（前回からの続き）
安倍首相が先月の伊勢志摩サミットの際に示した表記危機認識は、外国の首脳やメディアからは懐疑的な見方をされているところですが、いっぽうでわが国の民間金融業界は首相と同様の危機感を抱き、巨大リスクの発生に備えているもようです。
先日の日経ネット記事に、このあたりの本邦３メガバンクの所感や対応が紹介されています。みずほＦＧの佐藤社長は日経のインタビューで「安倍首相の言う感覚は非常によく分かる。われわれはすごく意識している」と力説しています。同社は世界経済に不透明感が漂うなか、中期計画における「純利益」を目標から外し、様子を見ながら巣ごもりする方向にしたとのこと。同社長は、1987年の「ブラックマンデー」、97～98年の「アジア通貨危機」そして2008年の「リーマン・ショック」といった具体例を挙げて経済危機10年周期説を提示し、「見事に10年ごとに大きな危機が起きている。これは単なる偶然じゃないと思っている」と述べています。
みずほＦＧだけではありません。三菱ＵＦＪＦＧは石油・ガス向けの与信の不良債権処理を始めたほか、三井住友ＦＧも損失処理を急ぎ、財務体質強化に動き始めたとのことです。
上述に照らせば、これらの対応は正解といえるでしょう。世界的な資産バブルの崩壊過程に入ったいま、グローバルに展開する金融機関は価値急落が予想される資産をいち早く手放すべきであり、減損処理を進めるべきだと考えるからです。さもないと逃げ遅れて（急速に資産が不良化して）過小資本、最悪の場合は債務超過に陥って経営破綻に追い込まれるリスクがありますから。そこは、みずほＦＧの佐藤社長は同記事で「危機的なものがここ数年で起きると思う。それをいち早く見つけた者が生き残れる」と強調しているとおりです。この正しい経済観がある限り、日本の金融システム・・・を支える３メガ邦銀の経営と財務が揺らぐことはないでしょう。
で、上記の「巣ごもり」とは何を意味するのか？ですが・・・個人的には、リスク資産のかなりの部分を現金に換えて保有することだと解釈しています。デリバティブなど、ミョ～な金融資産などを買わずにキャッシュすなわち円貨で持つということ。前回、そしてこちらの記事を含めてあちこちで綴っているように、これからの激しいリスクオフ・ステージでは現金、つまり「円」に勝る価値保存に優れた資産は見当たりません。円独歩高になるわけですから（？）、ドルをはじめとする外貨の価値は総崩れになるはずです、日本人からすれば・・・。なので、この「巣ごもり」もまた、じつに適切な感覚だと思います。荒れ狂う資産デフレの嵐を「円」でやり過ごす、といった感じ。これに「金（ゴールド）」が加われば、万全のような気がしますね・・・（？）
ゴールドの価値上昇に伴って
シルバーの価値も上がると思っているのですが
どう思われますか。
銀（シルバー）の価格ですが、個人的な結論を先に申し上げると、近い将来高い確率でやってくる世界的な金融不安・同危機すなわち不換紙幣の信認崩壊（？）ステージにおいても、金（ゴールド）価格ほどは上がってはいかないのではないかと考えています。その最大の理由は、銀が金ほどはマネー（あるいはその代替物とか価値の保存物など）として認知されてはいないこと。世界の主要国・主要中銀が外貨準備として保有するのが金のほうであって銀ではないのがその象徴です。中国が国を挙げてしこたまかき集めているのも、金ですしね・・・
歴史的な経緯などから銀が一部の国、とくにアメリカではそれなりに人気があるのもたしかです。しかし上記等により、銀が金と同様の国際共通通貨の地位を占めることは今後もないと思っています。そのあたりは白金（プラチナ）とかパラジウムなどのレアメタルも同じ。まあこれらの価格はこの先、投機的な思惑から一時的には金以上に乱高下することもあるでしょうが、貴金属ディーラーのようなプロならともかく、一般の投資家ならば金を持っておけばよいのかな、と思う次第です。
過去にあったハント兄弟の買い占めのように、
通貨としてはシルバーは向いていないのですね。
日本の外貨準備はゴールドが少なすぎると思っているので、増やしてもらいたいです。まあアメリカが許してくれるのかどうかわかりませんが。