「前進」に報道された9月7日午後1時福島市のコラッセふくしまで開かれた第5回ふくしま共同診療所報告会の記事を転載します。
福島の人々の健康守る砦 診療所報告会に130人
布施医師 〝非がん性疾患も治療する〟
週刊『前進』2014年9月15日第2648号
(写真 質疑応答では内部被曝についての質問や除染労働の実態が報告され、参加者と崎山さん、医師らが活発な論議を交わした【9月7日 福島市】)
(写真 崎山比早子さんは、放射線が非がん性の疾患も引き起こすことを豊富な資料で解説した)
9月7日午後1時から福島市のコラッセふくしまで第5回ふくしま共同診療所報告会が開催され、130人が参加した。診療所からの充実した報告やパワーポイントを使ったわかりやすい講演、活発な質疑応答が行われ、診療所のさらなる発展を確信する集まりとなった。
多くの協力に感謝の意を表明
2週間前の8月24日、福島県「県民健康調査」検討委員会が福島の子どもたちの甲状腺がんが「疑い」を含めて104人と発表した。緊迫した状況の中、福島市を始め福島県内外の母親や除染労働者などの労働者住民で会場は満杯となった。
開会あいさつに続いて診療所の医師が診療報告を行った。
最初に院長の松江寛人さんが「甲状腺エコー検査から見えてきたもの」と題して報告を行った。「福島の人たちの健康を守るため、ふくしま共同診療所は頑張っています」と切り出し、「全国の多くの人の寄付や協力で2年近くやってこれています」と心から感謝の意を表した。続けて本題に移り、「放射線はゼロ以外は危険である。診療所には子どもの来院が多い。お母さんたちが子どもの甲状腺がんを心配している。子どもに蜂の巣状ののう胞ができており、放射線の影響があると思われる」として、「甲状腺のみならず全身の健康障害のチェックと長期的な健康管理をしていく」などの、診療所の役割と今後の課題を提示した。
続いて内科を担当する医師が「血中甲状腺ホルモン値について」と題して報告し、「甲状腺の疾患には超音波検査の画像に表れてこないものがある。それに対する検査のひとつに血液検査がある」として、診療所で検査した358人のうち異常所見・異常所見の疑いが78人(21・8%)となることを説明した。
次に布施幸彦医師が「県民健康調査を批判する」と題して報告した。
小児甲状腺がん発症率に差ある
布施さんはまず、8月24日の県検討委員会の発表を説明。県のエコー検査の問題点を批判した後、「福島県内でも、放射線量が高い地域と低い地域では小児甲状腺がんの発症率には明らかに地域差がある」として、県検討委員会の「地域差がないから原発事故との因果関係は考えにくい」との主張を全面的に批判した。そして「高汚染地域は福島だけでなく宮城、群馬、栃木、茨城、千葉にも及んでおり、今後この地域での小児甲状腺がんの増加が懸念される。さらにチェルノブイリ事故後4〜5年後から甲状腺がんが増加している。福島を含めた多くの県で早急な対策が必要」と声を高めた。
布施さんは仮設住宅での原発事故の避難者に対する健康相談についても報告。そして「当診療所の考えとするべきこと」として、「甲状腺検査を、子どもだけでなく大人に対しても長期にわたって半年に1回行っていく」「内部被曝や低線量外部被曝による障害は甲状腺がんだけではない。白血病などのがんや非がん性疾患も増加する。それらのさまざまな障害を早期発見し治療していく」など八つの目標を示し、「第二のフクシマをつくらないために、日本(世界)から原発をなくすために活動する」と宣言して、報告を終えた。
崎山比早子さん被曝問題で講演
診療報告の後、元国会事故調査委員会委員の崎山比早子さんが「非がん性放射能障害について/老化促進に関して」という演題で講演を行った。
崎山さんは、汚染水問題の「解決」が行き詰まっているなど福島第一原発の収束作業の危機的な状況から語り出し、「福島原発事故現場に残された放射能量は事故時放出された量の約800倍にのぼる」「原子炉は動いていなくても危険」と警鐘を鳴らした。
