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あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: 春のお花見ドライブ旅行_一泊二日の萩&津和野

2010年03月28日 | 旅するロードスター/アテンザ
2010年3月27日(土) この週末は、妻と二人で、久し振りとなる一泊二日のドライブ旅行。

数週間前の夕食後。 二人で中国地方の地図を眺めながら、『どう。 どっか行きたいところある?』 『うーん、ここは行ったし、あそこも行ったし』 『なかなか行った事がなくてスゴいところって残ってないよなあ』 『そうよね。 今回は久し振りに萩にしようか』 『OK。 じゃあ、萩へのドライブ旅行で企画してみよう』

***

土曜日の朝。 少し早めに家を出て、高速道路をのんびりと走り、ICを降りてからは一般道を北上して萩へ。
今日は、萩で船に乗るつもり。 萩八景遊覧船。
 
運河に設置された乗り場から、ちいさな動力船に乗り込み、川を遡っていく。 まだ川風は冷たく、桜は3分から5分咲きといった感じ。 見頃は来週辺りかな?

***

船を降り、海辺で昼食を食べた後、走っている途中で偶然見つけた松蔭神社へ。
吉田松陰。 もちろん名前は聞いたことがあるが、あまり真面目に歴史を勉強していなかった私は、恥ずかしながら具体的なイメージが湧かないのは事実である。

松陰神社の後は、萩博物館へ。 ここで衝撃の出会いがあった。 それは、『旅する吉田松陰』

これを見た瞬間、妻と顔を見合わせて苦笑。 まさか、こんなところで『旅する。。。』なんてキーワードに出会うなんて!
しかもそれが、さっき神社にお参りしてきたばかりの吉田松陰だなんて!

その後、博物館の資料を拝見し、そして7分程度の映像を拝見して、これまで興味を抱く事すらなかった吉田松陰の生き様を知る事になった。 『うーん。 まさにこれは、今回は、ここに来るべくして来たんだなあ!』 感涙。
***
またまた、偶然を装った必然の旅に驚きつつ、夕方は『萩本陣』さんの温泉へ。
これが、様々なお風呂が完備されたきれいな温泉で、ゆったりのんびりお風呂を満喫することができ妻も大満足。

今日の宿は、うちの旅行の定番、ビジネスホテル。 一介の平サラリーマンなので、旅行とは言えそれほどお金は掛けられない。
今回見つけた宿は、一泊二食付きで、なんと二人で1万1千円でおつりが来るというのである。 つまり、一泊二食で一人あたり6千円弱。 『まあ、この値段じゃあ夕食は期待できないな。 いいじゃん、こんなに安いんだからさ』
と笑いながら待って出てきたのがこの食事!

『おいおい。 これってスゴいよな。 刺身もたっぷりあるし、サザエまで付いてるよ。 ボリュームもスゴいし感動!』 『ほんとよね。 これは食べきれないくらいあるよ』

生ビールを注文し、『グビリ』と一口飲んでから、おいしい夕食をいただいた。 『あー、もう、お腹一杯! ごちそうさまでした』 『満足満足。 この値段でこんな料理がつくなんて。 これこそ、期待を越えたサービスだよな』
***
部屋に戻り、夜は部屋に備え付けられていた吉田松陰や長州ファイブの本を読みながらビールとワインをゆっくりと飲む。

『学者になるのではないよ。 人は学んだ事をどう実行するかが大切だよ』

『また、それぞれの人の性質を考え、すぐれたところをのばすように教えました。 人は誰でも得意とするものがあり、また性質もちがっていて同じではありません。 だから松蔭は、各自の性質にあったように、また得意とするところを励むようにしむけました』

『まごころをこめてやればできないことはない。 どんなひとでも、まごころをこめて話し合えばきっとわかってくれる』 『何事をするにも、しっかり志をたてることが大切である』

