なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

分水嶺領域の脳梗塞

2014年08月28日 | Weblog

 入院していた93歳女性が今日自宅に退院した。嘔吐下痢になって、誤嚥性肺炎をきたして、かかりつけの内科クリニックから紹介されて救急搬入された。急性腎前性腎不全もあったので、数日食事摂取できなかったものと思われた。ユナシンで治療を開始して肺炎は軽快したが、1週間くらい投与して便に血液が混じってきた。大腸検査はしてないが、ユナシン(アンピシリン)による出血性腸炎が疑われた。ちょうど肺炎が改善していたので、ユナシンを中止して整腸剤(ミヤBM)内服にしていたら、血便は消失した。

 退院の予定をたてて、あと3日で退院という日の朝に言語障害が出た。言葉を想起するのに時間がかかった。四肢の麻痺はなかった。頭部MRIを行うと、左大脳の分水嶺(ACAとMCA、MCAとPCA)に複数の脳梗塞があった。失語症の症状だった。入院時の心電図で心房細動はなく、再検してもやはり心房細動はなかった。脳血管の末梢で血流が低下したのだろう。エダラボンと点滴(500mlを2本)で経過をみると、言語障害はほとんど消失した。1週間後には自分でポータブルトイレに降りて、2週間後には歩いて隣のベットの患者さんのところに行って話をしていた(表敬訪問ですと言っていた)。

 独身の息子と二人暮らしで、むすこがさびしがっているからと退院を希望した。かくしゃくとしているとはこの患者さんのような人を言うのだろう。恐れ入りました。

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