PATEX HUNTER

マルクス経済学の視点で、「パテック・フィリップ」と「ロレックス」の世界を中立的私見で、社会科学的に分析しています。

ロレックスの技術革新と当時の日本人

2008-08-26 | 社会・経済

最近の日本において,理科系志願の学生が減少していることは良く知られているところです。よくNHK特集で放送される『技術立国』ナントカという,日本は技術による外需が戦後の高度成長を大きく促した,ということですが,どうも内実は私のような田舎から都会に出てきた田舎者が都市生活で必要な家電製品を個々旺盛に購入したことによる内需が日本の戦後復興と好景気をもたらしたようです。

 それでは,そもそも日本は他国よりも優れた技術をいつから持っていたのでしょうか。少なくとも第一次大戦の好景気まえには,まさに今の日本の若者全般が持つ「ヤル気ナシ」の厚い雲に覆われ日本は光すら届かない前途多難な絶滅の危機にある状況だったことが,真夏の神田の古書店で立ち読みメモした「貿易上より見たる日本の危殆」『廓清』(19147月号)という雑誌に慶応の福沢さんの弟子の,有名な貿易商人・森村市左衛門が次のように述べています。

「一体品物を原料のまま輸出するのは未開国の業である。〔中略〕然るに日本のは僅かに羽二重位が金目のもので,石炭と言い銅と言い生糸と言い総て原料のままで出て,知恵で作り上げたものとてはほとんどない。〔中略〕『どうにかなる』とのん気に構えず,この人〔海外で成功している邦人商人〕のように『どうにかする』でなければならぬ。」

イギリスは鉄鉱から工作機械を製造輸出し,フランスは生糸より紡績を以って衣類を輸出しているのに日本人は個々人では何のとりえもなく,江戸時代の将軍や大名,または国家,政府など「万事人に頼った」人任せだというのです。

この論文の同誌掲載直後から日本は大戦景気に沸きかえり,空前の経済成長へと突入していきます。また塹壕戦によるトータルウォーは兵士にそれまでの懐中時計から腕時計の需要を高め,自動巻きと防水時計という機能の充実も特に軍需用から要求されました。イノベーションを追求するROLEXの栄光の歴史がここから始まるわけです。

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