松井信憲著「商業登記ハンドブック」(商事法務)432頁の解説は、次のとおりである。
「法律又は定款で定めた役員の員数を欠くに至らない場合(例えば、5名以内の監査役を置くという定款の定めのある監査役会設置会社において、5名いた監査役のうち1名が死亡し、1名を補充する場合等)には、従前の解釈と同様に、これを補欠監査役とみることはできず、任期を法定の期間より短縮することはできない」
上記は、先の記事の設例のケースでは、任期を短縮することはできない旨の明確な解説であり、私は、妥当であると考える。
理由は、先に述べたとおりであり、監査役は、法定任期が厳に保障されており、短縮できるのは例外的な場合であるから、限定的に解釈されるべきであり、適用範囲を広く認めることには慎重でなければならない。後任者の任期を前任者の残任期間に限る必要があるという場合に限られるべきである。設例のケースは、数人の監査役の任期満了時期を統一するのが便宜であるというだけの話であり、法定任期の保障の例外として後任者の任期を前任者の残任期間に限る必要がある場合とはいえない。
「欠けた」状態を「補う」のが「補欠」であり、設例のケースでは、「欠けた」状態にはなく、単に「減少」した員数を元に戻すために選任しているだけであるから、「補欠」には該当せず、実は「増員」である。したがって、会社法第336条第3項の規定の適用を受けることはできないと考えるべきである。
cf.
平成18年6月30日付「株式会社の監査役の補欠規定の適用の有無」