これも一時期ガイド本掲載で話題になった一枚。マンハッタン生まれブルックリン育ちの女性シンガー、ブライオニー・ジェームスが渡英先で吹き込んだ69年のアルバムです。バックを務めるのはピアノのローリー・ハロウェイを中心としたギター入りカルテット。ただ、ギターの音は全編に渡りほとんど前面には出てこず、その代わりにほとんどの曲でラテン・パーカッションが効果的に使われているという、少し変わったバンド編成になっています。言葉ではうまく説明し辛いのですが、以前ここでも紹介したフランシー・ボランのOut Of The Backgroundにヴォーカルがフィーチャーされた感じと言えば、何となくアルバム全体の雰囲気が伝わるでしょうか。さて、そんな本作。引き合いに出したボランのアルバム同様、やはり全体的に非常にグルーヴィーな作品に仕上がっています。その象徴とも言えるのが冒頭A-1のタイトル曲とB-1のCome Back To Meで披露される超高速プレイ。特に前者に関しては、おそらくアラン・ギャンリー(タビー・ヘイズのFontana実況盤に参加してた人)だと思うのですが、超高速で疾走しつつも目まぐるしくリズム・パターンの変わっていくそのドラム捌きは見事としか言いようがありません。また、BPM的にクラブ・プレイにもばっちりなのがB-3のSummertime。ラテン・パーカスを駆使したノリの良い横揺れ系ワルツ・ナンバーです。間にピアノの間奏を挟んで、英語→(多分)ポルトガル語→英語と歌われるブライオニー嬢のヴォーカルも抜群。ジェラルド・フリシナやロ・グレコ兄弟辺りのスキーマ系クラブジャズ好きなら必ず気に入る一曲だと思います。ただ、個人的にこれらの曲以上に何よりおススメなのは、A-3のOur Day Will Come。基本はリムショットを効かせた高速調のボサ・ジャズなのですが、ここでのローリー・ハロウェイの小洒落たピアノ・プレイが非常に見事で、何度聴いても余りの巧さについ頬が緩んでしまいます。個人的にはボランのDark Eyesと並ぶお洒落なジャズ・ピアノの代名詞的存在。いちおう僕もピアノ経験者なため、いつかはこれくらい弾けるようになるのが目標だったりするのですが、現実はまぁなかなか難しいですね…。そもそもジャズピアノ自体ほとんど弾けませんし。ともあれ、本作は全体的に自信を持って薦められる一枚。人気のピークが過ぎて相場もだいぶ落ち着いてきているので、今が買い時の作品だと思います。
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