転じて「被ばくによるがん以外の疾患」の説明に移った。まずウクライナ政府の報告書を取り上げて、ウクライナにおいて循環器系、消化器系などの病気も多発していることを報告し、「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)」がそれを否定していると断罪した。崎山さんはウクライナに加えて広島・長崎での原爆被爆者の調査などにも触れ、被爆した人に心臓疾患など非がん性疾患も多いと述べ、しきい値はないことも強調した。
続けて、老化によって動脈硬化が起き、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞などが発症するメカニズムを明らかにした後、「老化の原因は加齢とは限らない。放射線によっても老化が促進される」として、その解説に移った。
まず、老化とは細胞の分裂能力がなくなることと指摘し、正常細胞には寿命があり、一定回数分裂すると細胞は分裂能力を失うと語った。次に、分裂できなくなる原因として「テロメアの短縮」「修復不能なDNA損傷の蓄積」「ミトコンドリアDNA変異の蓄積」を挙げ、それぞれについて詳しく解き明かした。
結論として崎山さんは「放射線が非がん性疾患を引き起こす科学的根拠はある。それがないことにされるのは、科学ではなく、政治的経済的評価がなされているからだ。科学的根拠に基づいて、人権の視点から放射線の影響を考えることが必要。それが原発のない社会につながる」と強調した。そして2012年7月16日、代々木公園に17万人が集まった反原発集会の写真を映し出して、「一人ひとりは小さな力でも、連帯して、つながって、政権に対抗していけるのではないかと思います」と力強く結んだ。
質疑応答に移り、若い母親、孫の被曝を心配する男性、福島第一原発で働き、現在除染労働に従事している労働者などから質問が寄せられ、除染労働者からは「診療所には、ぜひ除染労働者の現状もアピールして欲しい」という要請も述べられた。
報告会終了後、会場では個別健康相談が行われ、母親らが真剣な表情で医師と向かい合った。また、会場後方には開会前から、この夏の各地の保養の様子を紹介する写真などの展示が行われ、多くの人が見入った。
(本紙・北沢隆広)
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福島の人々の健康守る砦 診療所報告会に130人
布施医師 〝非がん性疾患も治療する〟
週刊『前進』2014年9月15日第2648号
(写真 質疑応答では内部被曝についての質問や除染労働の実態が報告され、参加者と崎山さん、医師らが活発な論議を交わした【9月7日 福島市】)
(写真 崎山比早子さんは、放射線が非がん性の疾患も引き起こすことを豊富な資料で解説した)
9月7日午後1時から福島市のコラッセふくしまで第5回ふくしま共同診療所報告会が開催され、130人が参加した。診療所からの充実した報告やパワーポイントを使ったわかりやすい講演、活発な質疑応答が行われ、診療所のさらなる発展を確信する集まりとなった。
多くの協力に感謝の意を表明
2週間前の8月24日、福島県「県民健康調査」検討委員会が福島の子どもたちの甲状腺がんが「疑い」を含めて104人と発表した。緊迫した状況の中、福島市を始め福島県内外の母親や除染労働者などの労働者住民で会場は満杯となった。
開会あいさつに続いて診療所の医師が診療報告を行った。
最初に院長の松江寛人さんが「甲状腺エコー検査から見えてきたもの」と題して報告を行った。「福島の人たちの健康を守るため、ふくしま共同診療所は頑張っています」と切り出し、「全国の多くの人の寄付や協力で2年近くやってこれています」と心から感謝の意を表した。続けて本題に移り、「放射線はゼロ以外は危険である。診療所には子どもの来院が多い。お母さんたちが子どもの甲状腺がんを心配している。子どもに蜂の巣状ののう胞ができており、放射線の影響があると思われる」として、「甲状腺のみならず全身の健康障害のチェックと長期的な健康管理をしていく」などの、診療所の役割と今後の課題を提示した。
続いて内科を担当する医師が「血中甲状腺ホルモン値について」と題して報告し、「甲状腺の疾患には超音波検査の画像に表れてこないものがある。それに対する検査のひとつに血液検査がある」として、診療所で検査した358人のうち異常所見・異常所見の疑いが78人(21・8%)となることを説明した。
