おどろおどろしいジャケットについ慄いてしまう本盤は、60年代スウェーデンを代表する名コンボ、ステファン・アベリーン・クインテットがSonetレーベルに吹き込んだ一枚。数年前にユニバーサルの企画で再発されて話題になったLP2枚の吹き込みより少し前の61年に、全く同じメンバーによって製作されたEP作品です。詳しいことを知らないので何とも言えないのですが、おそらく彼らの処女作に当たる吹き込みのはず。ただジャケットからも何となく雰囲気が伝わる通り、ここでの演奏は彼らの後の作品とは幾分毛色の異なるものとなっています。例のPhillipsの2枚(+70年代のOdeon盤)では非常に洗練された北欧ジャズを惜しげもなく披露していた彼らですが、このEPではそうした洗練された雰囲気は影を潜め(と言うより当時まだその境地に辿り着いていなかった?)、終始ファンキーな演奏に務めています。全体の質感としては、先日澤野工房からも再発されたジョルジュ・アルヴァニタスのSoul Jazzをもう少し男くさくしたような感じ。全4曲それぞれに悪くないですが、中でも特筆すべきはA面の2曲。まずタイトル曲のA-1は、ざくざくとスタッカートで迫るタイトなピアノに乗せた2管ユニゾンのテーマが最高に格好いいバップ・ナンバー。ビョルン・ネッツ~ラース・ファーノフ~アベリーンと続く各ソロもそれぞれに素晴らしく、このコンボのレベルの高さが伺えます。そして続くA-2のJuan-Les-Pinsは、以前CDからの音源を自作コンピにも収録した3拍子のハードバップ。3拍子と言えばDownstreamの冒頭に収録されていたFin Sikt Over Havetもそうでしたが、わずか数年で彼らに何があったのかと思うほどプレイの質感が違います。その傾向が特に顕著なのがリーダーのアベリーン。音の選び方からタッチの運び方に至るまで完全に別人のようになっているので、両者を聴き比べてみるのも面白いかもしれません。スウェーデン、そしてステファン・アベリーンと言えば今や洗練された60'sヨーロピアン・ジャズの代名詞的存在ですが、そんな彼のイメージが180度変わること間違いなしの一枚。これも一時期のピークに比べ少し相場が落ちてきている(とは言えまだ少し高いですが…)ようなので、興味があったら是非チェックしてみてください。
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