横山亘著「会社法制定までの商法改正に伴う登記実務の変遷」(日本法令)
http://www.horei.co.jp/item/cgi-bin/itemDetail.cgi?itemcd=2472278
会社法の解釈を考える上で,平成17年改正前商法下における制度創設時の考え方はどうであったか,そして当時の登記実務の取扱いはどうであったかを振り返ることが有益であることが多いが,そういった意味で,本書は,貴重な書籍である。公刊誌に掲載されていない相談実例等も数多取り上げられているようである。
また,平成17年改正前商法時代を知らない若手の世代にとっては,登記記録を読み取る上で,当時の登記実務について理解を深めることが肝要であり,そういった意味でも,ありがたい書籍である。
ちょっとお高いが,お薦め。
「通達行政」と聞くと,マイナスイメージを持つ方が多いと思うが,通達や通知等は,法令解釈の行間を埋めるものであり,登記が必要なケースにおいては,ある意味登記によって完結すると言っても過言ではない法律行為における実務上の問題点について,いい意味で方向性を示すものである。先例について理解を深めることで,手続面のみならず,実体法についても深い理解が得られることになる。登記実務において,先例の活用が重要である所以である。
また,「前例がないから,できない」というケースも少なからずあるようであるが,実務上生じた問題点は,然るべく解決されなければならないのであり,「先例」は,正に「前例がない」ケースに解決の指針を与えるべく発出されたものも多いのである。「前例がない」ケースにおいても,先例に学び,法的安定性と具体的妥当性を兼ね備えた,新たな「先例」が編み出されるように,実務家は,先例をもっと活用して行かねばならないと考えるところである。
※ 拙稿「登記実務と先例活用の重要性」法の苑第55号(日本加除出版株式会社)