司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

公正証書遺言のデジタル化

2024-09-04 09:38:13 | 法務省&法務局関係
公正証書の作成に係る一連の手続のデジタル化について
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00064.html

 いわゆる公正証書のデジタル化は,公布の日(令和5年6月6日)から2年6か月以内に施行されるということで,令和7年10月にもスタートするといわれている。例えば,最もポピュラーな手続である公正証書によって遺言をする場合,従来どおり書面によることもできる(改正後公証人法第36条第2号)が,電磁的記録をもって公正証書を作成するとき(同条第1号)は,新しい運用が始まることなる。

・ 遺言者は,公証人の面前での手続を要しない。
・ 公証人並びに遺言者及び証人がWEB会議システムにより通話することで手続を行うことができる(4人が全く別の場所に存在することで構わない。改正後公証人法第31条)。
・ 公証人は,電磁的記録をもって公正証書を作成し,遺言者及び証人がタブレットを利用してタッチペン等でサインし(名前を書く。改正後公証人法第40条第5項),公証人が電子署名をする(同条第4項第1号)。

 いわゆる本人確認については,「官公署の作成した印鑑に関する証明書又は署名用電子証明書等を提供する方法その他の法務省令で定める方法」(改正後公証人法第28条)により行われる。
 
 改正前
民法
 (公正証書遺言) 
第969条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
 一 証人二人以上の立会いがあること。
 二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
 三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
 四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
 五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。


改正後
民法
(公正証書遺言)
第969条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
 一 証人二人以上の立会いがあること。
 二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
2 前項の公正証書は、公証人法(明治四十一年法律第五十三号)の定めるところにより作成するものとする。
3 第一項第一号の証人については、公証人法第三十条に規定する証人とみなして、同法の規定(同法第三十五条第三項の規定を除く。)を適用する。

公証人法
 (嘱託の方法等)
第28条 嘱託人は、公正証書の作成を嘱託する場合には、法務省令で定めるところにより、公証人に対し、官公署の作成した印鑑に関する証明書又は署名用電子証明書等(電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律(平成十四年法律第百五十三号)第三条第一項に規定する署名用電子証明書その他の電磁的記録であって法務省令で定めるものをいう。第三十二条第三項において同じ。)を提供する方法その他の法務省令で定める方法により、嘱託人が本人であることを明らかにしなければならない。

 (映像等の送受信による通話の方法による通訳等)
第31条 前二条の場合において、公証人は、嘱託人からの申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、法務省令で定めるところにより、公証人並びに嘱託人及び通訳人又は証人が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、通訳人に通訳をさせ、又は証人を公正証書の作成に立ち会わせることができる。

 (書面又は電磁的記録による公正証書の作成)
第36条 公証人は、第二十八条又は第三十二条の規定による嘱託があった場合には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものをもって公正証書を作成するものとする。
 一 次号に掲げる場合以外の場合 電磁的記録
 二 電磁的記録をもって公正証書を作成することにつき困難な事情がある場合 書面

 (公正証書の記載又は記録の正確なことの承認等)
第40条 公証人は、その作成した公正証書を、列席者に読み聞かせ、又は閲覧させ、列席者からその記載又は記録の正確なことの承認を得なければならない。
2 公証人は、公正証書の作成に当たり通訳人に通訳をさせたときは、当該通訳人に公正証書の趣旨を通訳させて、前項の承認を得なければならない。
3 公証人は、嘱託人からの申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、法務省令で定めるところにより、公証人及び列席者が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、前二項に規定する行為をし、又はこれをさせることができる。ただし、当該申出をした嘱託人以外に他の嘱託人がある場合にあっては、当該他の嘱託人に異議がないときに限る。
4 公証人は、第一項の承認を得たときは、その旨(第二項の規定により通訳人に通訳をさせた場合にあっては、その旨を含む。)を公正証書に記載し、又は記録し、かつ、当該公正証書について、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める措置を講じなければならない。
 一 電磁的記録をもって公正証書を作成する場合当該公正証書が指定公証人の作成に係るものであることを示すために講ずる措置であって、当該公正証書が改変されているかどうかを確認することができる等当該指定公証人の作成に係るものであることを確実に示すことができるものとして法務省令で定めるもの
 二 書面をもって公正証書を作成する場合署名及び第二十一条第一項の印鑑による押印
5 列席者は、第一項の承認をしたときは、前項の公正証書について、署名又はこれに代わる措置として法務省令で定めるものを講じなければならない。
コメント

勝手に「#PR」とステマ規制

2024-09-03 17:12:55 | 消費者問題
AERAdot.
https://dot.asahi.com/articles/-/232672?page=1

「消費者庁表示対策課の担当者は、広告の定義について、「広告とは、表記内容の決定について広告主側が関与したものを指します」と説明する。」

「たとえば、企業側と契約を交わし、企業側から指示でも、注文でも、お願いでも、インフルエンサーがつくる内容に少しでも企業が関わってくれば広告となるそうだ。その際、対価が発生しているか、いないかは関係ないという。つまり、企業側が広告料を払っていても、「インフルエンサーは広告主側から表記について何も言われていなければ、PRなどの表記をする必要はありません」(前出・消費者庁担当者)とのこと・・・・・逆に対価(お金以外でも)がなくても、仮に長年の付き合いがある企業の担当者から口頭で、「新製品が出たから名前だけでもお願い」などと言われてちょっとでも出せば、無報酬で善意だったとしてもそれは広告案件であり、明示しなければならないのだという。」(上掲記事)