いやあほんと、今回は萩に来て良かった! 意識していなかったけれど、これは縁。 今回は絶対、ここに呼ばれていたんだなあ。
***
翌日は、朝早めに萩を出て、津和野へ。
まずは、乙女峠に向かう。 ここは、二十数年前に訪れた思い出の場所。 ひっそりと、そして静かなこの場所は、桜が満開でとても落ち着いた良い雰囲気であった。 『ああ、懐かしい』

葛飾北斎の美術館を見学。 いやあ、北斎はほんとうにスゴいなあ! ここでも再び感動。
 
津和野の町を歩いていると、『鯉の里』というお菓子を発見。 え、なんで津和野で『鯛の里?』と思ったのだが、よーく見ると鯉の里(コイの里)であった。 あー、ビックリした。

その後も、津和野の通りをしばし散策。
 
うーん、久し振りにゆっくりと歩いて見たが、これはなかなか良い雰囲気である。
***
少し早めにお昼ご飯を食べて、津和野を後にした。

今日は、広島市内に用事があるのだ。

以前、シーカヤックのイラストを描いていただいた井上朝美さんの個展が、市内で開かれているのである。 これは行かねばなるまい!

訪れたギャラリーは、きれいな絵本の原画が飾られ、訪れたお客さんで賑わっていた。 私に気づいてもらい、挨拶を交わして、絵を拝見しつつ様々なお話を伺った。
『いやあ、さっき津和野で葛飾北斎の美術館にも寄って来たんで、感慨一入(ひとしお)です』 『北斎は、北斎漫画で有名ですよね。 じつは学生の頃は図書館で北斎漫画を借りては、原画のスケッチとかしてたんですよ』『え、そうなんですか。 あの北斎の原画って、ほんとリアルで微に入り細に入り描いてあってスゴいですよね』
うーん、ここでもつながった!

『いやあ、いいですね。 ありがとうございました。 じゃあそろそろ帰ります』
***
久し振りの萩&津和野への旅。 安くて感動的な宿の発見、思いがけない吉田松陰との出会い、二十数年振りの想い出の地訪問、葛飾北斎美術館初&知人の個展訪問などなど、とても印象深いドライブ旅行となった。

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瀬戸内シーカヤック日記: 出雲蕎麦&温泉堪能_日帰り島根ドライブ

2010年03月07日 | 旅するロードスター/アテンザ
2010年3月6日(土) 雨模様の週末の初日は、久し振りに中国山地を越えて島根へドライブ。
島根へドライブと言えば、その目的は『出雲蕎麦』と『温泉』
***
アテンザワゴンで中国山地を目指して北上し、雨の峠を越えて、最初の目的地である『一福』さんへ。
私は蕎麦と言えば出雲蕎麦、それも一福さんが一番のお気に入り。 日本海シーカヤックツーリングの帰りはもちろん、年に何度かはここの蕎麦と温泉をセットにしたドライブを楽しんでいる。

妻は、温かい『天婦羅蕎麦定食』

私は前から気になっていた、地元の牛肉を使った数量限定メニューだという『牛丼セット』と『ざるそば』
 
牛丼は、おそば屋さんらしいあっさりした味付け。 ちょっとイメージとは違っていたが、ずっと前から気になっていたメニューだったので、ようやくこれを食べることができて気が済んだ!

牛丼セットの割り子蕎麦。 うーん、やっぱりここの蕎麦は旨い。
そしてざるそば。 割り子蕎麦と基本的には同じだと思うのだが、割り子に予めそばつゆを掛けておいて食べるのと、ザルからそばをたぐってつゆにつけて食べるのでは、食味と食感が全く違うのには驚いた。 新たな発見。

たっぷりのおいしい蕎麦を堪能し、そば湯もいただいた。 『ごちそうさまでした』
うー、今日は少し食べ過ぎた。 お腹一杯。 やっぱり俺は一福の出雲蕎麦やなあ。 はるばるここまで来た甲斐があったというものだ。
***
次は温泉なのだが、まだ満腹状態なので、少し散歩をしようということに。
少し離れた場所までクルマで移動し、山道の途中にクルマを停めて、雨の上がったあぜ道を散策。
『今日、峠を越える時に、何カ所かでフキノトウを見かけたんだ。 もうトウがたっていたけど、探せばあるんじゃないか』

