湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

正真松栄ポークソ亭

2009-07-14 22:58:27 | B食の道


月に一度のNO残業DAY。秋葉原の牛丼専門店『サンボ』を目指す。
リベンジである。もちろん「牛皿と卵、牛皿と卵…」とつぶやきながら。
しかし、今日も6時を回ったところだというのに、シャッターが半分降りている。中から漏れる光が、いま閉まりましたと語っていた。7時までやっていることあるのだろうか。

さて、困った。
また『かんだ食堂』では芸がない。そうだ、川を渡ってあの一角へ行ってみよう。
『松栄亭』で「洋風かきあげ」は、どうだ。あの夏目漱石先生のために創作したというメニュー。
真新しい扉を開けると小綺麗な店内。テーブルにはクロスがかかり、いかにも洋食屋さんという雰囲気だ。
頼むものは決まってはいたのだが、いちおう壁にかかっているメニューを確認。「洋風かきあげ、洋風かき…。おっ、ポークソテー!」
久しく口にしていなかったその名を発見。一瞬にして唾液の大量分泌が始まる。ただちに脳より方針変更の命令がくだった。
二人の先客が会計を済ませると、店内には一人残った客が頼んだそれをソテーする、勢いのある音だけが響き渡る。おそらく肉がオレンジ色の炎に包まれているに違いない。聞いているだけで幸せ。読み始めた文庫本に、まったく集中できない。
僕のためにたっぷり時間をかけられた料理が、お母さんによって運ばれてきた。


美しい。これぞ正しい洋食屋さんの仕事。トマトの風味のソースと玉ねぎが、ちょっと気取ったカンジで懐かしい。豚肉はしっかり厚みがあって、決して大きいとはいえないがメインとしての存在感は充分。フォークを入れるとギリギリと手応えがあり、手のひらで豚肉を感じるのである。
おぉ、ポークソテー。これだよ、これこれ。ずいぶん久しぶりだったなぁ。最近なかなか見かけないもんな。
そして、周囲に少しだけの残る脂身の量がまた絶妙。ポークソテーはパサパサしがちだが、このブロンとした脂身が口の中でちゃんとバランスをとるのである。
千切りキャベツとパセリの緑、トマトの赤の彩りも素晴らしい。余計なものが一切ない。ポテトサラダやハムサラダ、各種スープなどは単品でオーダーするスタイルも古きよき洋食屋さんらしい。
こうしたお店だと、だいたい単価も張るのが相場だが、ポークソテー+ライス(大盛りレベル!)で1050円とは良心的。ロールキャベツやメンチカツ、オムライスも食べてみたくなった。おっと、肝心の「洋風かきあげ」を忘れてた(笑)。


確か…と思い出して、いま見たら、この本にも出てました。しかも、ポークソテーまで。時代こそ違うが、「ポーク・ソテーが1、串カツレツが1、この店の名物・洋風かき揚げが1、カレーライスが1、ドライカレーが1、オムライスが1。それに酒を四本のんで、三人とも腹いっぱいになり、勘定がいくらだとおもうだろうか…。金3640円である。」との一文も。その後、安い理由が店主の口から語られている。ムダをはぶいて経費を少なくしてお客に還元するのが「私の性分」。「うまくて、しかも安い」と言ってもらえるのが「本望」だそうだ。