次に布施幸彦医師が「県民健康調査を批判する」と題して報告した。
小児甲状腺がん発症率に差ある
布施さんはまず、8月24日の県検討委員会の発表を説明。県のエコー検査の問題点を批判した後、「福島県内でも、放射線量が高い地域と低い地域では小児甲状腺がんの発症率には明らかに地域差がある」として、県検討委員会の「地域差がないから原発事故との因果関係は考えにくい」との主張を全面的に批判した。そして「高汚染地域は福島だけでなく宮城、群馬、栃木、茨城、千葉にも及んでおり、今後この地域での小児甲状腺がんの増加が懸念される。さらにチェルノブイリ事故後4〜5年後から甲状腺がんが増加している。福島を含めた多くの県で早急な対策が必要」と声を高めた。
布施さんは仮設住宅での原発事故の避難者に対する健康相談についても報告。そして「当診療所の考えとするべきこと」として、「甲状腺検査を、子どもだけでなく大人に対しても長期にわたって半年に1回行っていく」「内部被曝や低線量外部被曝による障害は甲状腺がんだけではない。白血病などのがんや非がん性疾患も増加する。それらのさまざまな障害を早期発見し治療していく」など八つの目標を示し、「第二のフクシマをつくらないために、日本(世界)から原発をなくすために活動する」と宣言して、報告を終えた。
崎山比早子さん被曝問題で講演
診療報告の後、元国会事故調査委員会委員の崎山比早子さんが「非がん性放射能障害について/老化促進に関して」という演題で講演を行った。
崎山さんは、汚染水問題の「解決」が行き詰まっているなど福島第一原発の収束作業の危機的な状況から語り出し、「福島原発事故現場に残された放射能量は事故時放出された量の約800倍にのぼる」「原子炉は動いていなくても危険」と警鐘を鳴らした。
転じて「被ばくによるがん以外の疾患」の説明に移った。まずウクライナ政府の報告書を取り上げて、ウクライナにおいて循環器系、消化器系などの病気も多発していることを報告し、「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)」がそれを否定していると断罪した。崎山さんはウクライナに加えて広島・長崎での原爆被爆者の調査などにも触れ、被爆した人に心臓疾患など非がん性疾患も多いと述べ、しきい値はないことも強調した。
続けて、老化によって動脈硬化が起き、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞などが発症するメカニズムを明らかにした後、「老化の原因は加齢とは限らない。放射線によっても老化が促進される」として、その解説に移った。
まず、老化とは細胞の分裂能力がなくなることと指摘し、正常細胞には寿命があり、一定回数分裂すると細胞は分裂能力を失うと語った。次に、分裂できなくなる原因として「テロメアの短縮」「修復不能なDNA損傷の蓄積」「ミトコンドリアDNA変異の蓄積」を挙げ、それぞれについて詳しく解き明かした。
結論として崎山さんは「放射線が非がん性疾患を引き起こす科学的根拠はある。それがないことにされるのは、科学ではなく、政治的経済的評価がなされているからだ。科学的根拠に基づいて、人権の視点から放射線の影響を考えることが必要。それが原発のない社会につながる」と強調した。そして2012年7月16日、代々木公園に17万人が集まった反原発集会の写真を映し出して、「一人ひとりは小さな力でも、連帯して、つながって、政権に対抗していけるのではないかと思います」と力強く結んだ。
質疑応答に移り、若い母親、孫の被曝を心配する男性、福島第一原発で働き、現在除染労働に従事している労働者などから質問が寄せられ、除染労働者からは「診療所には、ぜひ除染労働者の現状もアピールして欲しい」という要請も述べられた。
報告会終了後、会場では個別健康相談が行われ、母親らが真剣な表情で医師と向かい合った。また、会場後方には開会前から、この夏の各地の保養の様子を紹介する写真などの展示が行われ、多くの人が見入った。
(本紙・北沢隆広)
★当面する闘争スケデュール
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建設パンフ SunRise第1号 第2号 第3号 創刊号 第2号