(前回からの続き)
ここまで、農林中央金庫(農中)のこのたびの米国債投資の失敗とこれにともなう巨額損失の計上から、農中(もそうですが本邦・・・ばかりか諸外国も含めた金融機関のすべて!)が今後、投資を増やしていくべき資産が日本国債以外にないことについて思うところを綴ってきました。が・・・
じつは・・・日本国債のほかに、もうひとつ、これと同じくらい安全で(元本割れリスクが小さくて)プラスリターンをもたらし得るおカネの運用対象がありますね。いうまでもなくそれは「金」(ゴールド)です。この点は、こちらの記事に書いたように、米FRBが政策金利を5%超にまで引き上げたにもかかわらず、米国債の利回りが、その間の金の価格の上昇率を大きく下回っていることに表れています。だからといって、これを超えるほどの利上げ・・・なんてFRB(とアメリカ)にできないことは明白。このことは、金に対するドルの敗北―――FRBが中央銀行つまり(金に対する)「ドルの番人」としての役割を果たせなくなったこと―――を意味しています。
であれば、そんなドル・・・の預金(≒米国債投資)なんぞより、文字どおりの貯「金」(現物の金を貯めること)のほうが「つねに」有利になるから、預金者は(農業協同組合を通じて)農中に「虎の子」(血と汗で得た農業所得等)を預けたせいで、これが米国債に流れてムザムザ消滅してしまうくらいなら、自ら金(アクセサリーや金貨とか地金など)を買って保管!というのが投資行動としてずっと合理的となってきます。となるとマネーの運用機関としての農中の存在意義は失われかねません。そうした意味でも、農中が引き続きその本来の役割つまり金融を生業とする気なら、ドル債やらユーロ債などがこうして軒並み散るなかで金に対して唯一勝ち得る(金以上の実質利回りを確保し得る)債券である日本国債を投資の中心に持ってくるしかないでしょう・・・
そしてそのへんは本邦政府そして日銀こそが強く認識するべき。上記のように現在、日本には数百兆円ものキャッシュが何の仕事もしないで(日銀当座預金に)眠ったままです。その理由はこれも上述、そしてこちらの記事等で書いたとおりですが、これ、おカネが余っているところから必要とするところに流れていない―――金融が機能不全を起こしている―――ということ。これほどの(世界で一番の)キャッシュリッチの国で金融が働いていない、正確には結果として政策意図的に働かないようにされているわけです、もちろんそれは対国内(多くは日本国債投資)だけではなく対外投資(米国債等)においても(って非効率つまり「高値掴み」になるので農中以外?のジャパンマネーには常識的には手が出せない)。ホントそこは残念で不幸なこと・・・ってこのマネー力(金融力)こそ、わが国しか持ち得ない「強み」なのに・・・
・・・って、この「強み」をあえて自ら封じてみせることこそが「本当に本当の目的」達成に不可欠なことは知ってはいるのですが・・・