最高裁令和4年12月26日第2小法廷判決
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=91644
【判示事項】
離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合において当事者が婚姻中にその双方の協力によって得たものとして分与を求める財産の一部につき財産分与についての裁判をしないことは許されない
「民法は、協議上の離婚に伴う財産分与につき、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができると規定し(768条2項本文)、この場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定めると規定している(同条3項)。そして、これらの規定は、裁判上の離婚について準用されるところ(同法771条)、人事訴訟法32条1項は、裁判所は、申立てにより、離婚の訴えに係る請求を認容する判決において、財産の分与に関する処分についての裁判をしなければならないと規定している。このような民法768条3項及び人事訴訟法32条1項の文言からすれば、これらの規定は、離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合には、当事者が婚姻中にその双方の協力によって得たものとして分与を求める財産の全部につき財産分与についての裁判がされることを予定しているものというべきであり、民法、人事訴訟法その他の法令中には、上記財産の一部につき財産分与についての裁判をしないことを許容する規定は存在しない。
また、離婚に伴う財産分与の制度は、当事者双方が婚姻中に有していた実質上共同の財産を清算分配すること等を目的とするものであり、財産分与については、できる限り速やかな解決が求められるものである(民法768条2項ただし書参照)。そして、人事訴訟法32条1項は、家庭裁判所が審判を行うべき事項とされている財産分与につき、手続の経済と当事者の便宜とを考慮して、離婚請求に附帯して申し立てることを認め、両者を同一の訴訟手続内で審理判断し、同時に解決することができるようにしている。そうすると、当事者が婚姻中にその双方の協力によって得たものとして分与を求める財産の一部につき、裁判所が財産分与についての裁判をしないことは、財産分与の制度や同項の趣旨にも沿わないものというべきである。」
cf. 事案の概要
https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/2022/jiangaiyou_03_1115.pdf
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=91644
【判示事項】
離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合において当事者が婚姻中にその双方の協力によって得たものとして分与を求める財産の一部につき財産分与についての裁判をしないことは許されない
「民法は、協議上の離婚に伴う財産分与につき、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができると規定し(768条2項本文)、この場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定めると規定している(同条3項)。そして、これらの規定は、裁判上の離婚について準用されるところ(同法771条)、人事訴訟法32条1項は、裁判所は、申立てにより、離婚の訴えに係る請求を認容する判決において、財産の分与に関する処分についての裁判をしなければならないと規定している。このような民法768条3項及び人事訴訟法32条1項の文言からすれば、これらの規定は、離婚請求に附帯して財産分与の申立てがされた場合には、当事者が婚姻中にその双方の協力によって得たものとして分与を求める財産の全部につき財産分与についての裁判がされることを予定しているものというべきであり、民法、人事訴訟法その他の法令中には、上記財産の一部につき財産分与についての裁判をしないことを許容する規定は存在しない。
また、離婚に伴う財産分与の制度は、当事者双方が婚姻中に有していた実質上共同の財産を清算分配すること等を目的とするものであり、財産分与については、できる限り速やかな解決が求められるものである(民法768条2項ただし書参照)。そして、人事訴訟法32条1項は、家庭裁判所が審判を行うべき事項とされている財産分与につき、手続の経済と当事者の便宜とを考慮して、離婚請求に附帯して申し立てることを認め、両者を同一の訴訟手続内で審理判断し、同時に解決することができるようにしている。そうすると、当事者が婚姻中にその双方の協力によって得たものとして分与を求める財産の一部につき、裁判所が財産分与についての裁判をしないことは、財産分与の制度や同項の趣旨にも沿わないものというべきである。」
cf. 事案の概要
https://www.courts.go.jp/saikosai/vc-files/saikosai/2022/jiangaiyou_03_1115.pdf