竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌1734から集歌1738まで

2021年04月26日 | 新訓 万葉集
少辨謌一首
標訓 少辨(せうべん)の歌一首
集歌一七三四 
原文 高嶋之 足利湖乎 滂過而 塩津菅浦 今者将滂
訓読 高島(たかしま)し阿渡(あと)し湖(みなと)を滂(こ)ぎ過ぎて塩津(しほつ)菅浦(すがうら)今は滂(こ)ぐらむ
私訳 高島にある阿渡の湖を船を操って行き過ぎ、塩津の菅浦を、今、船は行くのでしょう。

伊保麻呂謌一首
標訓 伊保麻呂(いほまろ)の歌一首
集歌一七三五 
原文 吾疊 三重乃河原之 礒裏尓 如是鴨跡 鳴河蝦可物
訓読 吾(あが)畳(たたみ)三重(みへ)の川原(かはら)し礒(いそ)裏(うら)にかくしもかもと鳴くかはづかも
私訳 私の畳を三重に重ねるような、三重の川原の水辺の磐の裏で、このように「そうでしょうかとばかりに「かも」と鳴く蛙よ。

式部大倭芳野作謌一首
標訓 式部(しきぶ)の大倭(やまと)の芳野にして作れる歌一首
集歌一七三六 
原文 山高見 白木綿花尓 落多藝津 夏身之川門 雖見不飽香開
訓読 山(やま)高(たか)み白(しろ)木綿花(ゆふはな)に落ち激(たぎ)つ夏身(なつみ)し川門(かはと)見れど飽(あ)かぬかも
私訳 山が高く、白い木綿の花のように流れ落ちて渦巻く夏身の川の狭間を見ると、心を奪われ見飽きることがありません。

兵部川原謌一首
標訓 兵部(ひょうぶ)の川原(かはら)の歌一首
集歌一七三七 
原文 大瀧乎 過而夏箕尓 傍為而 浄川瀬 見何明沙
訓読 大瀧(おほたき)を過ぎて夏身(なつみ)に近きして清(きよ)き川瀬し見るしさやけさ
私訳 大瀧を行き過ぎて激流渦巻く夏身に近いので、清らかな川の瀬を見ると底が透けて見えるように清らかです。

詠上総末珠名娘子一首并短謌
標訓 上総(かみつふさ)の末(すゑ)の珠名娘子を詠める一首并せて短歌
集歌一七三八 
原文 水長鳥 安房尓継有 梓弓 末乃珠名者 胸別之 廣吾妹 腰細之 須軽娘子之 其姿之 端正尓 如花 咲而立者 玉桙乃 道徃人者 己行 道者不去而 不召尓 門至奴 指並 隣之君者 預 己妻離而 不乞尓 鎰左倍奉 人皆乃 如是迷有者 容艶 縁而曽妹者 多波礼弖有家留
訓読 御長鳥(みながとり) 安房(あほ)に継ぎたる 梓弓(あずさゆみ) 周淮(すゑ)の珠名(たまな)は 胸別(むねわ)けし 広き吾妹(わぎも) 腰細(こしほそ)し すがる娘子(をとめ)し その姿(かほ)し 端正(きらきら)しきに 花しごと 咲(ゑ)みて立てれば 玉桙(たまほこ)の 道往(ゆ)く人は 己(おの)し行く 道は去(い)かずて 召(よ)ばなくに 門(かど)し至りぬ さし並ぶ 隣し君は あらかじめ 己妻(おのつま)離(か)れて 乞(こ)はなくに 鍵(かぎ)さへ奉(まつ)る 人皆(みな)の かく迷(まと)へれば 容(かほ)艶(よ)きし 縁(より)てぞ妹は 戯(た)はれてありける
私訳 天の岩戸の大切な長鳴き鳥の忌部の阿波の安房に云い伝わり、弓の弦を継ぐ梓弓の末弭(すえはず)の周淮の郡に住む珠名は、乳房が豊かに左右に分かれ大きな胸の愛しい娘、腰が細くすがる蜂のような娘の、その顔の美しく花のような笑顔で立っていると、美しい鉾を立てる官道を行く人は、その行くべき道を行かないで、呼びもしないのに家の門まで来てしまう。家が立ち並ぶ隣の家のお方は、あらかじめ自分の妻と離縁して頼みもしないのに鍵まで渡す。多くの人がこのように心を惑えるので、美貌の理由から娘は、心が浮かれていたことよ。
コメント
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