静かなあぜ道のあちらこちらにフキノトウはあるのだが、いずれもすでに大きく成長しており、食べるのには適さない。

途中で出会った地元の方にも聞いてみたが、あまりこの辺りにはフキノトウはないし、もう季節は終わったよ、との事だった。
『残念。 でもまだ雪がある季節にこの辺りに来るのは難しいしね。 まあ春を感じられたからよかったなあ。 じゃあ、温泉へ行こうか』
***
再びクルマに乗り込み、温泉に向かう。 今回は、これまで行った事がない温泉に行こうと言う事で、あえてこれまで避けてきた『加田の湯』へ。
昔から通っていた『千原温泉』や『ラムネ温泉』が、最近メジャーになって人が多くなり、ゆっくりと浸かれなくなっているのは寂しいものである。 妻も、『ラムネ温泉は人が増えてちょっとね』、ということだったので、昔地元の人に聞いたことがある加田の湯へ。

山道を走っている途中、川沿いのある場所で、ピピッと来た。 なんだか匂いがする!
クルマを停め、『この辺り、なんか気になる。 ちょっと探してみようか』

川辺の土手に歩いて行くと、

まだフキノトウと言えるレベルの、ちょうど良い大きさのフキノトウがいくつもある。 年齢も忘れ、うれしくなって一生懸命フキノトウを採集。
さすがにまだ小さいものは残り少なかったので、採れた量はそれほど多くないが、食べて春を感じられるくらいは充分ある。
これで今週末の夜はフキノトウで一杯飲れるかな? 楽しみだ!
***
加田の湯。 初めて訪れる温泉だが、人も少なく泉質も良く、お気に入りの温泉がまた一つ増えた。
 
入って当分の間は、私一人の貸し切り状態。 三瓶山系らしい茶褐色に濁ったお湯は、ゆっくり浸かると体の芯まで温まる。
静かな温泉で、ゆったりのんびりの1時間。 最高の一時!
*** 
雨の週末。 出雲蕎麦と温泉をたっぷりと堪能した!
いやあ、好いドライブだったなあ。

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瀬戸内シーカヤック日記: ロードスターで冬のオープンドライブ to 竹原

2010年02月06日 | 旅するロードスター/アテンザ
2010年2月6日(土) BarBourのポーラーキルトショートジャケットを羽織り、ニット帽を被って、指先の出る手袋をはめる。 ロードスターのドアを開けて乗り込むと、いつものようにラッチを外して幌を下ろし、エンジンに火を入れる。

パーキングブレーキを解除し、クラッチを踏んでギアをLowに。 わずかにアクセルペダルを踏み込みながら、クラッチペダルを踏んでいる左足の力を緩め、かすかに伝わってくる振動と音の変化でクラッチのミートポイントを探りながら、やさしく静かに発進した。

走り出してもしばらくは、ヒーターのファンはOFFのまま。 エンジンが暖まり、水温が上がるまでは、ファンを回しても冷風が出てくるだけだ。

5分ほど走ると、水温計の針が徐々に動き始める。 そろそろヒーターを入れても良い頃。 晴れ渡った冬の朝。 風は強いが、温風がコックピットを満たすと、快適な冬のオープンドライブの始まりである!

