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おれちん(現代的唯我独尊のかたち) 

2008-04-19 11:25:51 | Weblog

おれちん(現代的唯我独尊のかたち) 小倉紀蔵 朝日新書
 著者によれば、「おれちん」とは「おれさま」プラス「ぼくちん」のことで、「自分は偉い」と思っているが、自分を「偉い」と認めてくれる共同体が必要なのにもかかわらず、最初から共同体の存在を認めておらず、その自己意識が空回りしている人のことらしい。たとえば小泉純一郎前総理のような人が典型だという。共同体の支えがなく、自己正当化の論理だけを主張する手合いは日常のあらゆる場面に登場する。私は前々から電車などの公共の場で、純粋に個人的な話題を大声で喋っている連中に疑問を感じていたが、「共同体から切れている」という著者の指摘で、その理由が理解できた。傍若無人の所以は共同体からの離脱だったのだ。
 このような手合いが人の上に立って政治を行うと民は塗炭の苦しみを味わうことになる。大阪府知事の橋下徹を見よ。1100億円の予算削減をやらなければ大阪府は壊れると言い募り、我慢をお願いします云々を繰り返している。これを本気でやったら弱者は確実に死を宣告される。庶民の日々の暮らしに対する実感が欠如している。テレビという虚構の中で繰り返していたいい気な発言を政治の場で再現することの愚を犯している。まさに誰もが喜ばないことを唯我独尊的に自己主張するデリカシーの無さに唖然とするばかり。予算削減はアプリオリのものとしてあるのではない。
 こういう人物を選んだ民衆の民度の低さも問題だ。知事を批判すると知事をいじめるなというメールが殺到するらしい。こういう手合いがはびこるのも憂慮すべき状況だ。独裁者、全体主義者が現れるメカニズムの一部をこの国は内包している。


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