(前回からの続き)
一方、これだけスゴイ勢いで株価が上がっているわけだから、その分、債券は売られて利回りは上昇するように思えますが・・・アメリカの長期金利は低いまま。昨年末から今年初めにかけて一時、3%のラインを越えましたが、その後は徐々に下がって、今月初めまではおおむね2%台半ばを推移してきました。逆にいうと、米国債の価格がそれだけ高いということになります。
ならば、きっと米国債以外の格付けの低い債券がかわりに売られているのだろう、と思って調べてみたら・・・まったく逆で、買われまくっていた・・・!
たとえば、もっとも危険な国債の代名詞となっている(?)ギリシャ国債(10年物)の利回りですが、この夏から9月中ごろにかけては5%台半ばと、同国にしては異常なくらい(?)低いレベルで推移していました。これは欧州ソブリン危機前と同じ水準です。こちらの記事などにも書いたとおり、ギリシャ経済の構造改革はまったくといってよいほど進展していないのに、国債価格だけが不釣り合いに上昇している印象があります。
ギリシャやアフリカ諸国など新興国の国債だけではありません。社債もまた高値で取引されているもようです。米調査会社の調べによれば、比較的信用リスクの大きな「トリプルB」「ダブルB」「シングルB」の格付け企業が発行する社債の全社債発行額に占める割合が2008年の21%から2014年は42%にまで上昇しているそうです。格付けがシングルA以上の企業に比べて債務不履行の可能性が高いこれら企業の社債がバンバン売れている理由について、ある資産マネジメント会社は「債券への需要があまりに大きかったため、投資家はどんな社債でもいいから、とにかく高い利回りを求めて格付けを見過ごすようになった」とのこと。
これを裏付けるかのように、シングルA企業とトリプルB企業の1年間のデフォルト率の差が小さくなっているそうです、前者は12ベーシスポイント(bp:1bp=0.01%)で後者が16bpと、その差はわずか4bp。で、以前はこの差がずっと大きかった―――それだけ投資家が社債発行企業の信用度をもっとしっかりと見極めていた―――リスクマネジメントができていた。でもいまは・・・。
といったように、米国債はもちろん、いまや低格付け国のソブリン債やジャンクっぽい社債までもスゴイ高値になっている(利回りが低くなっている)わけです。いや、この9月までは金融マーケットが「リスクオン」モードだったから、リスキー債券の価格がこうして上昇するのは、ある意味、自然だったのかも・・・。
むしろ驚かされるのは、まるで「リスクオフ」のときみたいに相対的に安全度の高い米国債までもが高価格となったことでしょう。これが示唆するところは・・・信用リスクの大きな債券が売れに売れてアメリカの債券の価格とそれほど変わらなくなり、その結果、投資妙味が増した米国債にもマネーが流入した、といったあたりでしょうか。
そんなわけで、もはや格付けがまったく意味をなさないくらい、すべての「債券」と名の付くものの価格は行き着く限りの高みに達した―――アメリカ等の債券市場は、まさに「債券バブル」というにふさわしい状態になっているといえそうです。
この債券バブルに、前回綴った株バブル・・・この両者が並存するという、これまでの経済学の常識では「ありえない!」はずの異様な光景をいま、世界は目の当たりにしています。わたしは勝手にこれをアメリカの「双子のバブル」と呼んでいます。いやはや・・・「双子の赤字」(財政&貿易赤字)に続き、また何とも厄介な双子が誕生したものです・・・(ため息)。そしていうまでもなく・・・その「生みの親」は米FRBであり、そのカロリーたっぷり(?)の栄養源は、QEマネーです。