***

珍しく家に居る土曜日。 今日は、久し振りに妻とロードスターで日帰りドライブ。
県北の温泉を目指していたのだが、北上して西条が近付くにつれて雪が舞い出した。 チェーンを積んでいるとは言え、雪道ドライブはあまり気が乗らない。 急遽、目的地を竹原に変更した。

雪が舞う2号線を東へと走る。 見た目は寒そうなのだが、走っている間は空気の流れがきちんと制御されているので、ヒーターの効いた車室内は快適そのもの。
 
竹原の海水浴場。 風が強く寒い今日は釣り人も少なく、静かで快適である。
晴天の冬の瀬戸内の景色を堪能。
 
***
少し早いお昼ごはんは、お気に入りの『太華園』へ。
 
おいしいラーメンを堪能した後は、町並み保存地区を散策。
どうやら今日から、町のあちらこちらで雛人形の展示が始まっているらしい。 良い雰囲気の残る町並みをそぞろ歩き、雛人形を見せていただいた。
 
↑ ピントぴったり『キドスカープ』

再びロードスターに乗り込み、『かんぽの宿、竹原』へ。
最近疲れがたまっていたので、60分のマッサージを奮発。 頭と肩、首のマッサージの後は、全身マッサージ。 いやあ、最高に気持ち良い。 これぞまさに至福の一時!
その後は、温泉に浸かってゆったりと体を伸ばした。 『いやあ、ここのマッサージ、最高やったわ。 ほんまに体がリフレッシュした感じ。 来て良かったなあ』
***

↑ この写真は、おととしの冬に沖家室へドライブ旅行に行ったときの写真。

凛と引き締まった空気をリアルに感じながら、視界の一部に青空が写り込み、流れる景色と一体化して走るロードスター。
冬のオープンドライブは、最高に気持ち良いなあ。

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瀬戸内シーカヤック日記: 忘年会@『鯛の里』in沖家室

2009年12月27日 | 旅するロードスター/アテンザ
2009年12月26日(土) この週末は、両親も招待しての家族での忘年会。 場所は、周防大島の南側に位置する『沖家室島』にある『鯛の里』 ここは、一日一組限定で、新鮮な魚介類料理がとてもおいしい民宿である。

鯛の里を知ったきっかけは、数年前に、『ホクレア号船長のナイノアトンプソン氏がお世話になったという、カワノヨシオさんのルーツ探し』で、シーカヤック仲間と共に泊清寺を訪れた時にお世話になったこと。 それ以来お気に入りの宿の一つとなり、何度か通っては、おいしい魚料理を堪能させていただいている。

10月初旬に鯛の里の松本さんに連絡を入れたところ、今年はどんどん週末の予約が埋まっているとの話だったのだが、幸いな事に家族全員の予定が調整できそうなこの日はまだ空いていたので、すぐに予約を入れさせていただいた。
***
土曜日の昼前。 2台のクルマで周防大島へと向かう。

昼食を食べ、大観荘でお風呂に入った後、3時のお茶にしようと言う事になり、最近お気に入りの『芋喰島』へ。
 
コーヒーやみかんジュース、芋ティラミスや黒ごま芋タルトなどを堪能。
***
夕方、沖家室島へ入る。 少し早いので、クルマを停めて昔のメインストリートを散策した。

瀬戸内の小島の漁師町ならではの風情を感じながらの散策。 ある空き家の窓からガラス越しに中を見ると、1960年のカレンダーが掛かっている。
うーん、これはスゴい! ここでは、約50年前のまま時間が止まっているのだ。

海沿いに出ると、漁港の端っこのスロープで、漁師さん達が焚き火をしておられた。 『こんにちは。 今日は大掃除ですか?』 『いやあ、わしらはいつも流木やゴミを集めて掃除しよるんよ。 ここにはえっと流れ着いてくるんじゃ』

『ところであんたら何しよるん』 『今日は、鯛の里に泊まるんですよ。 少し時間があるけえ、散歩しよるんです』 『おお、ほうか。 鯛の里。 そりゃええのう』 『わしゃあ、鯛の里のおやじの船で一緒に漁をさせてもろうた事があるよ』

私は一人スロープに降り、一緒に焚き火にあたらせていただきながら話を続ける。 そんな私を、家族はニヤニヤと笑いながら眺めている。

『ところで今の時期は何が獲れるんですか』 『鰤(ぶり)。 大きいのは、8キロじゃ10キロじゃいうくらいのが釣れる』
『えー、ここで鰤が! 網ですか』 『いやあ、ここは一本釣りよお』 『今は正月前じゃから、値もええんでしょうねえ』
『そうそう、今が一番ええよ』 『釣って戻ったら、あそこの生簀に入れとくんじゃ。 後であそこへ行ってみせてもろうたらええ』

