司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

被相続人が氏名不詳の相続財産管理人

2020-12-31 22:31:56 | いろいろ
讀賣新聞記事
https://www.yomiuri.co.jp/national/20201231-OYT1T50074/

 ビジネスホテルで死亡した女性(5年4か月も長期滞在)が身元不明で,多額の所持金を有していたことから,相続財産管理人の選任の申立てがされる方向であるという。

 官報で調べてみると,平成以降でも100件くらいの例があるようである。


 ちなみに,来年の通常国会に上程される予定の民法及び不動産登記法の見直しの改正法案においては,「相続財産管理人」を「相続財産の清算人」と改める等の改正がされる見込みである(部会資料51ー19頁)。

○ 相続財産の清算
(1)相続財産の清算人への名称の変更
 民法第936条第1項及び第952条の「相続財産の管理人」の名称を「相続財産の清算人」に改める。
(2)民法第952条以下の清算手続の合理化
 民法第952条第2項及び第957条の規律をそれぞれ次のように改め、第958条を削るものとする。
① 民法第952条第1項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、6箇月を下ることができない。
② ①の公告があったときは、相続財産の清算人は、全ての相続債権者及び受遺者に対し、2箇月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、①の規律により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間が満了するまでに満了するものでなければならない。
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自筆証書遺言の保管制度を活用するには

2020-12-30 21:56:05 | 民法改正
相続会議
https://souzoku.asahi.com/article/13627702

 些か旧聞に属するが,日本司法書士会連合会が令和2年7月21日に開催したプレスセミナーの模様を中心に,遺言書保管制度についてリポートされている。
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株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書に関する規律の見直しの実施時期

2020-12-30 15:28:01 | 会社法(改正商法等)
 標記の件について,法制審議会では次のとおりの附帯決議がされている。

 株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書に関する規律については,これまでの議論及び当該登記事項証明書の利用に係る現状等に照らし,法務省令において,以下のような規律を設ける必要がある。
(1)株式会社の代表者から,自己が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第1条第2項に規定する被害者その他の特定の法律に規定する被害者等であり,更なる被害を受けるおそれがあることを理由として,その住所を登記事項証明書に表示しない措置を講ずることを求める旨の申出があった場合において,当該申出を相当と認めるときは,登記官は,当該代表者の住所を登記事項証明書に表示しない措置を講ずることができるものとする。
(2)電気通信回線による登記情報の提供に関する法律に基づく登記情報の提供においては,株式会社の代表者の住所に関する情報を提供しないものとする。


 この法務省令における規律の見直しの時期であるが,システムの改修等の関係で,どうやら令和4年12月以降に運用が開始される見込みであるようである。

 2年後・・・支店の所在地における登記制度の廃止と,軌を一にするのであろうか。

cf. 平成30年12月15日付け「会社の代表者の住所~登記事項証明書の記載の是非(その2)」
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令和元年空き家所有者実態調査集計結果について

2020-12-30 11:15:06 | 空き家問題&所有者不明土地問題
令和元年空き家所有者実態調査 集計結果について by 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000163.html

「本調査は、昭和55年よりほぼ5年ごとに、「空家実態調査」として継続的に実施してきたものであるが、平成30年住宅・土地統計調査(総務省)の調査対象の世帯が回答する調査票に新たに「居住世帯のない住宅(空き家)」について調査項目が追加されたことから本調査についても調査対象・方法の見直し、名称を「空き家所有者実態調査」と改め実施したものである。」

・ 空き家を取得した際に、登記の名義変更や新たに登記を行った割合は約8割。
・ 利用現況がその他の空き家や、相続により取得した空き家は、「いずれも行っていない」割合が約2割見られる。
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ネット通販でトラブル急増! 「お試し」のつもりが定期購入に!?

