特例有限会社は、定款の定めによって、監査役を置くことができる(会社法第326条第2項、整備法第17条第1項)。したがって、監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、監査役は、当該定款の変更の効力が生じた時に退任することになると考えるのが合理的である。定款の定めを廃止する以上、監査役を置くことはできないからである。
清算株式会社の監査役については、同じく会社法第336条の規定が適用除外(会社法第480条第2項)となっているが、当該定款の変更の効力が生じた時に退任する旨の規定(会社法第480条第1項第1号)が手当てされている。
特例有限会社については・・・手当て漏れであると思われる。でき上がった条文の解釈としては、「規定がない以上退任しない」とする立場もあり得るのかもしれませんが、そう解すると、当該定款の変更の決議自体が無効ということになってしまう。しかし、そのように解するよりは、監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更の決議は、現任監査役を解任する趣旨であると解して、退任の登記を認める方が理に適っているように思われる。
旧有限会社法においても有限会社に監査役を置く場合には定款の規定を要する(第33条第1項)とされていたし、定款の根拠がなければ、法律上の監査役ではないことになるのであるから、「登記原因を何とするかはともかく、退任する」は、妥当だと考える(「退任」でよいであろう。)。
cf. 会社法であそぼ Q&A3
http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2006/10/post_4866.html
旧株式会社の監査役である者の任期について、「なお従前の例による」(整備法第95条)にもかかわらず、いわゆる「解凍理論」によって、監査役が存しなくなるような会社類型への移行をする場合に、会社法第336条第4項の規定により監査役の任期が満了することを認めていることからも、特例有限会社の場合に退任を認めないことは平仄を欠くであろう。