『8キロくらいの鰤ゆうてみい。 頭だけでこれくらいあるんで』 『ほうよ。 あの頭を二つに割って焼いたら美味い』
『知っとるか? 頭を二つに割るんは、普通の包丁でええ。 ちゃんとした場所に包丁を入れたら、そがあに力を入れんでもきれいに割れる』

『ありゃあのう、片刃の包丁じゃ駄目なんよ。 両刃の包丁じゃないと。 片刃じゃあ、だんだん傾いて入っていくけん、途中で引っ掛かる』 『わしゃあ、それを知らんかったけえ、前は斧を当てて木槌でガンガン叩いて割りよったよ』

『ほうですか! いやあ、そがな話は知らんかったですよ。 面白いですねえ』 『まあ新鮮な鰤を食うてみい。 そりゃあ旨いでえ』
***
家族が待っていなければ、まだまだ話を伺いたかったのだがそうもいかない。 『ありがとうございました。 じゃあ、あっちに行ってみます』 『あっちへ行って、あそこの人らが生簀の鰤を見せてもらえいうて言いよったいうたら見せてくれるじゃろう』 『はい、ありがとうございます』

生簀の近くに行き、そこに居られた方にお話を伺うと、生簀の鰤は全部運搬車の水槽に移したとの事。 残念!
すると、その方は水槽の覗き窓を開けて下さり、なかの鰤を見ることができた。 おー、いっぱい泳いどる。

家族でしばらく見せていただき、お礼を言って再びクルマへ。
***
待ちかねた鯛の里での夕食。 忘年会の始まりである。 まずは『乾杯!』
高校生の次男は残念ながらまだお預けだが、二十歳になった長男は美味そうにビールを飲んでいる。
 
『鯛の里』といえば、もちろん新鮮な鯛の刺身。 新鮮でコリコリである。 カワハギ(はげ)の刺身は、肝を付けて食べるとなんともいえない濃厚で奥深い味わい。 『おー、このカワハギの肝はほんまに美味い。 最高じゃあ!』
 
一人一個の大きなサザエ。 とても大きな『オコゼ』の刺身。 刺身だけでも大満足である。
***
次に出てきたのは『ウチワエビ』 おー、待ってました! 松本さんは、いつも同じようなメニューで済みませんねえ、なんて言っておられたが、いつもと同じで嬉しいのである。 このウチワエビは、うちの家族にも大人気。
 
ちょうど良い塩加減の、茹でたての大きなウチワエビ。 真ん中から半分に割ると、プリップリの身が!
松本さんは笑いながら、『いやね、鯛の里って名前を変えようかと思ってるんですよ。 このウチワエビが大人気でねえ。 問い合わせの時に、そちらの宿ではウチワエビが食べられるんですよねえって、よく聞かれるんです。 そのうち、鯛の里じゃなく、海老の里になるかも』 ほんと、それくらい旨いのである。
殻入れのボールには、みるみるウチワエビの殻が積み上がっていく。
 
ころころサザエは、曲げる前の河豚釣り用針を使って身を取り出す。
***
アワビは、刺身とバター焼き、素焼きで。 刺身はコリコリ。 バター焼きは柔らかく濃厚で、ビールやご飯に合う。 素焼きはサッパリで焼酎にピッタリだ。
 
アワビの肝、最高! 〆は、牡蠣も入った海鮮炊き込みご飯。 『ごちそうさまでした!』 大満足!
 
