司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

脱ハンコに挑む(2)~海外での公正証書による遺言に係る遺言書の作成

2021-01-19 08:36:57 | 民法改正
日経記事(有料会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO68280560Y1A110C2EA1000

「認め印をなくす調整で、最後に残ったのは法務省が所管する海外での遺言作成に関する手続きだった。
 民法は海外在住の日本人は在外公館の領事を公証人として遺言を作成できると定める。この手続きで認め印が必要だった。
 法務省は国内での同様の手続きには実印を求めており、海外で認め印でも良いとするのは印鑑登録が難しいからだと主張し廃止しかねていた。しかし河野は認め印全廃にこだわった。
 11月10日。法務省幹部と夜まで協議を続けた法相の上川陽子は、領事にパスポートを示し本人が署名すれば認め印は不要とすることで折れた。」(上記記事)

民法
 (外国に在る日本人の遺言の方式)
第984条 日本の領事の駐在する地に在る日本人が公正証書又は秘密証書によって遺言をしようとするときは、公証人の職務は、領事が行う。

「公証人の職務は,領事が行う」ものとされているだけで,基本的なルールは,民法第969条及び第969条の2の原則どおりである。

 したがって,基本ルール「遺言者及び証人が・・・署名し,印を押すこと」(民法第969条第4号)が維持されるべきというのが法務省の主張であり,これが「脱ハンコ」に押し切られたということである。

 国内での公正証書による遺言に係る遺言書の作成においては,遺言者の押印は,「実印」を押すルール(慣行?)であるが,海外では「認印」でよいとする慣行(?)であったところ,この認印の押印が不要とされることになったということであるようだ。

 基本的な規律が「脱ハンコ」の美名の下に,乱暴に破壊された感もある。

 実務としては,「遺言者が押印することができない」云々を付記する形式を採るのであろうか(上掲第4号ただし書参照)。

「拇印」を押印することで代用することもできそうであるが・・・。

 ところで,在外公館で公正証書を作成した場合には,次のような問題点もあるようだ。

「海外で公正証書遺言を作成する場合は、在外領事館の領事が公証人となることができます(民法984条)。ただし、領事による公正証書遺言は、日本で作成する公正証書遺言とは形式が異なり、実際の相続手続き時に窓口で拒否されるなど、スムーズにいかない恐れもあります。したがって、日本に帰国して公証役場で公正証書遺言を作成することが困難な場合には、ひとまず自筆証書遺言を作成しておくことになるでしょう。」(後掲HP)

cf. 海外在住邦人相続協会
http://kaigaisouzoku.jp/wp/yuigon-02/
コメント (1)