可)で足りるので,電子署名も緩やかな規律(認印レベル)でよいと思うが,代表取締役の選定に係る取締役会の議事録については,書面では,実印の押印と印鑑証明書の添付が求められており,電子署名の場合も同レベルの規律が求められることになる。そういった意味では,上記の電子署名では難しいのではないか。再任の場合等には,従前の代表取締役が商業登記に基礎を置く電子認証制度に基づく電子署名をすれば,その他の取締役や監査役は,上記の電子署名でよいわけであるが。
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「任期の起算点『選任後』の解釈」

2020-05-30 15:41:29 | 会社法(改正商法等)
 月刊登記情報2020年6月号に,神﨑満治郎ほか「任期の起算点『選任後』の解釈」がある。

 会社法第336条第1項の「選任後」の「選任」は,選任決議の時点であると解されている。

 したがって,3月決算の株式会社において,3月中の臨時株主総会の決議によって選任され,4月1日に就任した監査役の任期が,1年短くなってしまうことが不合理であるとして,定款規定の「選任後」を「選任の効力発生後」と解することにより,その不合理(?)を解消することはできないか,という問題意識に基づく論考である。 

会社法
 (監査役の任期)
第336条 監査役の任期は、選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2 前項の規定は、公開会社でない株式会社において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。
3 第一項の規定は、定款によって、任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとすることを妨げない。
4 前三項の規定にかかわらず、次に掲げる定款の変更をした場合には、監査役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。
 一 監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更
 二 監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の変更
 三 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更
 四 その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを廃止する定款の変更


 問題意識としては,次の記事の私見のとおりであるのだが。

cf. 平成20年2月14日付け「役員の任期の起算点はいつか?」


 しかし,そもそも会社の意向は,「4月1日から就任することにしたい」ということであって,「4月1日から任期を起算したい」というものではないと思われる。

 また,公開会社でない株式会社にあっては,会社法第336条第2項の規定により任期を10年に伸長することができるとはいえ,現行の定款規定が「選任後4年」であるにもかかわらず,「選任後」を「選任の効力発生後」と解することは,会社法第336条第1項違反の疑義が生じてしまうことになる。

 意図することを実現したいのあれば,公開会社でない株式会社にあっては,会社法第336条第2項の規定に基づき,定款の規定を「就任後4年」に変更すればよいのではないか。

 公開会社にあっては,「就任後4年」は,会社法第336条第1項違反の問題が生ずるので,もちろん不可である。


 定款の規定を「株主総会が定める任期の始期後」とすることによっても,意図を実現することができようか。

cf. 平成25年2月24日付け「取締役の就任の「時点」」
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調停延期は「死活問題」

2020-05-30 13:53:58 | 家事事件(成年後見等)
北海道新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/f98b52a1ea7138d5a1ba143ee352d522539e0232

「新型コロナウイルスの感染防止のため、道内の裁判日程が延期や取り消しとなる中、別居中の夫婦が家庭裁判所で生活費の分担などを話し合う調停も滞っている」(上掲記事)

 家裁の期日も入り始めたようであるが,当分は,感染防止に配慮して慎重に進められるので,スローペースであると思われる。

 事情によるとは思うが,ADRを含め,裁判外の話合いも要検討であろう。
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株式会社と取締役の関係は,委任に関する規定に従う

2020-05-30 12:51:26 | 会社法(改正商法等)
 旬刊商事法務昭和31年8月15日号に,「取締役の就任と退任をめぐる諸問題~登記を中心として~」(阿川清道法務省民事局民事第四課長)がある。

・ 明治44年の商法改正により,「会社と取締役の関係は委任の規定に従う」旨が明定された(旧商法第164条第2項)。

・ 商法は,民法において考えられているような一般の単純な委任関係とは趣を異にする特殊の関係について委任の規定を適用するため,かかる法条を設けたものであると思われる。


 現行規定は,「株式会社と役員及び会計監査人との関係は,委任に関する規定に従う」(会社法第330条)である。

 今般の「当初の株主総会における決議(会社法第329条第1項)により,当初の株主総会の時点において改選期にある役員等の任期が満了するものとする」ことの可否の問題について,私は,難しいと考えている。

 ところで,頭の体操として考えると,「会社と取締役の関係は委任の規定に従う」ことにより,民法の委任の規定が適用されるのであれば,例えば,合意解除もあり得るのではないか。