***
食事が終わると松本さんも一緒になっての宴会が始まった。 おいしい芋焼酎『民宿、鯛の里』を飲みながら、様々なお話で盛り上がる。
夜が更けていくにつれ、まず両親が二階に上がり、しばらくしたらうちの家族も上がっていった。 そこからは、松本さんと二人で焼酎を酌み交わす。
 
松本さんが子供の頃の賑やかだった沖家室島の様子や、民宿を始める事になった経緯、宮本常一に関わる事になったきっかけ。
昔からの小学校の卒業写真を集めたアルバムを見ながら、沖家室島の歩んだ歴史や子供達の数の変遷などを教えていただく。

沖家室島の漁港によく来ていたという『豊島の家船』の話。 お互い気が強かった沖家室島の子供達と、豊島の家船の子供達との、子供らしい意地や見栄の張り合いの話は特に面白い。 『豊島の漁師も遠くまで行きよったけど、沖家室の漁師は、あのちいさな船でハワイまで行きよりましたからね』 『確かにそうですよね。 昔の人たちのパイオニア精神はスゴいですよね』

宮本常一の話。 『それにしても、私の周りでも宮本常一を知らない人は多いですよ』 『宮本常一はどちらかというとマイナーだからね。 宮本常一ファンは、結構アウトロー的な人が多いかも』 『なるほど。 それってよくわかりますねえ』

郷土大学の話。 以前訪問されたという見島の話。 以前調査されたという貴重な資料、『老人から学ぶ島の漁法と魚の生態』について。 現代の漁業が抱える様々な課題についてなどなど、話は尽きない。

夜もだいぶ更け、酔いも回り、眠くなってきた。 そろそろダウン寸前。 『じゃあ、そろそろ寝ます。 ごちそうさまでした!』 おいしい料理とおいしいお酒、そして楽しくかつ興味深いお話を堪能し、大満足で床についた。
***
翌朝は、茶粥に味噌汁、おいしい漬け物。 そして、昨夜は食べきれないということで朝食に回してもらったアラ炊き。 甘辛い絶妙の味付けが最高だ。
 
食後は、コーヒーを飲みながら『老人から学ぶ島の漁法と魚の生態』を読ませていただいた。 いやあ、これは本当に興味深く貴重な資料である。
***
『どうもお世話になりました。 ごちそうさまでした』 『また、遊びに来てください』
久し振りに訪れた『鯛の里』 両親も家族も大満足。 今年もまたまた最高の忘年会であった! 松本さん、ほんとうにありがとうございました、

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瀬戸内シーカヤック日記: とびしま海道_斎島&豊島散策

2009年12月08日 | 旅するロードスター/アテンザ
2009年12月8日(火) 今日は先月分の休日出勤の代休。 週の半ばの一日だけの休みであり、キャンプツーリング派の私は海に出る気にはならないが、せっかくの晴天の一日。 たっぷりと楽しむ事にしよう!

***
今回の元々の目的は、数年前の『家船調査のフィールドワーク』で豊島を訪問した時に知り合った、『豊島合同回漕店』&『よりんさい屋』の北谷さんに久し振りにお会いするとともに、豊島名物である『ひじき』と『太刀魚一夜干し』を仕入れてくる事であった。

ところが、朝起きて晴れた空を眺めている時に、『斎島!』というキーワードが浮かんで来た。
おー、斎島。 シーカヤックで一度訪ねた事はあるが、ちょっと休憩しただけで、目的地である岡村島に向けて出発した。
この島には豊島から定期船も出ているし、小さな島だから船の時間次第では日帰り訪問できるかも!

すぐさまPCを起動し、定期船の時刻をチェック。 すると、お昼前後に約1時間半ほど滞在可能なタイムスケジュール。 これは、行くしかないでしょう!
***
北谷さんには、斎島から戻る午後1時過ぎに訪問する事を連絡し、豊島の豊浜港へ向かう。
同栄丸に乗り込み、斎島へ。
 
船を降り、対岸を眺めると豊島&大崎下島。 いつもと違う景色は新鮮である。
***
『マナイタ浜』に向けて島の狭い道を歩いていく。 家は多いが、どうやらそのほとんどが空き家のようだ。
 
竹林の間を抜ける狭い山道を登り、峠を越えると目の前は四国の海。
 
どこまで続くのかと思うような長い下りが途切れると、唐突に目の前に海と浜が広がる。 ここが、マナイタ浜。
静かできれいな浜である。 キャンプにはピッタリだ!