2020-12-29 20:06:17 | 消費者問題
政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202012/2.html

「インターネット通販で「初回無料」「お試し価格」だから、試してみようと思ったことはありませんか。ちょっと待ってください。その申し込み、要注意です。1回きりのお試しのつもりで購入したら、実際には違ったというトラブルが急増しています。どんなサイトに注意をし、何を確認すべきなのかポイントを紹介します。」

cf. 京都消費者契約ネットワーク
http://kccn.jp/mousiir-kenkoushokuhin.html
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取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針

2020-12-29 16:13:52 | 会社法(改正商法等)
 令和元年改正会社法により新設される会社法第361条第7項の規定により,監査役会設置会社及び監査等委員会設置会社は,取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として法務省令(会社法施行規則第98条の5)で定める事項を決定しなければならないものとされた。

 この「方針」については,施行日までに決定しておくのが望ましいと考えられているようである。

会社法
第361条 【略】
2~6 【略】
7 次に掲げる株式会社の取締役会は、取締役(監査等委員である取締役を除く。以下この項において同じ。)の報酬等の内容として定款又は株主総会の決議による第1項各号に掲げる事項についての定めがある場合には、当該定めに基づく取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として法務省令で定める事項を決定しなければならない。ただし、取締役の個人別の報酬等の内容が定款又は株主総会の決議により定められているときは、この限りでない。
 一 監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって、金融商品取引法第24条第1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないもの
 二 監査等委員会設置会社
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取締役の報酬等として株式の発行等をする場合の特則と登記手続

2020-12-29 16:00:46 | 会社法(改正商法等)
1.取締役の報酬等として株式の発行等をする場合の特則
 令和元年改正会社法による取締役の報酬等の見直しにより,上場会社において取締役の報酬等として株式を発行し,又は自己株式の処分をするときは,金銭の払込み等を要しないこととすることができる(会社法第202条の2等)。


2.報酬に関する株主総会の決議
 この場合には,募集株式の数の上限その他法務省令(会社法施行規則第98条の2)で定める事項を定款又は株主総会の決議により定めなければならない(会社法第361条第1項第3号)。また,募集株式と引換えにする払込みに充てるための金銭を取締役の報酬等とする場合においても,同様である(同項第5号イ)。

会社法施行規則
 (取締役の報酬等のうち株式会社の募集株式について定めるべき事項)
第98条の2 法第361条第1項第3号に規定する法務省令で定める事項は、同号の募集株式に係る次に掲げる事項とする。
 一 一定の事由が生ずるまで当該募集株式を他人に譲り渡さないことを取締役に約させることとするときは、その旨及び当該一定の事由の概要
 二 一定の事由が生じたことを条件として当該募集株式を当該株式会社に無償で譲り渡すことを取締役に約させることとするときは、その旨及び当該一定の事由の概要
 三 前二号に掲げる事項のほか、取締役に対して当該募集株式を割り当てる条件を定めるときは、その条件の概要


3.登記手続
 基本的には,募集株式の発行による変更の登記手続と同様であるが,資本金の額の増加による変更の原因年月日について注意を要する。

(1)事前交付型(取締役等が株式会社に対し割当日後にその職務の執行として募集株式を対価とする役務を提供する場合)
① 発行済株式総数の変更
 取締役である募集株式の引受人は,割当日(会社法第202条の2第1項第2号)に,その引き受けた募集株式の株主となる(会社法第209条第4項)。したがって,この場合に新株が発行されるときは,当該割当日に発行済株式総数が増加することになる。

② 資本金の額の増加による変更
「取締役が提供した役務の公正な評価額」が資本金等増加限度額であり,割当日に新株が発行されたときは,「株主資本変動日」(=各事業年度の末日又は臨時決算日)に資本金の額が増加する(会社法第445条第6項,会社計算規則第42条の2)。

