第23回規制改革推進会議
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/committee/250528/agenda.html
「規制改革推進に関する答申」が公表されている。
キ 株式対価M&Aの活性化に向けた会社法の見直し(106頁)
【(前段)措置済み、(後段)令和6年度検討開始、令和8年度内を目途にできるだけ早期に結論、結論を得次第速やかに措置】
<基本的考え方>
株式対価M&Aは、買収者の株式又は株式と現金を組み合わせて対価とすることで、手元に十分な現金がないスタートアップ等が買収者となる場合であっても、その成長力を担保にして、効率的に大規模な事業再編を行うことが可能となる。また、逆に、他社に買収された後も当該他社の株式の保有を通じて経営に参画することによるシナジーの創出などが期待でき、特にスタートアップにとってはIPOによらないエグジットを活性化できる可能性もある。
他方で、会社法(平成17年法律第86号)に規定された株式対価M&Aの一類型である株式交付は、外国会社を買収する場合には活用できないなど活用範囲が狭く、また、株式と現金を組み合わせた混合対価によるM&Aにおいて株主総会が不要となる場合が限定されているなど手続負担が重いといった指摘がある。
このため、我が国企業による海外企業に対するM&Aの手法の多様化や我が国スタートアップのエグジットの多様化を図る観点から、現行制度を見直す必要がある。
以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。
<実施事項>
法務省は、以下の内容等の株式対価M&Aの活性化に向けた会社法の改正を検討し、法制審議会への諮問を行う。法務省は、法制審議会(同審議会から調査審議を付託された会社法制(株式・株主総会等関係)部会を含む。)において、以下の内容等の会社法の改正を検討し、令和8年度内を目途にできるだけ早期に結論を得て、結論を得次第速やかに必要な法案を国会に提出する。
① 株式交付を外国会社の買収にも利用可能とするに当たっては、外国会社を日本の株式会社に相当する会社のみとすると対象となる会社が限定され、会社法改正の意義が減殺されるとの指摘を踏まえ、外国会社の定義について、株式会社に加え、米国のLLCなどの持分会社やこれに類似する会社も含まれるものとする。あわせて、日本においても、株式の譲渡に当たり会社の承諾を必要とする株式会社であっても株式交付の対象とされており、持分の譲渡に当たり他の社員の承諾を必要とする持分会社を対象としても支障は生じないとの指摘を踏まえ、合同会社を株式交付の対象とすること。
② 株式交付が、会社法第5編に規定する合併、株式交換等(以下「組織法上の行為」という。)の一類型として一度の制度利用で買収会社が買収対象会社を子会社化する場合のみの利用に限られている点について、(ⅰ)単に親子会社関係を新たに創設する場合のみを組織法上の行為と位置付けるのではなく、組織法上の行為に位置付けられる行為が有する性質に着目してその対象となる範囲を決すべきであること、(ⅱ)株式交付が会社法上、組織法上の行為に位置付けられる理由は、株式交付における買収対象会社に関する情報を開示して、株式交付をする株式会社の株主総会決議を経ている点にあるとの指摘を踏まえ、当該決議を経る子会社株式の追加取得も株式交付の対象とすること。
③ 株式交付の承認のための買収会社における株主総会決議に関して、買収対象会社の株主に交付する株式と現金の合計が買収会社の純資産額の5分の1を超えないときに株主総会を不要とする会社法の規定について、株式と現金を組み合わせた混合対価によるM&Aの活性化のため手続の簡素化を求める意見を踏まえ、買収会社における株主総会決議の要否は、買収対象会社の株主に交付する株式のみによって判定を行うものとすること。
ク 非上場株式の発行・流通の活性化
【令和7年度結論、結論を得次第速やかに措置】
<基本的考え方>
