タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

母乳とくすりの話のその後

2018-02-26 21:29:14 | 産科
大阪府寝屋川市の大晴(たいせい)くん、1月22日生まれ。
「おおらかに、のびのびと、晴れやかな人生を送ってください。
お産では、うれしくて感動でした。
どの方も親切で、安心できました。」

大阪からの里帰りでしたね。
大阪と言えば、大阪で一番大きな(?)病院の産婦人科部長と、
それに助産師の師長さんに会ってきましたよ。
と言うのも、この土曜日は、同窓会でしたから。
京大病院の研修医6人と当時の新人助産師の同窓会だったのですよ。
同期の助産師さんも、その病院の看護師長さんになられていたのですね。

本当は8人だったのですが、すでに2人は他界。
みな部長クラスで頑張っているようでしたよ。
30年ぶりに一同が会したのですが、実は学会などでもよく会うし、
研究時代も一緒だったりで、目新しさは無かったのですが。

そのうちの一番仲の良かった1人が静岡の病院の部長を辞めて、
北海道の、人口がわずか2万人の町の町立病院に行くので、そのお別れ会も兼ねていました。
そうですね、あと10年ほどは好きな仕事をしてみたいのでしょうね。
もっとも私も、20年以上前に、縁の無い篠山に引っ越してきて、
産婦人科医療を一から始めたのですから、同じようなものかもしれません。

医者の世間話なんて、給料がいくらだとか、
夏休みはどれくらい取れるだとか、人事がどうとか、
資格試験の話だとか、定年後にどう道を付けるかなどの無駄話ばかりで、
ちょっとがっかりでしたよ。

敢えて言えば、自分の娘は大病院では産ませられないな、という再認識でしょうか。
だから開業したのですからね。
みなさんに良いお産をさせてあげよう、というその一心で。
だって話を聞いていると、本当に医療事故が多いのですよ。
もちろん忙し過ぎるというのも有るのでしょうが、構造的な問題が大きいのでしょう。

思い出話はそれくらいにして、前回の宿題の答え合せをしておきましょう。
潰瘍性大腸炎という病気に使われる薬で、メサラジン(商品名ペンタサ)という薬を取り上げました。
妊娠中や授乳中に飲んでもよいのかどうかという、なぞなぞでしたよ。

薬には必ず添付文書というものが添付されています。
調べたければ皆さんも、ネットで簡単に検索できますよ。
ただしたいていの場合は、妊娠中は必要が有れば飲んでも良いとあります。
こういうのを有益性投与、と言うのです。

ですが授乳婦さんでは赤ちゃんに移行してしまうのでダメ、禁忌と書いてあることが多いのですよ。
お母さんが飲むのは良いのですが、授乳はしてはいけないという意味ですよ。
それでこの薬もやはり、授乳禁と書いてあります。
製薬会社ですから、たいていはダメと書くのですよね。
これでは産後に飲める薬なんて無いではないですか。

仕方がないので私が虎の巻にしている、山下晋という薬剤師の先生が個人で古くから書かれている、
「妊婦、授乳婦への薬物投与時の注意」という本を調べてみたのです。
ただ著者が高齢になられ、改訂版が出ないのが難点です。
だって薬は、毎年新しいものが発売されますからね。
製薬会社の本と違って、文献から丁寧に調べられています。

その教科書によっても、
メサラジンは妊娠中は有益性投与だけれど、
褥婦はやはり授乳禁と書いてありました。
理由は、動物実験では催奇形性は認められていないが、
海外において新生児に白血球や血小板、赤血球の現象が起こったという報告が有るようです。
それに、母乳中に移行し、乳児に下痢が起こったと書いてありました。

やはり良くないのか。
それで今回さらに、大分県薬剤師会の発行されている書籍を取り寄せたのですよ。
こちらは定期的に改定されています。
それによると、こちらも乳児に下痢を引き起こしたとする報告があるため、
乳児の便の状態を観察しながら母乳育児を行う必要がある、とありました。
すなわち注意すれば安全(危険性は少ない)、という分類でしたよ。
同じ副作用報告を引用していても、考察は違うのですね。

データも有ります。
相対的乳児投与量(RID値)が、0.12〜8.76%で、
薬としては割と赤ちゃんに取り込まれる方だな、というところまで分かります。
けっこうおもしろいのですよ。
たかがデータが並んでいるだけの本ですが、よくまとめられています。
前回もお話しましたが、例えば甲状腺機能障害に対する薬を飲まれている妊婦さんは多いのです。
だからメルカゾールの説明、なんていうのも興味が有りましたよ。

よくみなさんから電話がかかってくるのです。
内科でこんな薬を処方されたけれど、飲んでも良いか、とね。
でもね、そういうことは処方した先生に聞いてもらわないと。
それが無理なら飲まなくても良いのではないですか。
でも長期に飲まないといけない薬などは、ちゃんとお調べしますから受診してくださいね。





この記事についてブログを書く
« 妊娠と内科的な疾患の関係 | トップ | 卵巣がんはスクリーニングで... »
最新の画像もっと見る

産科」カテゴリの最新記事