湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

今日もポーク

2009-07-15 23:00:30 | B食の道


濃厚な、そして肉だらけ玉ねぎたっぷりのルーが、これでもか!というくらいライスを覆い尽くしている。
白いカバーがかけられたエンジ色のソファーが並ぶレトロな店内で食べる「ハヤシライス」は、初めてなのに、どこか懐かしい味わいだった。
横浜スタジアム脇(センター後方)の大正12年創業の『梅香亭』である。学生時代の多くを過ごした浜スタから丸見えの場所にありながら、当時はその存在にさえ気づかなかったのだからおかしい。
店構えがいい。映画のセットのようだ。扉も、内装も、カーテンも、テーブルも、椅子も、メニューも、日本ビールと書いてある鏡も何もかも “美術さん”がわざわざ作ったもののよう。でも、ぜんぶ時間の経過が磨きをかけたホンモノなのだ。いやぁ素晴らしい。ただ、テレビだけが液晶の薄型ですっかり浮いていて残念。
さて、ハヤシライス。濃厚な上、かなりのボリュームなので、普通の人なら途中で飽きてしまうかもしれない。生野菜サラダでも口に含んでさっぱりしないと進めないかもしれない。
僕ですか?ご心配なく。お水があればノープロブレム。いや、むしろウェルカムです(笑)。ガンガンいきました。ガバッとすくって、バグッ。舌を火傷したくらい。
このルー、なにがいいかって、肉が豚なんです。
「ハヤシ」は「ハッシュドビーフライス」からきているので(諸説あるらしいが)、てっきり肉は牛肉だとばかり思っていた。だから、それが実はよく炒められた豚バラだとわかった瞬間、スプーンを握った拳でテーブルをガンガン叩いて叫びたくなった(笑)。
しかも、その量がハンパではないから、こんどは両の拳を突き上げてテーブルの周りをぐるぐる回りたくなった。
豚肉ファンの皆さま、お待たせしました。遂に濃厚、極上B食の逸品の登場です。こんなものが86年も前から、ここで当たり前のように供されていたのかと驚くばかり。懐かしいと感じたのは、子供のころ母親が作ってくれたおしゃれなハヤシライスの肉は紛れもなく豚だったから。
今日は、決してハヤシライスを食べるために訪れたわけではない。レトロを求めて扉を開けた店なのだ。それが、こんな素敵な出会いを演出してくれるとは。
いつのまにか、僕は古い短編映画の主人公になっていた。