我が国のスタートアップを含む非上場企業は、ユニコーンやグローバル企業への成長促進や、地域経済活性化への貢献等の観点から、適切な投資家保護を確保しつつ、株式の発行及び流通を活性化すること等を通じて、円滑な資金調達の途を確保する必要がある。令和6年6月の規制改革実施計画において、非上場株式の発行市場及び流通市場の活性化並びにそのための制度の継続的な改善を図るためのPDCAサイクルを回す上で適切なKGI・KPIの設定について取り組むこととされているが、現時点において、検討に必要な実態調査の結果が公表されておらず、KGI・KPIが設定されていないことも含め未対応の事項が数多く残っていること、また、東京証券取引所においてグロース市場の上場維持基準の引上げが検討されており、スタートアップの成長のための資金調達環境の改善、スタートアップのエグジットに関する議論を早急に進めることが従前にも増して極めて重要な局面になっていることを踏まえ、取組を加速する必要がある。
以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。
<実施事項>
金融庁は、投資家保護の要請を踏まえつつ、スタートアップへの資金供給の拡大の観点から、令和6年6月の規制改革実施計画に基づく、非上場株式の発行市場及び流通市場の活性化に係る以下の事項について検討の加速化を行い、令和7年度中に結論を得る。当該結論を得次第、速やかに必要な措置を講ずる。
① 事業者において株式による資金調達を行う際に過大な手続コストがかかるという指摘を踏まえ、令和7年度中に実施する当該資金調達時にかかる手続コストなど事業者負担に関する実態調査の結果も踏まえた上で、金融商品取引法(昭和23年法律第25号。以下「金商法」という。)第4条第1項第5号に基づく有価証券届出書の届出免除基準について、当該基準の引上げを含めた制度の在り方及び同法第5条第2項に基づく少額募集における段階的かつ合理的な開示制度の在り方(例えば、少額募集の上限を20億円程度まで引き上げ、1億円から5億円未満、5億円から10 億円未満、10億円から20億円未満の金額帯で開示を簡素化する案等)。
② スタートアップ等が株式による資金調達を行いやすくする観点から、金商法第2条第3項第1号及び金融商品取引法施行令(昭和40年政令第321号)第1条の5に基づく少人数私募における人数要件(49名以下)の緩和並びに人数計算を勧誘者基準から取得者基準に変更する等の私募の在り方。
③ スタートアップ・エコシステムを進化させ、特定投資家の裾野拡大を通じて資金調達環境を整備する観点から、金商法第34条の4に基づき特定投資家以外の顧客である個人がその投資判断能力・リスク許容度に応じて特定投資家とみなされる場合の要件の在り方。
ケ バーチャルオンリー株主総会の活用に向けた環境整備
【a:(前段)措置済み、(後段)令和6年度検討開始、令和8年度内を目途にできるだけ早期に結論、結論を得次第速やかに措置、b:令和6年度検討開始、令和8年度内を目途にできるだけ早期に結論、結論を得次第速やかに措置】
<基本的考え方>
場所の定めのない株主総会(以下「バーチャルオンリー株主総会」という。)は、地方など遠隔の居住者を含む株主による株主総会への参加を容易にするものであり、上場会社では産業競争力強化法(平成25年法律第98号)の規定により、会社法(平成17年法律第86号)の特例として実施可能とされているが、経済産業大臣及び法務大臣の確認並びに定款の定めが必要であり、導入に必要な手続負担が重いとの指摘がある。
また、通信障害発生時の株主総会決議の効力や議事進行を妨害する株主への対応等にも懸念の声があり、令和6年12月末現在で、バーチャルオンリー株主総会の開催を可能とする定款変更議案を総会で決議した株式会社は459社(上場企業数3,975社)、実際に開催した株式会社は70社にとどまっているなど、十分に活用されていない。
以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。
<実施事項>
a 法務省は、産業競争力強化法において同法の確認を受けた株式会社に対して会社法の特例として認められているバーチャルオンリー株主総会について、当該確認の有無にかかわらず、その開催を容易にし、デジタル技術を活用して、地方など遠隔の居住者を含む株主が出席しやすい株主総会を実現するため、以下の各事項を含む会社法の改正を検討し、法制審議会への諮問を行う。法務省は、法制審議会(同審議会から調査審議を付託された会社法制(株式・株主総会等関係)部会を含む。)において、以下の各事項を含む会社法の改正を検討し、令和8年度内を目途にできるだけ早期に結論を得て、速やかに必要な法案を国会に提出する。
