コメント欄御指摘のとおり,既に,「独立行政法人住宅金融支援機構が発行する不動産登記申請関係書類への押印の取扱いについて(依命通知)」〔平成21年11月2日付法務省民二第26411号〕があるとのこと。
ん~,忘れてました。
「三菱UFJローンビジネス株式会社及びダイヤモンド信用保証株式会社が発行する担保権の登記の抹消に係る委任状への押印の取扱いについて(通知)」(令和6年1月24日付け法務省民二第57号法務省民事局民事第二課長通知)が発出されている。
「三菱UFJ ローンビジネス株式会社ならびにダイヤモンド信用保証株式会社が発行する不動産登記申請関係書類への押印の取扱いについて(照会)」
「三菱UFJ ローンビジネス株式会社(以下 「MULB」 という。) ならびにダイヤモンド信用保証株式会社(以下「DHC」という。)(以下両社を総称して 「弊社」という。)の業務に係る不動産登記事務につきましては、平素より格別の御指導、御高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、不動産登記申請を行う場合に必要な書類には登記権利者(権利承継者を含む。)又は登記義務者の代表者印の押印が必要ですが、 弊社が保有する債権は2023年10月末現在で約74万件 (MULB 約 68万件、 DHC 約6万件)あり、 また、 そのうち担保権抹消登記だけでも年間約5万件 (MULB 約4万件、 DHC 約1万件)という膨大な量となるため、登記関係書類すべてに押印を行うのは事務手続上および体力上困難を極めるところです。
つきましては、原則として、 弊社らが作成する不動産の担保権抹消登記のための委任状につきましては、 代表者印の押印に代えて、当該代表者印の印影を弊社らがそれぞれ業務上使用する電子計算機に登録し、この印影を当該担保権抹消登記用委任状に印刷したものを、貴管下法務局又は地方法務局に提出させていただく取扱いとして差し支えないか照会します。
なお、差し支えない場合は、その旨を貴管下法務局及び地方法務局登記官に対して周知いただきますよう併せて依頼します。」
という照会に対して,
「貴見のとおり取り扱われて差し支えない。この旨法務局及び地方法務局に通知した。」旨の回答がされたようである。
はて?
現行法においては,抵当権等の抹消の登記義務者についても,登記済証が添付される場合,又は登記識別情報が提供される場合には,委任状に「署名」すれば,当該委任状への押印は不要である(規則第49条第1項第2号,第47条第3号参照)。
cf.
平成22年4月9日付け「不動産登記の申請において,押印を要しない場合」
全ての委任状に「記名押印」したり,「署名」したりするのは,体力上困難を極める?
本件のような取扱いを許容するぐらいなら,実印の押印及び印鑑証明書の添付を要するもの以外は,押印義務を廃止したらどうか?
担保権の抹消の登記は,軽く考えられがちであるが,担保権者の権利保全の観点からは,安易に抹消がされるべきではなく,重要なステップが踏まれるべきものである。
当然に,全ての金融機関や保証会社の担保権の抹消登記についても同様の取扱いがされるものではないようであるが,順次拡大されるのであろうし,委任状の偽造等の事故が起きないこと祈りたい(登記識別情報が提供されているから問題ないという問題ではないはずである。)。
そういえば,15年くらい前に,保証会社の委任状で,こっそり印影が印刷されたものが出回ったことがあり,その際は,法務局から当然ダメ出しが出て,鎮静化したのであるが,今回は,お墨付きが出てしまった・・・。