 取締役の退任(委任関係の解消)について,会社と取締役の間に合意が成立する場合,通常は,取締役が辞任届を提出することで,辞任による退任の登記がされている。

 しかし,辞任でもなく,解任でもなく,「合意により委任関係を解消させる」ことも不可能ではないと思われる。

 この場合,「会社法又は定款で定まる任期を短縮し,ある一定の日に任期を満了させる」旨の合意をすることになろう。

 継続会方式の場合に,「当初の株主総会の時点において改選期にある役員等の任期が満了するものとする」というのは,継続会の終結時に任期満了するものとする見解によれば,法的には任期の短縮ではあるが,本来の任期は,定時株主総会として開催されるはずであった当初の株主総会の終了の時点であったのであるから,その任期が継続会の終結の時まで伸長されるところ,これを是とせず,本来の任期満了時点において委任関係を解消させようというものである。したがって,取締役等の地位の保障の観点からも,それほど不都合があるともいえないと思われる。

 仮に,この理により,「当初の株主総会の時点において改選期にある役員等の任期が満了するものとする」ことが認められ得るとして,これを証する添付書面は,どのような内容にすべきか。

 株式会社と取締役との合意証書についてはもちろんOKであろうが,当初の株主総会の議事録に「当初の株主総会における決議(会社法第329条第1項)により,当初の株主総会の時点において改選期にある役員等の任期が満了するものとする」旨の記載があり,かつ,「当該役員等が株主総会の席上においてこれを諾とする旨を述べた」旨の記載がある(又は別に役員等の同意書が添付されている。)のであれば,受容され得るのではないだろうか。

 登記実務においては,株主等の権利保障期間に関して,いわゆる「期間短縮の同意書」を添付することで,登記の申請が受理される取扱いがあり,これに類するものである。


 上記は,あくまで頭の体操であって,コロナ特例ということで,仮に救済する理屈が成り立つとすれば,これくらいしか考えられないという試論である。

 継続会かつ6月改選に拘るのであれば,本来は,同じ総会での定款変更(任期に関する規定の変更)を工夫することにより,対応すべきケースであろう。

 会社法及び商業登記に関する規律は,杓子定規のように映るのかもしれないが,永年にわたり精緻な規律に従ってきたからこそ,商業登記は,会社に関する公示制度として信頼されるものとなっているのである。ユーザー・フレンドリーは,耳障りがよい言葉ではあるが,株式会社は,会社法の規律に従って運営されているからこそ,信用の対象となっているはずである。例え,意に沿わぬ規律であり,これに従うことにより負担が増加する場合であるとしても,尊重すべき規律は尊重して,株主総会の運営がされることが望まれる。
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「取締役の就任承諾書は株主総会議事録の記載を援用する」の起源

2020-05-30 11:28:15 | 会社法(改正商法等)
 旬刊商事法務昭和31年8月15日号に,「取締役の就任と退任をめぐる諸問題~登記を中心として~」(阿川清道法務省民事局民事第四課長)がある。

 諸々興味深いが,標記の件について,抜き書き。

・ 取締役の就任の時期につき,「選任時点」と「選任後の就任承諾時点」について争いがあった。大審院は,選任時点説。登記実務は,大正初期から,後者の「就任承諾の日」を就任日として登記する取扱いを明確にした。

・ 就任承諾書は,法律上,添付書面とされていなかった。

・ 設立の登記を申請する者は,総取締役と総監査役であった(したがって,就任承諾書は不要の理。)。

・ 変更の登記を申請する者は,総取締役であった(したがって,就任承諾書は不要の理。監査役については問題となった。)。

・ 非訟事件手続法の改正により,昭和26年7月1日以降,変更の登記の申請は,代表取締役がすることになった。この際,変更の登記の申請書には,株主総会議事録その他登記の事由を証する書面を添付しなければならないものとされた。

・ 同改正後,取締役等の変更の登記の申請において,株主総会議事録中に取締役等に選任された者が当該株主総会において就任を承諾する旨の記載がないときは,就任承諾書の添付を要求する取扱いがされることとなった。


 その後,商業登記法(昭和38年法律第125号。昭和39年4月1日施行)により,設立の登記の申請書については同法第80条第8号,取締役等の変更の登記の申請書については同法第81条第1項の規定により,「就任を承諾したことを証する書面」を添附しなければならないものとされた。


 いかにも登記実務らしい変遷である。
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中国,離婚にクーリングオフ制度を導入へ

2020-05-29 19:09:09 | 国際事情
朝日新聞記事
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14493452.html?iref=pc_ss_date


「離婚届の提出後30日以内なら、夫婦の一方の意思で取り下げられる。さらに、60日以内に夫婦双方が役場を訪ねて離婚証明書の発行を申請しなければ、離婚が取り消される」(上掲記事)

