■希望退職に応募殺到 百貨店、今年閉鎖は10店に
朝日新聞 2010年2月20日23時34分
不振が長引き、収益力が落ち込んでいる百貨店業界で、不採算店の閉鎖と社員の希望退職募集が広がっている。各社が2010年に閉めると表明した店は、すでに閉店した分を含めて10店に達した。希望退職に応募が殺到するケースも多く、百貨店の厳しい経営環境を映し出している。
3月14日に店を閉じる伊勢丹吉祥寺店(東京都武蔵野市)は、閉店セールにあわせた「アウトレットセール」のまっただ中だ。平日午後でも食器や靴売り場は客でにぎわい、高級品の時計も30%引きで売られている。60代の女性客は「私は『伊勢丹育ち』。若者と違って、買い物をする場所がなくなる」と話す。
今年はすでに丸井今井室蘭店(北海道室蘭市)、松坂屋岡崎店(愛知県岡崎市)が閉店。四条河原町阪急(京都市)や西武有楽町店(東京都千代田区)など、都心部の中規模店も年内に閉まる。
日本百貨店協会の飯岡瀬一専務理事は「閉店したのは規模が比較的小さな店。規模の大きな店は残り、存在価値を発揮している」と、閉店の動きは落ち着いたとの見方を示す。だが、楽観はできない。松坂屋名古屋駅店が入居するビルは建て替えが予定されているが、「継続して出店するかは検討中」(松坂屋)とし、撤退がとりざたされている。年内にさらに閉店が増えれば、そごうが民事再生法を申請した翌年の2001年(11店)以来の多さになる。
リストラ策としての希望退職の募集も目立っている。
「正社員はワークシェアや時短で対応してきたが、ここに至ってはやむなく、240人程度の早期退職を行う」
借入金の返済を先延ばしする経営支援を金融機関に要請したと1月に発表した井筒屋(北九州市)。同時に、昨年のボーナスの支給見送りでも持ちこたえることができないと、正社員の2割の削減を打ち出した。
社員も百貨店の将来を見通せないと考えているのか、締め切った多くの会社で、応募数は予想を上回っている。三越では、社員の約4分の1にあたる約1600人が早期退職で辞めた。東京・銀座に店がある松屋も正社員の2割弱にあたる225人が応募。近鉄百貨店(大阪市)では予想の1.8倍の約700人の応募があり、締め切りを繰り上げて募集を打ち切ったという。
★当面する闘争スケデュール