司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

スーパー・ファストトラック・オプション(定款認証・設立登記のオンライン同時申請)

2021-01-05 17:06:38 | 会社法(改正商法等)
「スーパー・ファストトラック・オプション」(定款認証・設立登記のオンライン同時申請)は,令和3年2月15日から利用可能となるはずなのであるが・・・。

「スーパー・ファストトラック・オプション」とは,定款認証と設立登記をオンラインで同時に申請し,当該申請と同日中にテレビ電話機能を利用して認証手続を了し,申請から24時間以内に設立登記も完了するという,超速の設立手続である。

 公証役場は,準備万端とも聞くが・・・。

 法務省からのリリースは,未だである。

cf. 令和2年12月5日付け「設立登記の申請当日にテレビ電話定款認証が完了しないと登記申請は却下される」
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電子公正証書の可能性

2021-01-05 14:51:28 | いろいろ
木村哲也「電子公証制度の現状と問題点」
https://www.kansai-u.ac.jp/ILS/publication/asset/nomos/18/nomos18-09.pdf
※ 2005年頃の論文であると思われる。木村氏(故人)は,当時,関西大学大学院法務研究科教授。

「従来から紙ベースで公証人が作成してきた金銭消費貸借公正証書や公正証書遺言等の証書の電子版とでもいうべき、電子公正証書については、いまだ制度化されていない。その理由は、次のように説明されている。①公正証書の作成過程において、当事者の意思決定が慎重に行われなければならないが、電子的方法では当事者の意思確認が容易にはできない。② 仮に公正証書だけ執行証書を電子的に作成できたとしても、民事執行手続において、これが電子的に利用できなければ意味がない。③現時点での需要が見込めない。」(上掲木村)

 文中の「説明」のソースは,小川秀樹「電子公証制度の創設について」自由と正義2000年8月号であるようだ。小川氏は,当時,法務省民事局参事官で,現在は広島高裁長官。

 ところで,法務局における遺言書保管制度においては,自筆証書による遺言に係る遺言書については,「遺言書保管ファイル」は,遺言者の死亡後150年間も保管されるし,遺言書保管所における「遺言書保管ファイル」の閲覧や「遺言書情報証明書」の交付の請求は,全国の全ての遺言書保管所において可能である。

 遺言公正証書について,電子公正証書により作成することが可能となれば,同様の長期保管(遺言者が120歳の日から150年)や,全国全ての公証役場において,閲覧したり,「同一の情報の提供」の申請をしたりすることが可能になるであろう。

 今後デジタル庁が設置され,諸々の手続のデジタル化が推進されることになれば,遺言執行の場面においても,電子公正証書であることが不都合であることはなくなるであろう。

 上記論文当時と異なり,電子公正証書の可能性が拓けて来たのではないだろうか。

「デジタル遺言」は,まず遺言公正証書から始めてみてはどうだろうか。

cf. 「デジタル遺言」に関する記事一覧
https://blog.goo.ne.jp/tks-naito/s/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E9%81%BA%E8%A8%80
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定款を公正証書により作成することができる

2021-01-05 13:54:46 | 会社法(改正商法等)
 拙編著「会社法定款事例集(第3版)」(日本加除出版)17頁に,「定款自体を公正証書により作成することも認められている」とある。

 通常思いもよらない斬新な手続(実例は,皆無に近いと思われる。)であるが,会社法上問題はない(=設立登記の添付書面として通用する)というのが日公連の統一見解であるようである。

 現行法上は,「電子公正証書」という制度が存しないので,公正証書によると印紙税4万円の対象となってしまうことから,専門家関与のケースでは利用者側のニーズは生まれないが,発起人本人が手続をする関係で,書面によらざるを得ない場合には,活用されてもよいと思われる。

 この場合の公証人手数料は,「目的額が算定不能」ということで,11,000円になるようにも思われるが,おそらく定款認証と同額(5万円)であろう。

 将来的に電子公正証書が可能になれば,公証人手数料次第ではあるが,定款も電子公正証書により作成することがデフォルトになる時代が到来するかもしれない。オンラインによる手続にはなじみ難い感もあるが。


 余談ながら,

1.電子定款は,長期の保存が可能であるので,現行の20年よりも保存期間を長くすることはできないか。ニーズはあるのかと問われれば・・・ないことはないと思われる。

2.設立後に「同一の情報の提供」を受けたい場合に,オンライン申請によらざるを得ない点は,改善することはできないか。法務省HPには,「原則として,以下の登記・供託オンライン申請システムを経由する方法により,同一の情報の提供を請求していただきますが,認証等を受けた電磁的記録を公証人役場で受け取られる際に,書面による同一の情報の提供の請求をする場合についてのみ,公証人役場の窓口で書面により請求することができます。」とあるが,全国の全ての公証役場において,電子原始定款を閲覧したり,同一の情報の提供について書面申請したりすることを認めることが可能ではないかと思われる。
※ 遺言書保管所における「遺言書保管ファイル」の閲覧や「遺言書情報証明書」の交付の請求のイメージである。
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