浜辺に座り、テルモスに詰めてきた温かい紅茶を飲み、豊島の小さな商店で購入したコロッケを頬張る。 うーん、美味い!
***
だれも居ない浜で、しばし一人だけの静かな時間を堪能し、再び急な山道を登って島の北側へと戻る。
 
漁港の隅っこに人影が見えた。 ちょっと行ってみるとしようか。
***
『こんにちは。 これはヒジキですか?』 『おー、こんにちは。 そうよ、ヒジキを干しとる』

『いつもは漁をしとられるんですか?』 『そうよ。 わしゃあ漁師。 あそこに舫ってある3隻の船はわしんよ。 何年か前までは、5隻持っとったが、売ってしもうた。 今は3隻』

『昔は、鯛や太刀魚、メバルなんかがえっと釣れよった。 最近は魚が減ったのう。 アビ漁? ありゃあ20年位前までやりよったよ』
そうこう話をしていると、手押し車を押しながら一人のおばあちゃんが歩いてきた。 『こんにちは』 『ああ、こんにちは。 何の話をしょうったんね?』 『ええ、島の昔の話を伺いよったんですよ』

『ほうね。 昔の話ね。 私が嫁に来た頃は、この島に200人くらい住んどった』 『じゃあ、外から嫁に来られたんですか』
『わたしゃあ、ここに産まれたんじゃないよ。 蒲刈から嫁に来た』 『ほうですか。 そのころはどうじゃったですか?』

『あの頃はねえ、人は多かったし、あちらこちらに畑を作って、麦や芋なんかをみんながつくりよったね。 でも百姓は、日中は畑で働いて、終わったら家に戻って、そんな家と畑の往復だけじゃけん、他の人に会ういうことはほとんどなかったねえ』
『ここは、漁師だけじゃなかったんですか』 『ほうよ。 百姓も、漁師も両方おったよ。 昔は除虫菊もようけつくりよって、風が吹いたら岡村島まで匂いが行きよったいうし、藍島あたりを通る船からも匂ってきたいうて言いよったわい』

『こんな小さな島じゃけど、集落ごとにいろいろあって、喧嘩が多かったねえ。 わたしゃあ、蒲刈から来た時に、こかあ喧嘩の島か、いうて思いよったくらい、なんかで集まって飲みよっちゃあ喧嘩ばっかりじゃったねえ』

『この島には会社がないじゃろう。 じゃけえ、ほとんどの人は飯を食うために外に働きに出て行く。 残っとったのは、この人や私らくらいよ』 『家はほとんど空き家じゃけど、盆や正月には帰ってくるけえ、人には貸せんのんがほとんど。 それでも今じゃあ、4人くらいの人がこの島に移ってきたけどの』

『これはヒジキ。 でもそんなにお金にはなりゃあせん。 今年は少ないけえ、頼まれた注文を断りよるくらい』
***
その後も、『どこから来た? 呉? わたしゃあ呉の武田製網で働きよったんよ』 『呉のあそこ、今はどうなっとるじゃろうか? ほうね、もう当分いっとらんけえね』 『昔はちんちん電車が走りよったよね。 あそこの十何丁目のところにあった○○は懐かしいね』などなど、ローカルな話題で盛り上がった。

『お、そろそろ船着き場に行ったほうがええよ。 乗り遅れたら夕方までないで』 『はい、ほんまにいろいろ聞かせてもろうてありがとうございました』 『またきんさいよ』 『ええ、また絶対来ますよ!』

