女性ラインは別として,宝飾ローレックスの一般化は,ロレックス史上1950年代のデイデイトやデイトジャストを以ってその嚆矢とする。
宝飾ローレックスとは,貴金属(金無垢やプラチナ)の外装パーツや文字板にダイヤモンド,サファイア,エメラルドなどの天然〝石〟を用いて装飾したロレックスをいう(下図参照)。文字板の表面に天然貝や隕石で覆ったロレックスも宝飾ローレックスの部類に入れてもよい。
スポロレなどのモデルラインによって異なるが,ロレゾールなどのコンビモデルは別として,ロレックスは一般に,同じモデルにはステンレスラインと貴金属ラインの二極化がある。貴金属ラインには更に宝飾ラインとの二極化がある。
捉え方によっては,貴金属ラインから見ればステンレスラインは廉価ラインであり,宝飾ラインから見れば貴金属ラインはノーマルラインと見なされる。
それぞれのオーナーのライフスタイル,趣味趣向に応じた人類への総当り戦とでも言うべく,ロレックスの数多のラインナップは,多様なバブルバック・ロレックス以来のロレックス社のお家芸ともいえる。
ロレックスはもちろん高級時計である。世界人類が共有できる腕時計ではない。香港やシンガポールやフランクフルトやパリなどの海外ロレックス正規店のショーウィンドウには様々なロレックスがディスプレイされている。もちろん日本でも。しかし特に海外の高級ショッピングモールや日本の場合は銀座にでも行けば,ディスプレイされているロレックスのうち,宝飾ローレックスの占有率が異様に高いことに気づくはずである。
ロレックス社が意図的に宝飾ローレックスばかりを製造しているわけではなく,単にそれらを買える客数が人類の全般的において少ないだけである。いくら一般人には華やかなイメージと永遠の憧れのロレックスの修理専門部門のビルディングがある江東区東陽町が,その昔,数多の美人遊女が華麗にその生業とし,庶民には羨望の廓が立ち並んだ洲崎弁天町という名の,江戸において吉原と双璧を成した,幕府や政府の公娼風俗地区であったとしても,貴金属無垢のロレックスと宝飾ローレックスの境界線は,純なロレヲタには中々踏み入れ越えることができない赤線地帯とも言えなくもない,と私には思える今日この頃です。