救援本部ニュース493号 2013.9.19
9/8ふくしま共同診療所が報告会
NAZEN通信第5号(2013・9・11付)から転載します。
9月8日、福島市でふくしま共同診療所の報告会が行われました。母親をはじめとして放射能検査をしている労働者など160名もの方が参加し、松江院長と崎山比早子さんの講演のあと、さまざまな質問がだされました。以下、松江先生の記者会見と講演と質疑応答の内容を要約して掲載します。
○松江寛人さん(ふくしま共同診療所 院長)
ちょうど今日、腹立たしいことにオリンピックが決まりました。日本を安全だと思っているのかって。だから私は逆に発想を変えて、いかに日本が被曝して恐ろしいのかということを2020年に世界に訴えたいと思います。
診療所が去年の12月1日にオープンしました。9か月になるんですが、ほぼ600人くらいの患者さんが来られました。6人の医者が全員無給でやっています。6人も専門家がいるっていうクリニックはちょっとないので、ぜひみなさんこのクリニックに来ていただきたいです。
今来ている患者さんの9割以上が、実は甲状腺のことを心配しているお子さんです。
私たちが検査して、極めて異常だと思ったのは、まず異常がある子どもさんが約5割ぐらいいるんです。しかもいわゆるのう胞っていう水のたまった袋。それ自身はがんではないんですけど、普通は大人の100人に1人か2人ぐらいに1~2センチのはっきりしたものが2、3個というものなんです。ところが表にあるように、121例ののう胞のうち43例が無数微少のう胞といって小さなのう胞が数え切れないほど無数にある。そういう症例が36%もある。私は超音波を専門にしてますけど、こんな数は経験してないし、いろいろ論文を見ても、こんな数字はない、異常なんです。甲状腺全体にこんなものができているっていうことは、甲状腺全部がなんらかによって侵されているということでしょ。そしたらどう考えたってまず放射線って考えるのが常識じゃないですか。こういう蜂の巣みたいなのを持っているお子さんは、何十年もかけていろいろ検査していく必要があると思うんです。
私たちの診療所では、検査に少なくとも10 分、だいたい15 分くらいを基準にしています。ところが県の検査は、行ってきたお母さんたちに聞くとだいたい長くても2~3分ですと。しかし証拠となるような画像、写真を記録に残すと、絶対に10分じゃ終わらないんです。っていうことは、記録も残さないし、さぁーってやっておしまい。ってなことをやってんじゃないか。だから、写真が欲しいって言っても出してくれない。
福島県でやっている超音波検査の診断基準があるんです。Aは異常がない。Bは疑わしい。Cはかなり強く疑わしいって。でA2というのは5ミリ以下の結節かまたは2センチ以下ののう胞となって、これは異常はないものとするというんです。私は超音波の専門ですけど、こんないい加減な判定基準は他のがんにはないです。あの18例のがんのうち一番小さいのは5・2ミリなんですよ。だから4・9ミリっていうのは全部無視っていうんですよ。だから5ミリ以下のがんで落とされている子どもがたぶん相当な人数いるんじゃないかと思います。
あと県が二次検査を血液、尿でやっているのは間違いです。がんの確定検査をするんだったら、細胞診なり、生検といって細胞を直接取る検査をやる必要がある。
われわれ診療所としては、当面はお子さんのことだけ考えていますけれど、ゆくゆくは大人の健康も必要なことなんで、そういうこともこれからも一生懸命やっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。(拍手)
◆質疑応答
●私は市の臨時職員で、放射能の測定をさせていただいています。福島県立医大の鈴木先生は、甲状腺のがんは進行しにくいので、別にそんなに騒ぎ立てる必要はないとおっしゃってたんですが、どうお考えでしょうか。
○杉井吉彦さん(ふくしま共同診療所医師) 甲状腺がんには四つの種類があり、進行速度に違いがあります。チェルノブイリでは比較的進行が遅いタイプが主体ですが、福島も同じです。普通のがんだと5年以内に転移がなければ治癒というわけですが、進行が遅い場合は10年15年のレベルで転移があると言わなければならない。安全なのかどうなのかと言うことはまた全然別の問題なのにもかかわらず、「甲状腺がんはきわめて予後が良好」と鈴木教授は住民に対して行われている説明会で出している。この理屈はきわめて合わない。さらに他のがんの場合は取ってしまえばそれでとりあえず措置は終わるのですけど、甲状腺がんは特に切除後、一生かかって甲状腺ホルモンを飲み続けるという、ある意味非常に悲惨な状況が続くわけですから、「甲状腺がんは予後はいい」という言葉は、非常によろしくない言い方だと思います。
●郡山で高校の教諭をしております。最近家族全員で甲状腺がんのエコー検査をやりました。私だけ甲状腺に卵サイズの腫瘍が見つかりました。検査のなかで病院の先生から言われたのは、ちゃんとした病院で検査をして、カルテを残すことが大事だって。ところが県の子どもたちへの検査は医療行為ではないと最近聞きまして、そうするとカルテは残っているのでしょうか?
○松江院長 県が検査結果をどのように保存しているかはまったくわかりません。検診というのは患者扱い、保険扱いにするのかという考え方にすると保険診療ではないんですよ。そうすると5年間記録を保存する必要はない事になっちゃう。それでわれわれの診療所では、すべて保険診療にして、すべて患者扱いでカルテも作り、記録も残して、今後5年と言わずにその方が亡くなるまで保存しようという前提でやっています。(拍手)
●私の孫が、甲状腺検査を受けました。昨年の7月に二次検査が必要ですと出ました。2月に尿と血液を、3月に細胞を取りました。今年7月の検診は一般診察で、11 時に予約して診てもらったのは3時です。もう待ち時間が長くて疲れてしまいました。私はこの診療所ができたのは、新聞か何かで見てどこにできたのかなと一生懸命探していたんです。本当にこれからお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いします(拍手)。
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