「閃(ひらめ)き離婚」なのだそうだ。

 そんな言葉あるのかな。

cf. 平成30年9月2日付け「中国で急増する「マンション離婚」」
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有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項ほか

2020-05-29 17:28:24 | 会社法(改正商法等)
有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有価証券報告書レビューの実施について(令和2年度)by 金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/r1/sonota/20200327.html

 情報が更新されている。
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「配偶者居住権とその登記」

2020-05-29 17:14:37 | 不動産登記法その他
 月刊登記情報2020年6月号に,山野目章夫「配偶者居住権とその登記」が掲載されている。

 論点の摘示とその考え方の整理が明快である。ぜひ御一読を。
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商業登記所における法人の実質的支配者情報の把握促進に関する研究会第1回議事概要

2020-05-29 17:14:20 | 会社法(改正商法等)
商業登記所における法人の実質的支配者情報の把握促進に関する研究会
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00044.html

 第1回議事概要が公表されている。
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法務大臣閣議後記者会見の概要(冒頭発言・暫定版)「養育費勉強会について」

2020-05-29 14:56:57 | 民法改正
法務大臣閣議後記者会見の概要(冒頭発言・暫定版)(令和2年5月29日(金))
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00084.html

「本年1月に私の下に立ち上げた「養育費勉強会」では,これまでの議論を取りまとめ,これを,本日,法務省のホームページで公開する予定です。
 この取りまとめは,養育費履行確保のためのアプローチ・方向性について指摘のあった事項等を取りまとめたものです。
 今後,法務省では,今回の取りまとめを受けて,養育費不払い問題の解消に向けて,公的支援の在り方を検討するため,厚生労働省と共同で,新たな検討枠組みを立ち上げることや,現行制度の運用改善等で実施可能な事項等を検討するための法務省内の検討会を新たに立ち上げることを予定しています。
 今後とも,私のリーダーシップで,厚生労働省を始めとする関係省庁,関係機関とも連携して,この問題に,スピード感を持って取り組んでまいります。」
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法務大臣養育費勉強会の取りまとめ

2020-05-29 12:36:53 | 民法改正
父母の離婚後の子育てに関する法制度の調査・検討状況について by 法務省
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00054.html

「2 養育費の支払確保のための調査・検討について」において,法務大臣養育費勉強会の取りまとめが掲載されている。
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定時株主総会の「継続会」と役員変更に関する諸問題

2020-05-29 11:44:59 | 会社法(改正商法等)
令和2年5月29日付け「定時株主総会の「継続会」と役員変更に関する登記実務の取扱い(法務省Q&A)」

1.継続会が開催された場合の定時株主総会の終結の時とは
 当初の株主総会と当該継続会とは同一の株主総会であると認められるので,この場合の改選期にある役員(任期の末日が定時株主総会の終結の時までとされている取締役,会計参与及び監査役)及び会計監査人の任期については,当該継続会の終結時までとなる。
⇒法務省Q&A(新しい考え方)。従来の考え方は,後掲令和2年4月22日付け「補遺」の記事を参照。

2.当初の株主総会において役員等の改選が可能か
 継続会を開催する場合において,当初の株主総会において役員等を改選する必要があるときは,継続会の開催までに相当期間を要することがあることから,当初の株主総会における決議(会社法第329条第1項)により,当初の株主総会の時点において改選期にある役員等の任期が満了するものとして,その後任を選任する方法によることも可能であると考えられる。
⇒法務省Q&A(さらに新しい考え方)


 ところで,1の立場からすれば,2の「当初の株主総会の時点において改選期にある役員等の任期が満了するものとする」というのは,会社法又は定款で定める任期の短縮となる。

 したがって,会社法において,これを可能とする法理があるのかが問題である。

(1)取締役の場合
 法務省Q&Aは,おそらく会社法第332条第1項ただし書の規定により,株主総会の決議によって任期の短縮が可能と解しているものと思われる。しかし,この規定は,従来,選任の時点において任期を短縮して選任することを可能にするものと解されていたと思われる。在任中の取締役について,株主総会の決議によって,その任期を短縮するということが,果たして許容されるのか,疑問である。実質的には「解任」であるから,従来,このような「任期短縮」の議論がなかったのは当然である。定款の変更によるべきであろう。

