なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

透析+糖尿病+肝炎

2020年05月14日 | Weblog

 透析担当の腎臓内科医(大学病院から出向)から、内科の若い先生に血糖コントロールの入院依頼があった。60歳代後半の男性で、2月初めに緊急透析となり、その後維持透析になっていた。

 

 地域の基幹病院に高血圧症・糖尿病で通院していた。3年前に、健診で胸部異常影を指摘されて、それをきっかけに右腎癌と診断された。StageⅣで、下大静脈腫瘍塞栓・縦隔リンパ節転移・肺転移があった。手術(右腎摘出、下大静脈腫瘍塞栓摘出)が行われて、その後分子標的薬の治療が開始されたが、腎機能障害で中止になっている。

 血清クレアチニン2mg/dl台で慢性腎臓病(CKD)として外来で経過をみられていた。今年の2月に旅行先で腎機能が悪化して、緊急透析が行われた。その後、精査治療目的で大学病院に転院した。結局、腎機能の急性増悪の原因は不明だったそうだ。

 

 大学病院入院中の3月初めに肝機能障害が出現して、10日の経過で悪化した(最悪時はAST 350・ALT 529)。大学病院消化器内科に紹介されたが、原因を確定できなかった(ウイルス性肝炎は否定、抗核抗体は陰性で、肝生検はしていない。)

 薬剤性肝障害の可能性を考慮して被疑薬を中止したりしているうちに、肝機能障害は少し軽快していた(AST 104・ALT 240)。しかしすぐに肝機能は再上昇した(AST 205・ALT 409)。

 自己免疫性肝炎(AIH)疑いとして、プレドニン30mg/日(0.5mg/Kg/日)が開始されて(ウルソ600mg/日併用)、しだいに肝機能障害は改善してきた。

 

 4月初めに当院の腎臓内科外来(大学病院から)に紹介されて当院で維持透析を継続することになった(地域の基幹病院は維持透析はしていない)。肝機能はまだあって(AST 35・ALT 116)、プレドニンを5mg/日ずつ漸減の指示があった。(5mgずつ1週間おき漸減の指示は早すぎると思ったが、当院に来てからはもっとゆっくり漸減していた)

 ステロイド投与でもともとの糖尿病が悪化して、グリコアルブミンが47%になった。それで血糖コントロール目的に入院だが、すでに超速効型インスリン少量を毎食前皮下注をしていたので、まずは同量で開始して漸増していく。

 

 血液透析患者さんではHbA1cは「血糖状態を正しく反映しないために参考程度に用いる」とされていて、もっぱらグリコアルブミンが測定されている。HbA1cはグリコアルブミンの1/3ではあるが、1回おきにHbA1cとグリコアルブミンを測定してもいいのではないか。(血糖管理目標はグリコアルブミン20%未満、随時血糖180~200mg/dl。)

 プレドニン漸減中(現在は10mg/日)なので、減量からは血糖改善が期待されるが、投与期間としては長くなっていくのでその点では悪化する。AIHだとプレドニン5~10mg/日で維持だが、どこまで減量できるか。

 「ステロイド糖尿病」は「ステロイド投与によって発症する糖尿病」なので、もともと糖尿病があってステロイド投与によって血糖が悪化するのは「ステロイド投与による糖尿病の増悪」としかいえない。細かい話だが。

 

コメント (1)
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