なにやらこの先、わが国では「何でもいいからアメリカの資産(ドル、株、債券、不動産)を買え!」の掛け声がどんどん大きくなっていきそうな予感が・・・
先月27、28両日に開かれた米FRBのFOMC(連邦公開市場委員会;FRBの金融政策決定会合)声明には、次回の同会合(12月15,16日)で政策金利を引き上げることが適当かどうかを決めるといった表現が盛り込まれました。これを受けた外為市場では、アメリカの利上げが近いとの観測からドル高が進行しつつある感じですが・・・
しかし、実際のところFRBの利上げは困難でしょう。その理由については直近ではこちらの記事を含めて本ブログで何度か綴っているところですが、いまはさらにタイミングが悪くなりつつある感じです。それを思わせるここ数日のニュースを拾ってみると・・・
先月30日、人民元のオフショア市場では人民元が対ドルで急伸しました。その上昇率は一時10年ぶりの大きさに達したとのことです。さらに今月2日、中国は対ドル基準値を30日比で0.54%も切り上げています(1日の切上げ幅としては中国が人民元改革に着手した2005年以来で最大とのこと)。両日ともに中国人民銀行(中銀)の大規模な為替介入があったとみられています。先日もこちらの記事でご紹介しましたが、中国からは資本の国外への流出が続いており、これがもたらす人民元の過度の下落を阻止する目的で当局による人民元の買い支えが続いています。このたびの異様な動きはそのあたりの反映と考えられます。ここで人民元が不自然に強くなっているということは、中国によってドルそして米国債が売られている様子が示唆されるわけです。
そんな中国と同じような動きが今後、産油国でも頻発する可能性があります。「逆オイルショック」の言葉のとおり、現在の原油価格は1バーレル当たり50ドルを下回るという、たった1年半ほど前の半値以下の水準に落ち込んでいます。これに対してロシアを含む産油国の多くは同100ドル以上を前提とした予算編成等をしているところ。当然、これでは国家の財政運営に支障が生じるので、産油国のなかには不足する資金を確保するために虎の子の外貨準備すなわちドル資産を取り崩すような国も出てくるかも・・・。少なくとも外準のさらなる積み上げ、つまり米国債を買い足そうなんて余裕のあるところはそうはないでしょう。
ちょっと脱線しますが・・・逆オイルショックの「ショック」の本質とは、一つ目はコレすなわち産油国がアメリカをファイナンスすることができなくなること。二つ目は、原油が安くなったことに比例してその引換券であるドルの価値も低下すること。そして三つ目は、お得意先の産油国(ついでにイスラム国!?)が金欠に陥ってショ~モナイ米欧中露の軍需産業が「商売上がったり」になること!? で、世界は一歩、平和に近づくかもよ!?
閑話休題。このように、中国や産油国といった、伝統的なドル・米国債の大口購入者がこれらを買うゆとりを失うどころか、逆に手放そうという姿勢を示すなかでアメリカは、さらに米国債を大量に発行せざるを得ない局面に向かっています。というのも、アメリカ連邦政府の債務上限の引き上げと今度2年間(2017年9月まで)の予算大枠を定めた法案が今月2日に成立したため。これによって米政府のデフォルトは当面、回避されそうですが、あらたに800億ドルの歳出増額が決定されたことから今後、その資金調達のための米国債増発が必至の情勢となりました・・・