 なかなか難しい。

cf. 令和5年10月1日付け「ステマ」きょうから禁止
コメント

「公証人手数料令の一部を改正する政令案」

2024-09-03 12:44:01 | 会社法(改正商法等)
「公証人手数料令の一部を改正する政令案」に関する意見募集
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&Mode=0&id=300240902

〇 改正案の内容
 定款認証手数料について,定款に記載され,若しくは記録された資本金の額が100万円未満である場合において,①発起人が自然人で,かつ,3人以内であり,②発起人が設立時発行株式の全部を引き受け,③取締役会を設置していない定款であるときは,1万5000円(現行 3万円)に改める。

〇 施行期日
 令和6年12月1日(予定)

 このままでは,公証人制度が維持できなくなりそうである。早晩,公証人役場を独立して構えず,本局又は支局の庁舎内に置くことにならざるを得ないのではないか。
コメント

令和6年改正民法における法定養育費制度と先取特権

2024-09-03 11:47:02 | 民法改正
元裁判官妻もふもふのブログ
https://j-mfmf.com/place-lien/

 非常にわかりやすい解説である。ブログの更新が待たれる。
コメント

法務省「令和7年度概算要求」

2024-09-03 11:14:50 | 法務省&法務局関係
法務省
https://www.moj.go.jp/kaikei/bunsho/kaikei02_00137.html

「戸籍上の氏名の振り仮名記載法制化への対応」に114億円もかかるんですね。
コメント

四国と九州を結ぶ橋

2024-09-03 11:00:40 | 不動産登記法その他
Merkmal
https://news.yahoo.co.jp/articles/ba49d4d9441316c2a97274ded2e2f744397a0f40

「具体的には、

・大分県東部の「佐賀関(さがのせき)半島」
・愛媛県西部に突き出た「佐田岬半島」

を結ぶ橋やトンネルの建設計画を指している。この壮大な構想は半世紀以上も前から存在しているが、いまだに実現していない。」(上掲記事)

 計画自体は知らなかったが,あってもよさそうだとは思っていた。とはいえ,実現にはハードルが高そうである。
コメント

募集新株予約権の機動的な発行に関する制度の創設(産業競争力強化法の改正)

2024-09-03 00:06:11 | 会社法(改正商法等)
「新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第45号)が令和6年6月7日に公布されており,昨日(9月2日)から施行されている。

 この改正により,スタートアップによるストックオプションの柔軟かつ機動的な発行を可能とするために,産業競争力強化法における一定の要件を満たせば,「権利行使価額」及び「権利行使期間」の決定を取締役会に委任することができるものとされた。

cf. 閣議決定がされました
https://www.meti.go.jp/press/2023/02/20240216001/20240216001.html

産業競争力強化法
https://www.meti.go.jp/policy/economy/kyosoryoku_kyoka/index.html

整備政令
https://www.meti.go.jp/press/2024/08/20240827001/20240827001.html
コメント

大阪市,住民票等の各種証明書の取得手続で,キャッシュレス決済を導入

2024-09-02 11:38:28 | いろいろ
大阪市
https://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/shimin/0000634281.html

「全区役所の住民情報窓口待合フロアに、マイナンバーカードを利用して住民票等の各種証明書を取得いただける端末を設置します・・・・・全国のコンビニエンスストアに設置されているマルチコピー機と同様の発行手順になっておりますので、区役所で体験後は、ぜひお近くのコンビニエンスストア設置のマルチコピー機もご利用ください。」

「 全区役所、出張所、サービスカウンター等の住民情報窓口に「キャッシュレス決済」を導入します。窓口で発行する各種証明書の発行手数料を、クレジットカード、電子マネー及びコード決済でお支払いいただけます。」
コメント

債権譲渡・動産譲渡登記の設定は「危ない会社」か?

2024-09-02 11:04:24 | 会社法(改正商法等)
東京商工リサーチ
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198872_1527.html

「譲渡人1万680社のうち、債権譲渡・動産譲渡登記の抹消・満了前に倒産した企業は375社だった。登記設定から1カ月以内の倒産は34社(0.31%)、1カ月以上1年以内の倒産は130社(1.21%)、1年以上2年以内の倒産は47社(0.44%)だった。倒産比率は3.51%に達する。」(上掲記事)

 債権譲渡・動産譲渡登記をしたから,すぐにどうこうというものでもないことがわかる。
 
「2024年6月、将来キャッシュフローを含む事業価値を担保にした「事業性融資の推進等に関する法律」が成立し、2026年度にも施行される予定だ。政府は不動産や個人保証に依存しない融資を促進しており、「企業価値」を担保にして資金のないスタートアップ企業などへの支援も期待される。」

 企業価値担保権がどのように利用されるのか,である。
コメント