Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

仮面での吹き替え

2005年08月03日 | Memo
7月歌舞伎座『十二夜』で主膳之助と琵琶姫を同時に並ばせる時、吹き替えの役者に菊之助さんの顔の型を取った仮面をかぶせておりました。角度によって仮面のふちがハッキリわかるのと、表情が無いということで仮面だと気が付かれた人も多かったと思います。一人何役かこなす時に仮面での吹き替えをしたのは私が覚えている限りでは歌舞伎座で玉三郎さんが演じた『於染久松色読販 新版お染の七役』の時からだったような気がします?もっと前からやっていたことがあるのでしょうか?

(踊りで立場を変化させるために隈取の仮面をかぶっての取替えはあったような記憶はありますが、これはいわゆる吹き替えということではありせんし、使い方の意味合いが違うと思うので、こういう場合を抜かして。)

さて、この仮面での吹き替えは私はいまのところ効果をあげるどころか反対に早替わりの効果を半減させていると思うので賛成できません。しかも、仮面という無機質なものを見せられると違和感が残ります。言い方が悪いかもしれませんが不気味。今まで歌舞伎では吹き替えを仮面を使わず効果的に使ってきたと思います。あまり似て無くても、同じ人だと認識さえさせれば人間の脳は簡単に「似てる」と判断してくれるものです。ちなみに玉三郎さんの時の仮面での吹き替えは不評だったと思うのですが…少なくても私の周囲および、Web上の感想では大半がそうだったように思います。


今回の『十二夜』でいえば2回ほど並ぶシーンがありましたが吹き替えは2回とも主膳之助のほうでした。私はすぐに仮面と知れて、あーあ、仮面かとがっくりきました。なので、仮面の表情のなさへの違和感のみが残りました。ただ私の感想は別として、仮面と気が付かなかった方もいらっしゃいます。気が付かなかった方は吹き替えの役者さんが菊之助さんに非常によく似ていると思われたようですが、ここにも実は弊害がありました。

ここは主膳之助→琵琶姫への早替わりを見せる場でもあったはずですが、残念ながら早替わりの効果を見せることは出来ていませんでした。この一端は仮面での吹き替え。一瞬、どちらがどちらか判らないのでは、早替わりの意味が無いのですよね。最初から二人並べてても今回、場の見せ場としてそれほど変わらなかったと思います。せっかく、菊ちゃんが頑張って着替えてるにっ、と思ったのは私だけではないはず。まあ、これは仮面のせいだけではなく、どちらかというと早替わりを見せる演出方法が悪かった部分が大きいとも思います。それは別の機会に。