木村哲也「電子公証制度の現状と問題点」
https://www.kansai-u.ac.jp/ILS/publication/asset/nomos/18/nomos18-09.pdf
※ 2005年頃の論文であると思われる。木村氏(故人)は,当時,関西大学大学院法務研究科教授。
「従来から紙ベースで公証人が作成してきた金銭消費貸借公正証書や公正証書遺言等の証書の電子版とでもいうべき、電子公正証書については、いまだ制度化されていない。その理由は、次のように説明されている。①公正証書の作成過程において、当事者の意思決定が慎重に行われなければならないが、電子的方法では当事者の意思確認が容易にはできない。② 仮に公正証書だけ執行証書を電子的に作成できたとしても、民事執行手続において、これが電子的に利用できなければ意味がない。③現時点での需要が見込めない。」(上掲木村)
文中の「説明」のソースは,小川秀樹「電子公証制度の創設について」自由と正義2000年8月号であるようだ。小川氏は,当時,法務省民事局参事官で,現在は広島高裁長官。
ところで,法務局における遺言書保管制度においては,自筆証書による遺言に係る遺言書については,「遺言書保管ファイル」は,遺言者の死亡後150年間も保管されるし,遺言書保管所における「遺言書保管ファイル」の閲覧や「遺言書情報証明書」の交付の請求は,全国の全ての遺言書保管所において可能である。
遺言公正証書について,電子公正証書により作成することが可能となれば,同様の長期保管(遺言者が120歳の日から150年)や,全国全ての公証役場において,閲覧したり,「同一の情報の提供」の申請をしたりすることが可能になるであろう。
今後デジタル庁が設置され,諸々の手続のデジタル化が推進されることになれば,遺言執行の場面においても,電子公正証書であることが不都合であることはなくなるであろう。
上記論文当時と異なり,電子公正証書の可能性が拓けて来たのではないだろうか。
「デジタル遺言」は,まず遺言公正証書から始めてみてはどうだろうか。
cf. 「デジタル遺言」に関する記事一覧
https://blog.goo.ne.jp/tks-naito/s/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E9%81%BA%E8%A8%80