なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

高浸透圧高血糖症候群

2020年05月11日 | Weblog

 金曜日の朝に高血糖(775mg/dl)の85歳女性が救急搬入された。ふだんは内科医院でDPP4阻害薬の処方を受けている。左肺炎があり、感染症(+脱水症)による増悪だった。

 当直の外科医が、内科当番だったの若い先生を呼んでいた。さらに治療はどうしましょうかと、当方に連絡がきた。

 患者さんは会話ができるが、ぼんやりしている。もともと認知症があり、失見当識の有無を判断しがたい(週明けの回復した状態からはレベル低下だったとわかる)。

 血液ガスはpH7.450・PaO2 75.6・PaCO2 35.5・HCO3 24.3・BE 0.7とアシドーシスはなかった。血清Na 138・血清K 5.5で、BUN 57.8・血清クレアチニン1.38なので、血漿浸透圧(推定)は351mOsm/Lになる。

 1)血糖値600mg/dl以上、2)血漿浸透圧350mOsm/L以上、3)pH7.3以上、HCO3- 18mEq/L以上と、高浸透圧高血糖症候群(HHS)の基準を満たしている。まあ著明な高血糖があって、(ケト)アシードーシスではないので単純にHHSになる。

 高齢者で心房細動・心不全があるので、生理食塩水の点滴は1000ml/時の半分になるが、もっとゆっくりにして3時間で1000mlにしていた。救急を診ていた外科医がヒューマリンR12単位をすでに皮下注していたので、3時間後の血糖(と電解質)をみた。

 血糖がほとんど変わらず、生食50ml(49.5ml)+ヒューマリンR50単位(0.5ml)を2ml/時(2単位/時)にして開始した。速効型インスリンは0.1単位/kg/時になっているが、糖尿病ケトアシドーシスではそのまま5単位/時(5ml/時)で使用するが、HHSの場合は高齢者が多いためもあるが2単位/時(2ml/時)で使用している。

 夕方には血糖275mg/dlとなって、ソリタT3・500mlに切り替えた。ヒューマリンRを混合して(1単位/グルコース5gだが、若干へらして4単位/500ml)、血糖測定の結果をみてヒューマリンR皮下注で補正とした。

 補正のヒューマリンR皮下注量は少なめにしていたが、血糖が561mg/dlと想定外に上昇してしまい、点滴混合量と皮下注量を増量してもらった。その後は血糖150~250mg/dlで推移していた。

 入院後は解熱して、3日目の今日は炎症反応も軽減していた(白血球12300から7000、CRP15.0から2.5)。内服薬は飲めるので大丈夫そうだが、慎重にST介入で嚥下訓練をしてもらうことにした(左下葉背側で誤嚥性肺炎疑い)。

 夫と二人暮らしで患者さん本人は到底インスリン注射はできない。どうしようもなければDPP4阻害薬+SU薬ごく少量(グリメピリド0.25mgかグリクラジド10㎎)になるが、できれば夫に1日1回持効型インスリンを注射してもらってBOTにしたい。

 

 

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