① バーチャルオンリー株主総会が株式会社との対話の機会を充実させる制度であること、また、株主総会の招集に必要な事項の決定は会社法において取締役(会)の権限とされていることを踏まえ、バーチャルオンリー株主総会の開催に際し産業競争力強化法で必須とされる経済産業大臣及び法務大臣の確認並びに定款の定めを不要とすること。
② 株主総会の開催時間中に通信障害が発生した際における株主総会決議の有効性を懸念する意見があることを踏まえ、通信回線やオンライン会議に関するソフトウェアの障害などの当該株主総会を開催した株式会社の責めに帰すことが適切ではない通信障害により、株主が議事を十分に視聴できなかったり、議決権を適時に行使できなかった場合であっても、当該株主総会の決議の効力が影響を受けないよう、セーフハーバールール(例えば、株式会社の故意又は重大な過失によって通信障害が生じた場合に限り、株主総会決議の取消事由とすることなど)の規定を設けること。
③ バーチャルオンリー株主総会は議事進行に支障を生じさせようとする者にとっても複数の株主総会への同時出席を可能とするため、より多くの株主総会において議事進行の妨害が発生することが危惧されるという意見があることを踏まえ、例えば、株主による濫用的な質問権の行使や動議の提出による議事進行の妨害を防止するため、株主総会当日の、株主による議案の提出を制限したり、株主からの質問に対する取締役の説明義務を免除することができるなどの規定を設けること。
b 法務省は、上記a②及び③の検討に際し、株式会社が講ずべき通信障害対策、議事進行を妨害する株主に対して議長が執り得る措置等、バーチャルオンリー株主総会の実施に当たり論点となる事項についての解釈を明確化するため、会社法の改正と併せて、必要に応じて産業競争力強化法に基づくバーチャルオンリー株主総会を所管する経済産業省と連携しつつ、所要の措置を講ずる。
コ バーチャルオンリー社債権者集会の実現
【(前段)措置済み、(後段)令和6年度検討開始、令和8年度内を目途にできるだけ早期に結論、結論を得次第速やかに措置】
<基本的考え方>
信用リスクの高い会社が社債を発行する場合、社債を発行する会社に一定の義務(コベナンツ条項)を課し、社債権者は、社債を発行した会社が当該義務に違反した場合に繰上償還などを求めることになるが、その際に支払いの猶予を認めるなどの柔軟な対応を行うためには社債権者集会の決議が必要となる。
他方、会社法(平成17年法律第86号)では場所の定めのない社債権者集会(以下「バーチャルオンリー社債権者集会」という。)は認められておらず、機動的に社債権者集会を開催できないため、信用リスクの高い会社による社債発行が進まない一因となっており、相対的に信用リスクの高い会社の社債発行促進も含めた社債市場の活性化のためには社債権者集会の効率化・円滑化が必要であるとの指摘がある。
以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。
<実施事項>
法務省は、会社法では開催が認められていないバーチャルオンリー社債権者集会について、その実施が可能となるよう、以下の各事項を含む会社法等の改正を検討し、法制審議会への諮問を行う。法務省は、法制審議会(同審議会から調査審議を付託された会社法制(株式・株主総会等関係)部会を含む。)において、以下の各事項を含む会社法等の改正を検討し、令和8年度内を目途にできるだけ早期に結論を得て、速やかに必要な法
を国会に提出する。
① 会社法改正前に募集された社債についても、会社法改正後に募集された社債との間でバーチャルオンリー社債権者集会の開催のしやすさに差異が生じないよう、会社法改正後に求められるバーチャルオンリー社債権者集会の実施を可能とするための要件(例:社債の募集事項への記載)を満たしたものと扱うための規定又は経過措置を設けること。
② 通信回線やソフトウェアの障害などの会社の責めに帰すことが適切ではない通信障害により、社債権者が議事を十分に視聴できなかったり、議決権を適時に行使できなかった場合であっても社債権者集会の決議に係る裁判所の認可が得られるよう、バーチャルオンリー株主総会におけるセーフハーバールール(通信回線やオンライン会議に関するソフトウェアの障害などの当該株主総会を開催した株式会社の責めに帰すことが適切ではない通信障害により、株主が議事を十分に視聴できなかったり、議決権を適時に行使できなかった場合であっても、当該株主総会の決議の効力が影響を受けないよう、例えば、株式会社の故意又は重大な過失によって通信障害が生じた場合に限り、株主総会決議の取消事由とすることなどの規定)を参考として必要な規定を設けること。
