ドアボーイが立っている。それだけで、僕なんかは気後れして足を踏み入れることができない某高級セレクトショップ。ファッションに興味のある方なら誰もが知っているブランドでもある。今日はそこの社長さんにお会いした。
こっちはジャスコのジャケット姿だ（笑）。
細身のスーツをさりげなく着こなすナイスミドル。物腰も柔らかい。しっかりとしたポリシーがあるので、話がとてもわかりやすい。そして、とにかく真面目、ただただ真剣な方。『ちょいワル』ではなく、間違いなく『めちゃイイ』おやじだ（おやじといったら失礼。おじさまですね）。
人となりをもっと知りたくて、不躾ではあったが最後にひとつ尋ねてみた。
「プライベートで、最近あったイイことは？」
すると、少し考えてから、いきなり満面の笑みをたたえ、こう切り出した。
「何年も前から探していた椅子に出会えたんですよ」
インテリアが好きで、その椅子は八方手を尽くしたが見つからなかったのだという。
「それが、仕事先からの帰り道、偶然そこにあったヴィンテージものの家具屋さんに並んでいたんですよ」
ここで、横に控えていたスタッフの顔を、子供のような眼でのぞきこみ
「仕事の帰り道ね、たまたまだから、ほんと偶然」
と笑う。
「しかも、自分が欲しかった色。もうすぐさまそのお店に飛び込んでね。でも、持って帰れないので、とにかく押さえといてくださいって…」
そりゃそうだ、会社に持って帰れません（笑）。
めちゃめちゃ嬉しくて興奮した様子が目に浮かんでくるようだ。
なんだか、遠い存在だったブランドが、急に身近になったような気がした。
今度マリンタワーの近くのお店にでも行って、ドアボーイに導かれてみようか。もちろん、ジャスコのパンツはいてだけど。
本文と写真（横須賀美術館）は関係ありません。