(2)会計参与の場合
 会社法第334条第1項の規定が上記第332条第1項ただし書の規定を準用しているので,同上。

(3)監査役の場合
 監査役の場合,その地位を保障する観点から,取締役のように任期の短縮を可能とすることは,認められていない。したがって,当初の株主総会における決議により,当初の株主総会の時点において改選期にある監査役の任期が満了するものとすることは,不可である。

(4)会計監査人の場合
 会計監査人の場合,取締役のように任期の短縮を可能とする規定は,置かれていない。したがって,当初の株主総会における決議により,当初の株主総会の時点において改選期にある会計監査人の任期が満了するものとすることは,不可である。
 また,通常は,みなし再任(会社法第338条第2項)の措置がとられるであろうから,やはり継続会の終結の時に任期満了となるものと解される。当初の株主総会の決議により,みなし再任の時期をコントロールすることはできないであろう。


 というわけで,最初の議論に戻って,

(再掲はじめ)
 従来の登記実務の考え方からすれば,定時株主総会の開催時期について3か月云々の定款の定めがある株式会社においては,例えば,定時総会を令和2年6月29日,その継続会を同年7月29日に開催するという場合,吉戒解説のとおり,現任の取締役等は,「令和2年6月30日任期満了により退任」となる。

 したがって,

・ 現任の取締役等が,6月29日開催の先の株主総会の終結の時に辞任し,後任者が同時に就任することとして,「令和2年6月29日辞任」&「同日就任」とする。

・ 後任者の就任の日を令和2年7月1日と設定することによって,「令和2年6月30日退任」&「令和2年7月1日就任」とする。
(再掲おわり)

のいずれかの選択を考えるべきではないか。

 いずれの場合も,会計監査人については,別論(後掲令和2年4月20日付け記事を参照)である。

cf. 令和2年4月23日付け「継続会の開催と取締役等の任期の問題(補遺の補遺)」

令和2年4月22日付け「継続会の開催と取締役等の任期の問題(補遺)」

令和2年4月20日付け「継続会の開催と会計監査人のみなし再任の問題」
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定時株主総会の「継続会」と役員変更に関する登記実務の取扱い(法務省Q&A)

2020-05-29 06:50:15 | 会社法(改正商法等)
商業・法人登記事務に関するQ&A by 法務省
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho06_00076.html

 昨日(令和2年5月28日)付けで更新された。「継続会方式」の解説が詳細になったようである。

【Q2-1】今般の新型コロナウイルス感染症の影響により,定款で定めた定時株主総会の時期までに事業年度に係る計算書類等の作成が間に合わないため,当初予定した時期に定時株主総会を開催した上,役員選任の決議を行うとともに,会社法第317条による続行の決議を得て,計算書類の報告及び承認については継続会において実施することとした場合,改選期にある役員(任期の末日が定時株主総会の終結の時までとされている取締役,会計参与及び監査役)及び会計監査人の任期はどうなるのでしょうか。

【A】 定時株主総会を当初予定した時期に開催し,役員選任の決議を行い,計算書類等の報告及び承認については継続会(会社法第317条)において実施することとした場合において,関係者の健康と安全を配慮しながら決算・監査の事務及び継続会の開催を準備するために必要な期間の経過後に当該継続会が開催されたとき(「継続会(会社法317条)について」参照)は,当初の株主総会と当該継続会とは同一の株主総会であると認められますので,この場合の改選期にある役員(任期の末日が定時株主総会の終結の時までとされている取締役,会計参与及び監査役)及び会計監査人の任期については,当該継続会の終結時までとなるものと考えられます。これは,継続会が開催されるまでの間に定款で定めた定時株主総会の開催時期が満了する場合であっても,同様と考えられます。
 もっとも,今般の新型コロナウイルス感染症の影響によりQ2-1の例のように継続会を開催する場合において,当初の株主総会において役員等を改選する必要があるときは,継続会の開催までに相当期間を要することがあることから,当初の株主総会における決議(会社法第329条第1項)により,当初の株主総会の時点において改選期にある役員等の任期が満了するものとして,その後任を選任する方法によることも可能であると考えられます。
 また,同様に継続会を開催する場合には,改選期にある役員等が辞任した上,その後任を選任する方法によることも可能であると考えられます。

