当時、宇田川町のポール・ウェラーなどと呼ばれていたWack Wack Rhythm Bandの山下洋を中心としたバンドがこのフリーダム・スイート。リリース元が瀧見憲司主催のCrue-L Recordsだということもあり、一般的には数多ある渋谷系インディーズ・バンドの一つとして語られることが多いですが、ピチカートやフリッパーズ・ギターに代表されるオシャレ系グループとは毛色が異なる正統派のロック(と言うかモッズ)・サウンドを奏でるバンドなので、僕らのような後追い世代だとイメージと前評判だけで聴いてみてその無骨さに驚く人も多いことでしょう。僕自身、音楽の裾野が広がった今でこそ普通に聴けますが、十数年ほど前、当時ライムスターとのコラボでヒットしていたWack Wack Rhythm Bandからの流れで初めて聴いた際には大いに面食らったものです。さて、本作はそんな彼らによる1995年の7inch盤。マキシCDスタイルでリリースされた2ndミニアルバムSomething in the airと同日発売ですが、実はこちらのアナログ盤にのみジョニー・ブリストルのI Wouldn't Change A Thingカバーが収録されているというのは、その筋では有名な話でしょう。ジョニー・ブリストルの原曲ではなく、当時フリーソウル・シーンで人気があったコーク・エスコヴェードによるカバー(止マッテタマッカ-D.L. Remix- / Lunch Time Speaxのビートネタ)が下敷きになっており、かなり良い雰囲気のカバーに仕上がっています。コーク版には入らない間奏のフルート・ソロが非常にフリーソウルらしく、個人的にはお気に入り。山下洋自身がフリーソウル・ムーヴメントの中心人物の一人であるため、別の作品ではオデッセイのOur Lives Are Shaped By What We Loveをカバーしていたりもしますが、やはり本命はこれでしょう。残念ながら今のところCDにはなっていないようですが、何かの機会にコンピにでも収録されれば嬉しいですね。何気にそれなりに人気があるみたいなので見つかりにくいかもしれませんが、気になる人は探してみてください。
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