(前回からの続き)
ずっと前から書いているように、アメリカ(そしてEUや英国など)は、中銀の量的緩和(QE)を延々と続けることで株や債券や不動産はもちろん、はては美術品とか「パリ・サンジェルマン」(仏サッカークラブ・・・ってもカタール投資庁が筆頭株主!)等に至る、ありとあらゆる資産の価額を押し上げて、その資産効果で経済を回してきました。その結果、これらの価額は、ありていにいえば「バブル」、すなわち(QEがなかった場合の)それらの本来の価値水準に比べ、例外なく(オソロシ~ほど)高くなっているわけです。ということは、これを別な角度から眺めると、どれか一つでも価格が下がったら非常にマズいことに・・・って、前述のように他の資産にも売りが次々に伝播する展開となってバブル崩壊→資産デフレ→金融恐慌→…の破局になりかねません。
このあたり、きわめて重大な役割を果たすのが「石油」(原油)になります。それは大きくは以下の2つ。まず一つ目が、それ自体が「先物」という、バブルを構成する一金融商品として、これを膨張、悪くても維持させるだけの高い価格を保つ必要があるということ。そして二つ目は、これが(本稿で述べているスイスの大手銀行クレディ・スイス・グループ[CS]への資本参加等を含む)上記リスク資産投資に必要な「元手」となるべきキャッシュを大量に生む・・・くらいに高い価格を保つ必要があるということ。上記2つの役割の末尾が奇しくも(?)同一になることからも分かるとおり、石油は「高い価格を保つ必要がある」わけです・・・って常時、どころか、もはや永遠に、でしょう(?)。さもないと、アラブの王族・・・ばかりか米欧投資家各位も仲良く?搭乗している「ロケット」の推力がガス欠(≒燃料つまりはオイルマネー供給不足)で失われかねませんからね・・・
さて、上記投資等の「元手」となるキャッシュですが、こちらの記事に書いたような通常の景気サイクル(好況→不況→・・・)におけるマーケットメカニズム(株高・債券安[高金利]→株安・債券高[低金利]→・・・)で自然に生まれるもの。マネーは株と債券の間を行き来する、といった感じです。ところが、これも同記事等で述べたとおり、欧米諸国はQE・・・って、ようするに中銀の「財政ファイナンス」によるおカネの大乱発で「双子のバブル」(私的造語)つまり「株高・債券高[低金利]」という、市場原理下ではけっして起こり得ない金融環境を出現させてしまいました。これでは、株・債券のいずれも売ることが困難になる(ちょっとでも売ると、その連鎖があっという間に拡大してバブル全体が崩壊しかねない)ため、新規投資の「元手」としてのキャッシュがなかなか出てきません・・・
・・・って、だからこそ、その役目を担うべきオイルマネーは貴重だし、もっと市場に入ってきて各種資産を買い支えてほしい、と期待されることに。これ、虚ろなQEマネーと違って石油という実体ある財の取引に裏付けられたおカネですからね。その点は、本稿三回目で述べた、CSの救済者としてのサウジアラビアの金融機関がスイス人から歓迎される(しかない?)のと同じですよ・・・
で、肝心のそのオイルマネーですが、前述したように原油価格の下落でパワーダウンは否めません。このままでは・・・となるのは上記のとおりです。となれば、これにパワーを再注入するほかないでしょう・・・