宇合卿謌三首
標訓 宇合卿(うまかひのまえつきみ)の歌三首
集歌一七二九
原文 暁之 夢所見乍 梶嶋乃 石越浪乃 敷弖志所念
訓読 暁(あかとき)し夢(いめ)し見えつつ梶島(かぢしま)の石(いは)越す波のしきてし思ほゆ
私訳 うつらうつら見る明け方の夢に見えつつ、梶島の巖を越す波が覆い被さるように私の心に貴方の姿が被さっています。
集歌一七三〇
原文 山品之 石田乃小野之 母蘇原 見乍哉公之 山道越良武
訓読 山科(やましな)し石田の小野し柞原(ははそはら)見つつか公し山道(やまぢ)越ゆらむ
私訳 山科の石田の小野のクヌギの林を見ながら、貴方は山道を越えるのでしょうか。
集歌一七三一 山科乃 石田社尓 布靡越者 蓋吾妹尓 直相鴨
訓読 山科の石田し杜(もり)にしま越せばけだし吾妹(わぎも)に直(ただ)し逢はむかも
私訳 山科の石田の杜を袖を靡かせて暫しの間に越えて来れば、たぶんきっと、私の愛しい貴女に直ぐに逢えるでしょう。
碁師謌二首
標訓 碁師(ごし)の歌二首
集歌一七三二
原文 母山 霞棚引 左夜深而 吾舟将泊 等万里不知母
訓読 はは山し霞たなびきさ夜(よ)更(ふ)けて吾(あ)が舟泊(は)てむ泊(とまり)知らずも
私訳 はは山に霞が棚びき、夜は更け行き、私が乗る船は停泊する。どこの湊かは知らないが。
集歌一七三三
原文 思乍 雖来々不勝而 水尾埼 真長乃浦乎 又顧津
訓読 思ひつつ来(く)れど来(き)かねて三尾(みを)し崎真長(まなが)の浦をまたかへり見つ
私訳 心に気を懸けてやって来たので、帰り行きかねて三尾の崎や真長の入り江を、何度も振り返って見てしまう。
標訓 宇合卿(うまかひのまえつきみ)の歌三首
集歌一七二九
原文 暁之 夢所見乍 梶嶋乃 石越浪乃 敷弖志所念
訓読 暁(あかとき)し夢(いめ)し見えつつ梶島(かぢしま)の石(いは)越す波のしきてし思ほゆ
私訳 うつらうつら見る明け方の夢に見えつつ、梶島の巖を越す波が覆い被さるように私の心に貴方の姿が被さっています。
集歌一七三〇
原文 山品之 石田乃小野之 母蘇原 見乍哉公之 山道越良武
訓読 山科(やましな)し石田の小野し柞原(ははそはら)見つつか公し山道(やまぢ)越ゆらむ
私訳 山科の石田の小野のクヌギの林を見ながら、貴方は山道を越えるのでしょうか。
集歌一七三一 山科乃 石田社尓 布靡越者 蓋吾妹尓 直相鴨
訓読 山科の石田し杜(もり)にしま越せばけだし吾妹(わぎも)に直(ただ)し逢はむかも
私訳 山科の石田の杜を袖を靡かせて暫しの間に越えて来れば、たぶんきっと、私の愛しい貴女に直ぐに逢えるでしょう。
碁師謌二首
標訓 碁師(ごし)の歌二首
集歌一七三二
原文 母山 霞棚引 左夜深而 吾舟将泊 等万里不知母
訓読 はは山し霞たなびきさ夜(よ)更(ふ)けて吾(あ)が舟泊(は)てむ泊(とまり)知らずも
私訳 はは山に霞が棚びき、夜は更け行き、私が乗る船は停泊する。どこの湊かは知らないが。
集歌一七三三
原文 思乍 雖来々不勝而 水尾埼 真長乃浦乎 又顧津
訓読 思ひつつ来(く)れど来(き)かねて三尾(みを)し崎真長(まなが)の浦をまたかへり見つ
私訳 心に気を懸けてやって来たので、帰り行きかねて三尾の崎や真長の入り江を、何度も振り返って見てしまう。