(前回からの続き)
この夏、米不動産価格はついに下落局面に転じたもようです・・・が、前述した理由から、これはまもなく始まる同価格の再上昇のステージの前に必ず生じる現象とみるべきでしょう。ということは・・・不動産のふたたびの値上がり、つまり米インフレのいっそうの激化はやはり必至の情勢ということで・・・
このほど公表されたアメリカの10月の消費者物価指数は前年同月比7.7%の上昇と、8か月ぶりに上昇率8%を下回った、ということで、NHKが報じるところによれば「市場ではこれまで続いてきた記録的なインフレが和らぐのではないかとの期待感」が高まった、との由。実際、本発表を受けた米株価(ダウ平均)は10日、前日比で3.7%もの上昇と8月来の水準に戻っています。このあたりマーケットでは、上記結果を踏まえてFRBが近々、現行の利上げをストップするのでは、との楽観的な思惑が広がった様子が窺えます。
が、わたしに言わせれば、やはり米インフレは和らぐ気配はなく、引き続きヒドいまま、ということになります。なぜなら、上記発表を受けて米長期金利のほうも直前の4%台から3.8%へと急降下した(米国債価格が急上昇した)・・・ということは、これとインフレ率との差である実質金利は「これまで」と同じくマイナス4~5%もの低さだからです。ようするに「記録的な」よりは「前代未聞の」というべき「真性インフレ」が解消される兆候はまったく見られない、ということ。そんなところで、この夏、上記のように不動産価格が下がった・・・っても、こうした金融環境であれば、ふたたびそれが上昇軌道に乗る可能性は高いでしょう、長期金利が低下すれば住宅ローン金利もまた下がるわけですしね・・・
となってくると、他方で住宅を持たない層(全米で約1/3の世帯)や住み替え等を考えている人々にとっては、当然ですがその購入がますます困難になってくる・・・ばかりか、金利再低下&不動産価格の再上昇を受けた家賃値上がりによる経済的ダメージも大きくなって、その生活環境は悪化の一途ということになってしまいそうです。でその家賃ですが、調査会社オックスフォード・エコノミクスのアナリストによると住宅価格の変動に18か月遅行するとのことです。となると、せっかく今夏、同価格は下がったのに家賃のほうはこれから1年半は上昇を続ける可能性が高い・・・うえ、上記のように、不動産価格が再上昇に転じるのは時間の問題?だから、その一瞬の?値下がりが1年半も先の家賃に与える下押しの圧力なんて無いに等しいでしょう・・・
そうした中で行われた米中間選挙は、民主党が上院での議席の半数獲得を確実にするなど優勢で、いっぽうの共和党の伸張は当初予想されたほどではなかった、といった結果になりそうです。ということはアメリカは、上記金融環境に加えて政治環境的にも(民主党支持者に多い傾向が窺える)インフレでトクをする者―――不動産を持つ者―――が優位に、(共和党支持者に多い傾向が窺える)インフレでソンをする者―――不動産を持たない者―――が不利に、というふうにますますなっていくほかないでしょう。そのあたり熱心なトランプ前大統領支持者ら(?)あたりが、今次選挙結果の不本意さ・・・以上にインフレ激化に対するフラストレーションを募らせて・・・となるおそれが高まっていくような気も・・・