③ 社債権者であることの証明を書面で行うこととしている、社債、株式等の振替に関する法律(平成13年法律第75号)について、社債権者集会において議決権を行使するための証明に書面が要求されるため、社債権者集会の電子化、効率化の妨げとなっているとの意見があることを踏まえ、金融庁とも連携し、同法の改正により、電磁的方法による証明など簡易かつ迅速な方法で社債権者であることの証明を可能とすること。
サ 持続的な成長及び中長期的な企業価値向上に向けた株式会社と株主との建設的かつ実効的な対話の促進
【a:令和8年度内を目途にできるだけ早期に結論、結論を得次第速やかに措置、b:令和7年開始、改正会社法施行まで継続的に措置】
<基本的考え方>
近年、我が国においては、企業の持続的な成長及び中長期的な企業価値向上のため、企業経営及び資本市場に関する制度整備及び環境整備が進められており、その一環として、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめた「コーポレートガバナンス・コード」(平成27年6月1日制定、令和3年6月11日最終改訂、株式会社東京証券取引所)等により、株式会社と株主との間の対話が促進されている。一方で、株式会社と株主との建設的かつ実効的な対話を促進する上で、株式の議決権の指図権限等を有する者(以下「実質株主」という。)の把握方法や株主提案権の行使要件について課題があり、見直しが必要であるとの指摘がある。
具体的には、株主名簿上の株主(以下「名義株主」という。)と実質株主が一致しないケースも多く見られる中、株式会社と株主との建設的かつ実効的な対話を行うため、実質株主に関する情報を把握する必要性が高まっているが、現行法上、実質株主については、金融商品取引法(昭和
23年法律第25号)第27条の23等に基づく株券等の大量保有の状況等に関する開示制度の適用対象となる場合を除き、株式会社が自らの実質株主を把握することを可能とする制度が存在しておらず、また、①大量保有報告書の提出遅延も多いことや、②公開情報や任意の協力に基づく株主への照会等を通じた情報収集により実質株主を特定しようとする場合には、把握可能な実質株主の範囲に限界があることなどが課題であり、実質株主を正確かつ効率的に把握することが可能となる制度の導入が必要であるとの指摘がある。
また、我が国の株主提案権の行使要件のうち、300個以上の議決権を有する株主が株主提案権を行使できるとする議決権数を基準とした行使要件は、主要先進国の中でも我が国特有の要件となっているが、投資単位の引下げ等の立法当時との状況変化や株式会社の多大な対応コストも踏まえると、株式会社と他の株主との間の建設的かつ実効的な対話を推進する観点から、株主の権利を過度に制約することがないように留意しつつ、見直しが必要であるとの指摘がある。
以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずべきである。
<実施事項>
a 法務省は、持続的な成長及び中長期の企業価値向上に向けた株式会社と株主との建設的かつ実効的な対話を促進するため、法制審議会(同審議会から調査審議を付託された会社法制(株式・株主総会等関係)部会を含む。以下同じ。)において、以下の各事項を含む会社法(平成17年法律第86号)の改正を検討し、令和8年度内を目途にできるだけ早期に結論を得て、速やかに必要な法案を国会に提出する。
① 実質株主を正確に把握するため、株式会社が名義株主等に実質株主の情報の提供を請求することができる制度(以下「実質株主確認制度」という。)を導入すること。その際、株式会社が適切な対話の相手方をより正確かつ確実に把握するため、例えば、株式会社が実質株主であると考える者その他の対話の必要があると考える者に対して、情報の提供を直接請求することを可能とする制度など、実質株主確認制度を補完する制度の要否についても検討する。
