なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

長引く上気道症状

2020年05月01日 | Weblog

 29日水曜日の夜に、25歳男性が救急外来を受診した。当直の外科医(大学病院からのバイト)は既往歴・現病歴をきちんととっていた。家族の状況まで詳細に聴取している。

 4月20日に2歳の息子に咳・微熱があった。父親である患者さんは21日から咽頭違和感があり、その後咳が出始めた(けっこう咳き込んだそうだ)。

 25日から37℃前半の微熱があり、鼻汁(淡黄色)が多くなった。咽頭痛は続いたが、咳は軽減した。28日に38.9℃の高熱があり、関節痛も伴った。

 帰国者接触者相談センターに連絡した。COVID-19患者との濃厚接触歴や、発生地域への移動もなかったので、通常の近医受診を勧められた。

 そして29日夜間に当院の救急外来を受診した(日中は内科系医師も出ていたが、何故か夜に来た)。当直医はPPE(N95マスク着用)で診察した。胸部X線・CTで肺炎像はなかった。血液検査では白血球11400・CRP2.4と炎症反応の上昇を認めた。翌日の外来受診を勧めて、その日は帰宅とした。

 30日に発熱外来を受診した。担当は当院の外科医で頸部~腹部CTを撮影していた。肺炎像はなく、他にも感染巣として指摘できる病変を認めなかった。白血球12600・CRP8.8と上昇していた。(リンパ球減少・LDH上昇などコロナらしさはない。軽度~中等度では白血球は正常域か低下で、重症化しないと増加はしないようだ。)

 どうしようか、と連絡がきた。症状は鼻汁(淡黄色)と鼻閉があり、鼻声だった。咽頭痛(嚥下痛)があり、咽頭は発赤している。扁桃の腫大・白苔付着はない。胸部聴診上は異常がない。放射線科の読影レポートは異常なしだった。

 意識清明で高熱時に頭痛があるが、解熱すると軽快した。左鼻腔粘膜の部分的な肥厚があるが、副鼻腔炎の所見は軽度だった。呼吸困難・嚥下困難はなく、喉頭蓋炎や咽後膿瘍などのkiller sore throatではない。胸部CTをじっくり見ても肺炎はない。

 感冒(ウイルス感染)罹患後に細菌感染を併発したような経過ではあるが、細菌感染症の病名が付けにくい。マイコプラズマ抗原、肺炎球菌抗原検査は陰性だった。血液培養は提出したが、菌が出そうな気はしない。

 細菌感染と想定して、まずは一般的な抗菌薬投与で経過をみるしかない。新型コロナウイルス感染症チェックのため、今日保健所に来てもらってPCR検査を提出した。

 患者さん本人は「私はコロナではないですか」という程度だが、後で荷物を届けに来た妻が「コロナだったらどうするのか」と、大騒ぎして帰っていったと病棟看護師さんが言っていた。

(後日記)

 抗菌薬を開始して、高熱が2日続いたが、3日目に解熱して元気になった。感冒罹患後の細菌性急性鼻副鼻腔炎だった。PCR検査は陰性。

 

 

 

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