<毎年4月1日から翌年3月末日までを事業年度とし,定時株主総会は毎事業年度末日の翌日から3か月以内に招集される株式会社の例>
 当初予定していた時期(令和2年6月30日)に定時株主総会を開催し,本株主総会の終結により任期満了する役員を再任する決議を行い,令和2年7月30日に継続会を開催した場合,現任の役員は継続会の終結をもって任期満了により退任すると考えられますので,当初の定時株主総会において再任された役員についてする役員の変更の登記の登記原因は,「令和2年7月30日重任」となると考えられます。なお,当初の株主総会における決議により,当初の株主総会の時点において改選期にある役員等の任期が満了するものとして,当該役員等を再任する決議を得た場合の役員等の変更の登記の登記原因は,「令和2年6月30日重任」となると考えられます。この場合には,株主総会の議事録に改選期にある役員等の任期が当初の株主総会の時点で満了する旨及びその後任を選任した旨が記載されている必要があると考えられます。
 また,当初の定時株主総会の日(令和2年6月30日)をもって役員等が辞任し,同日にその後任の選任の決議を得た場合の役員等の変更の登記の登記原因は,それぞれ「令和2年6月30日辞任」,「令和2年6月30日就任」となると考えられます。


※ 「規制改革」の声に対応したもののようである。

cf. 令和2年5月27日付け「定時株主総会の「継続会方式」と役員の任期満了時期」

※ 株主総会の決議も,会社法及び定款の規定に従う必要があるので,継続会方式の場合に,「当初の株主総会における決議により,当初の株主総会の時点において改選期にある役員等の任期が満了するものとし」という点は,若干疑問がある。会社法第332条第1項ただし書には,「定款又は株主総会の決議によって,その任期を短縮することを妨げない」とあるが,これは,選任の時点において任期を短縮して選任することを意図した規定であろう。現任の取締役について,株主総会の決議によって,その任期を短縮するということが,果たして一般的に許容されるのかである。ニーズはともかくとして,会社法的に「よい」と断定してよいのか・・・。

※ 会社法的には,役員選任議案に先行する定款変更により,「継続会が開催される場合には,後任の役員の選任に関する決議がされた当初の株主総会の終了時に,改選期にある役員等の任期が満了する」旨を定めるべきであろう(附則で,役目を終えたら即削除する旨も併せて定めることも考えられる。)。


【Q2-2】Q2-1のケースで,当初の株主総会における決議により,当初の株主総会の時点において改選期にある役員等の任期が満了するものとして,その後任を選任したときは,これらの役員の変更の登記はどのように申請すればよいでしょうか。

【A】 当初の株主総会の時点で改選となった役員等に係る変更登記は,当初の株主総会の日から2週間以内に行う必要があります(会社法第915条第1項)。そのため,継続会の開催前であっても,当初の株主総会の議事録を添付した上で,当該変更登記の申請をすることができるものと考えられます。このとき,当初の株主総会の議事録には,改選期にある役員等の任期が当初の株主総会の時点で満了する旨及びその後任を選任した旨が記載されている必要があると考えられます。


【Q2-3】Q2-1のケースで,役員(A,B,C,D及びE)のうち,当初の株主総会において,一部の役員(E)の改選が必要であるとして,その役員(E)が当初の株主総会の時点で辞任した上,その後任の役員(F)を選任するとともに,残りの現任役員(A,B,C及びD)の再選の決議をしたときは,これらの役員の変更の登記はどのように申請すればよいでしょうか。

【A】 当初の株主総会の時点で改選された役員(E及びF)に係る変更登記は,当初の株主総会の日から2週間以内に行う必要があります(会社法第915条第1項)。そのため,継続会の開催前であっても,当初の株主総会の議事録及び辞任した役員(E)に係る辞任届を添付した上で,当該変更登記の申請をすることができるものと考えられます。このとき,当初の株主総会の議事録には,新任の役員(F)が当初の株主総会の日をもって辞任した役員(E)の後任として選任された旨が記載されていることが必要です。
 なお,当該株主総会の議事録から,当該株主総会においてEが辞任する旨の意思表示をした旨が判明する場合には,別途,Eの辞任届を添付する必要はありません。
 再任された役員(A,B,C及びD)に係る変更登記を継続会の終了後に申請する場合には,当初の株主総会と継続会の双方について議事録を作成し,それらを添付して登記の申請をすることになるものと考えられます。
 なお,当該変更登記の申請の際に添付すべき株主リストについては,当初の株主総会において当該変更登記の申請に係る登記すべき事項が決議されていることから,当該決議に係る株主リストが該当するものと考えられます。


※ しかし,Q2-3については,既報のとおり,ちょっとというか,大きな落とし穴がある。定款の補欠規定に要注意である。

cf. 令和2年5月28日付け「継続会開催を予定する場合の取締役選任議案の記載例」
https://blog.goo.ne.jp/tks-naito/e/3e4de2da26418c77b5cf4f89ef1c0f94
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