(2)事後交付型(取締役等が株式会社に対し割当日前にその職務の執行として募集株式を対価とする役務を提供する場合)
① 発行済株式総数の変更
(1)①と同様。

② 資本金の額の増加による変更
「取締役が提供した役務の公正な評価額」が資本金等増加限度額であり,新株が発行されるときは,割当日(会社法第202条の2第1項第2号)に資本金の額が増加する(会社法第445条第6項,会社計算規則第42条の3)。「取締役が提供した役務の公正な評価額」を「株式引受権」(会社計算規則第54条の2)として計上し,割当日に株式を発行する際に,「株式引受権」を減少させ,資本金等を増加させることになる。

会社計算規則
第54条の2 取締役等が株式会社に対し法第202条の2第1項の募集株式に係る割当日前にその職務の執行として当該募集株式を対価とする役務を提供した場合には、当該役務の公正な評価額を、増加すべき株式引受権の額とする。
2 株式会社が前項の取締役等に対して同項の募集株式を割り当てる場合には、当該募集株式に係る割当日における同項の役務に対応する株式引受権の帳簿価額を、減少すべき株式引受権の額とする。
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「会社法施行規則等の一部を改正する省令」の解説

2020-12-29 15:07:13 | 会社法(改正商法等)
商事法務研究会
https://www.shojihomu.or.jp/article?articleId=13745402

 立案担当者によるオンラインセミナー「「会社法施行規則等の一部を改正する省令」の解説」が掲載されている。会員以外は有償(2000円)。

「「会社法の一部を改正する法律」(令和元年法律第70号)が来年3月1日に施行されることに伴い、11月27日に公布された「会社法施行規則等の一部を改正する省令」(令和二年法務省令第52号)について解説いたします。」
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「養育費不払い解消に向けた検討会議・取りまとめ(~子ども達の成長と未来を守る新たな養育費制度に向けて~)」

2020-12-28 17:46:24 | 民法改正
法務省・養育費不払い解消に向けた検討会議
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00101.html

「養育費不払い解消に向けた検討会議・取りまとめ(~子ども達の成長と未来を守る新たな養育費制度に向けて~)」等が公表されている。

cf. 令和2年12月25日付け「裁判所,養育費に関する裁判所の手続(調停,審判,強制執行など)についての説明をまとめたページを新設」
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完全オンラインの株主総会を解禁

2020-12-28 17:32:15 | 会社法(改正商法等)
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67773140Y0A221C2EAF000

「オンライン化にはクラウドを使うなどして中継が切れるリスクを抑え、予備の回線も用意するなどの対策が必要・・・・・通信が途切れて質問できないなどの問題から訴訟に発展するリスクも」(上掲記事)

 いわゆる完全オンライン(バーチャルオンリー型)の株主総会を,今年の6月総会から実施可能にする特例法が,来年の通常国会に上程される見込みである。
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「遺留金」,供託制度の利用で解消が可能に

2020-12-28 12:14:52 | いろいろ
 身寄りのない故人が残した少額の現金を、法的根拠のないまま市町村が預かっている「遺留金」が増えていることが問題となっていたが,

「生活保護法施行規則(昭和25年厚生省令第21号)の改正によって,身寄りがなく亡くなった方の遺留金を地方公共団体が保管している場合の取扱いとして,相続財産管理制度に加え,供託制度の利用が可能となる予定である」(篠原辰夫「商業・法人登記制度,動産・債権譲渡登記制度,供託制度および遺言書保管制度の動向と展望」NBL2021年1月1日号(商事法務)43頁)

 調べてみると,改正生活保護法施行規則(令和2年厚生労働省令第198号)は,既に令和2年12月9日に公布され,即日施行されている。

cf. 官報
https://kanpou.npb.go.jp/20201209/20201209h00390/20201209h003900002f.html

生活保護法施行規則の一部を改正する省令案に関する御意見の募集について
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&Mode=0&bMode=1&bScreen=Pcm1040&id=495200268