② 実質株主確認制度の実効性を担保する観点から、名義株主が実質株主の氏名・名称、住所、連絡先、議決権を有する株式数などの基本的な情報について、単に事務処理の誤り等の場合を除き、情報の提供をせず、又は虚偽の情報を提供した場合には、当該実質株主に係る株式について議決権の停止を可能とすること。その際、議決権停止の対象となる名義株主及び議決権数について、株主総会までに株式会社が適切に判断することが可能な制度となるよう留意する。
③ 近年の投資単位の引下げ等の動向も踏まえつつ、株主総会における株式会社と株主との建設的かつ実効的な対話の機会を充実させるため、株主提案権の行使要件のうち、300個以上の議決権を有する株主が株主提案権を行使できるとする議決権数を基準とする行使要件について、当該行使要件の廃止の要否を含めて検討すること。その際、議決権数を基準とする行使要件の単純な廃止のみならず、株主提案権の行使に必要な議決権数の引上げ、株式会社が定款で株主提案に必要な議決権数を定められるものとすること、議決権数を基準とする行使要件に代替する行使要件など、様々な株主提案権の行使要件の在り方を検討するほか、株主提案に代替する株式会社と株主の対話を充実させる方策についても検討を行う。
b 法務省は、導入後の実質株主確認制度が円滑に機能するよう、効率的な運用及び運用スキームを検討するための名義株主となる金融機関を始めとした民間事業者団体の取組に対し、金融庁と連携しつつ、法制審議会における議論状況の適時の共有その他の協力を行う。
シ 従業員等に対する株式報酬の無償交付を可能とする会社法の見直し
【(前段)措置済み、(後段)令和6年度検討開始、令和8年度内を目途にできるだけ早期に結論、結論を得次第速やかに措置】
<基本的考え方>
従業員及び子会社役職員(以下「従業員等」という。)に対する株式の無償交付は、働き手にとっては企業価値向上に伴う株価の上昇により自身の資産形成にもつながり得ることから、働きがいのインセンティブとなり、また、株式会社にとっては人材確保及び中長期的な企業価値向上の有用な手段となるものであり、我が国の株式会社において導入ニーズが高まっているとの声がある。特に、米国等の海外人材は株式報酬に馴染みがあることから、グローバル展開する企業にとっては海外人材確保の武器にもなるとの指摘がある。
他方で、会社法(平成17年法律第86号)上、従業員等に対する株式の無償交付は認められておらず、これと同等の結果を実現するためには、従業員に金銭債権を一度付与した上で、当該金銭債権の現物出資を受けて株式を交付するという現物出資方式に基づく複雑な処理が必要となっており、制度を導入する際の支障となっているとの指摘がある。
このため、我が国株式会社における人材の確保及びインセンティブ向上の観点から、従業員等に対する株式の無償交付を実現すべきである。
以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。
<実施事項>
法務省は、従業員等に対する株式の無償交付が可能となるよう、以下の各事項を含む会社法の改正を検討し、法制審議会への諮問を行う。法務省は、法制審議会(同審議会から調査審議を付託された会社法制(株式・株主総会等関係)部会を含む。)において、以下の各事項を含む会社法の改正を検討し、令和8年度内を目途にできるだけ早期に結論を得て、速やかに必要な法案を国会に提出する。
① 従業員等に株式の無償交付を可能とする際の既存株主への配慮に関して、(ⅰ)当該交付は経営判断の範疇と整理し得るとの指摘に加え、(ⅱ)特に公開会社においては募集株式の発行は取締役会の決議で可能とされていること、(ⅲ)従業員等の労働意欲の向上その他の効果が得られると考えられるのであれば、会社側が適正な便益を受領しているものと評価することができ有利発行とはならないとの指摘を踏まえ、株主総会決議を不要とすること。
② 子会社役職員を株式の無償交付の対象とするに当たっては、子会社役職員であっても当該子会社の企業価値向上を通じて親会社の企業価値向上に貢献しており、親会社に対して便益を提供している一方で、完全子会社の役職員のみを制度の対象とした場合、子会社において他社の出資を受け入れて新規事業を行うときや、外国法人が現地法人を完全子会社化することができない法制度を採用している国において制度を利用できなくなるため、法改正の意義が失われるとの指摘を踏まえ、完全子会社以外の子会社役職員に対しても株式の無償交付を可能とすること。