読書日記

いろいろな本のレビュー

ゆるしへの道 イマキュレー・イリバギザ 女子パウロ会

2013-09-14 05:15:35 | Weblog
 著者は、ルワンダ虐殺時は22歳で、同じツチの女性7人と、穏健派フツの牧師の家のトイレに91日間隠れて難を逃れた。その後、著者は自分の家族を虐殺したフツを許す。これが「ゆるしへの道」という題の意味である。「ゆるし」を可能にしたのは神(イエス・キリスト)に対する信仰である。彼女が生き延びることができたのは奇跡で、それは神が救いのの手を差し伸べたからだと信仰の功徳を告白している。前掲の『隣人が殺人者に変わる時』(かもがわ出版)の虐殺生存者が、神は私たちを見捨てたと言っているのとは大きな違いがある。神の祝福を一身に受けた著者はニューヨークに渡り、国連の仕事に就き、結婚、出産と映画の主人公のような人生を辿る。
 本書はルワンダ虐殺の光を描いたものと言えよう。一種の宗教的メッセージとして読者に訴えてくる。神は基本的には俗事にはかかわらず、人の生き死にに関与しないのが普通だが、この本には宗教的オーラがあり、著者は神の子になっている。
 たまたま幸運の連続に恵まれて生き延びたことが、神の恩寵として意識されると、神の存在がますます確信となっていく。信者誕生のプロセスである。でも信者すべてが神の恩寵を受けるわけではない。どうして私が生き延びることができて、他人は死ななければならなかったのか。その境界はなにか。その分岐点は?ここに神の存在を想定できる著者は幸福である。家族を虐殺したフツを許すことができたのも神の人間愛を実感したからだろう。この境地に立てる人は少ないかも知れないが。
 でも人が人を殺す戦争の愚かしさを認識できたらこれ以上素晴らしいことはない。多くの人が本書と前掲書を読んで、戦争の愚かしさを認識されることを願う。 

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