「遺留金」が少額(といっても,数十万円あったりする。)であるがゆえに,相続財産管理制度の利用が困難である場合に,民法第494条の規定に基づき弁済供託を行うことを認め,事態解消の途を拓くものであり,善哉である。

cf. 平成29年12月25日付け「神戸市,「遺留金」活用の条例を制定へ」
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自筆証書遺言書保管制度における「死亡時の通知」の運用開始時期

2020-12-28 11:50:39 | 民法改正
 自筆証書遺言書保管制度における遺言書保管所から相続人等に対してされる通知のうち,死亡時の通知(準則第19条第1項)については,運用の開始時期が未定であったが,

「令和3年4月から遺言者に係る死亡届出がされた事実を契機とし,通知を行うことを予定している」(篠原辰夫「商業・法人登記制度,動産・債権譲渡登記制度,供託制度および遺言書保管制度の動向と展望」NBL2021年1月1日号(商事法務)43頁)

という見込みであるようである。

cf. 令和2年7月8日付け「自筆証書遺言書保管制度における「通知」について」
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債務超過子会社との合併,貸倒引当金を計上していれば合併差損は発生しない?

2020-12-26 13:55:02 | 会社法(改正商法等)
 上場企業が子会社を吸収合併する場合に,当該子会社が債務超過であるときで,簡易合併によりたい場合には,

(1)債権放棄又は増資により,資産超過にする。
(2)資産超過となっても,抱き合わせ株式消滅損が生ずるときは,減損処理をして,特別損失を計上する。

という手順を踏む必要があると考えられていた。

cf. 平成23年4月15日付け「簡易合併の可否」

 しかし,5年くらい前から,「債務超過額相当の貸倒引当金を計上していれば,合併差損は発生しない」という考え方の下に,吸収合併の手続が実行される事例が数多見受けられるようである。

 例えば,

「なお、吸収合併消滅会社は債務超過となっておりますが、当社は当該債務超過額相当の貸倒引当金を計上しており、本合併の際に貸倒引当金を戻し入れることから合併差損は発生しないものと判断し、簡易合併をいたします」

というようなプレスリリースが散見されるようである。

cf. ローム株式会社
https://kabuyoho.jp/discloseDetail?rid=20200204456716&pid=140120200204456716

 吸収合併消滅会社が債務超過である場合(会社法第795条第2項第1号),「差損」が生ずるものとして株主総会の決議が必要(会社法第796条第2項ただし書)であって,「債務超過額相当の貸倒引当金を計上していれば,合併差損は発生しない」という理屈は立たないはずである。

 特段の公権解釈が示されているわけでもないようである。合併無効を招来しかねない重大な論点であり,疑義を呈しておく。


 ところで,法務局HPの「商業・法人登記申請」に掲げられている登記申請書記載例(1-22)の「簡易合併の要件を満たすことを証する書面」は,従来から「差損」を顧慮しない内容である。親子会社の吸収合併であれば,無対価であることから,この証明書を不要という取扱いを採っている商業登記所も少なくないようである。

cf. 1-22
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html#1-22

 商業登記所の審査で,「差損」の有無について,なぜノーチェックを貫いているのかが不可解である。

 「差損」の有無は,株主総会の開催の要否に関わり,「差損」が生ずる場合に,株主総会の決議がなければ,合併無効という重大な結果を招く事項であるのだから,「差損が生じないこと」を「簡易合併の要件を満たすことを証する書面」の記載事項とすべきであろう。
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「デジタル・ガバメント実行計画」が閣議決定

2020-12-26 01:41:34 | いろいろ
高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/decision.html

 令和2年度(?)「デジタル・ガバメント実行計画」が閣議決定された。
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日司連「商業登記規則等の一部を改正する省令案」に関する意見書

2020-12-26 01:37:19 | 会社法(改正商法等)
「商業登記規則等の一部を改正する省令案」に関する意見書
https://www.shiho-shoshi.or.jp/association/info_disclosure/opinion/51783/

 令和3年2月15日施行予定の改正省令案に関する日司連の意見書です。
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