朝の思いつきで突然訪ねた斎島。 偶然出会った漁師さんとおばあちゃんから、これまで知らなかった斎島の昔の生活を伺うことができ、思いがけなくも『あるくみるきく_斎島散策』となった。
***
豊島に戻り、『よりんさい屋』で北谷さんと1時間弱の楽しい一時。
夏に4回実施したシーカヤック教室の報告をして、来年の『旅する櫂伝馬プロジェクト』の応援をお願いし、とびしま海道を盛り上げる会についてのお話を伺った。 帰りには、妻から頼まれたヒジキと、私が好きな太刀魚の一夜干しを購入

その後少し遅いお昼ご飯にと立ち寄った、おいしいお好み焼きのマリちゃんは、残念ながら閉店準備中で、『あんたあ、なにしよるん。 もっと早うこんと!』 『えー、今日は終わりですか! 残念、また来まーす』と、ちょっとした落ちがついたものの、予想以上に充実した、平日の代休の一日。
***
『あるくみるきく_斎島散策の旅』 こりゃあ、なかなかええ休みじゃったのお!

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瀬戸内シーカヤック日記: ロードスターで紅葉狩りドライブ

2009年10月25日 | 旅するロードスター/アテンザ
2009年10月25日(日) 今日は、妻と二人で紅葉狩りへ。 向かうは、久し振りの訪問となる『帝釈峡』
ドライブには時々出かけるものの、なんとなく行く場所が限られており、たまには普段あまり行かない場所に行きたいね、ということで、地図を開いて決めたのが帝釈峡。

特に何があると言う訳ではないのだが、紅葉の季節。 少し早いが、秋の中国山地を楽しむとしよう。 曇り空だが、オープンドライブにはちょうど良い気候。

R375を北上して行くと、徐々に空気がひんやりとして来るのがダイレクトに感じられる。 道路脇の温度計を見ても、13℃、12℃、9℃と下がっている。
気温、匂い、そして雰囲気まで、ドライバーとパッセンジャーにダイレクトに伝わってくるのである。 これがオープンカーの醍醐味の一つ。
***

下道をのんびりと走り、約3時間ちょっとで帝釈峡に到着。 学生時代のバイクツーリングなどを含めると、帝釈峡には何度か訪れているが、妻とこの帝釈峡に来たのは、長男が妻のお腹の中に居た時。 そう、もう20年も前である。 懐かしいなあ!

その頃は経済的な余裕もなく、神龍湖を巡る遊覧船に乗る事などとうてい選択肢にも入らなかったが、今ではその程度の余裕はできた。 『今日は船に乗ろうや。 昔はほんと、どこ行っても貧乏ドライブ、貧乏旅行じゃったけどなあ。 今想やあ、あの頃も懐かしいよのう』
 
朝10時出発の遊覧船で、湖を周遊。 まだ紅葉は始まったばかりだが、ゆったりと静かな湖面を進む船から眺める景色はなかなか良いものであった。
 
時間にして40分ほどの遊覧を堪能し、遊歩道の散策へ。
***
前に来たのは20年も前なのに、遊歩道から眺める景色を見ると、当時の思い出が浮かんで来る。 『ああ、この景色じゃったよなあ。 覚えとるわ』 『ここらで、石が落ちてきてビックリしたよなあ』
 
始まったばかりの紅葉を楽しみつつ、1時間弱のお散歩。 静かで空気も澄み、なかなか良い散歩道である。
 
お昼ご飯は近くの喫茶店で。 ハーブを売りにしたそのお店で、食後はハーブティーをお願いした。
静かな観光地で、秋の景色を眺めながら、ゆっくりと楽しむお昼の一時。
***
 
帰り道も、普段走る事のない一般道で、気の向くままに寄り道しながら家に戻ってきた。

オープンドライブに最適な季節。 20年振りに訪れた帝釈峡。 少し早かったが、紅葉狩りを楽しんだ秋の一日。
なかなか充実した一日であった。

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瀬戸内シーカヤック日記: あるくみるきく_お米について考える@下関(2)

2009年10月13日 | 旅するロードスター/アテンザ
夕方6時。 まずはエルコヨーテ氏とビールで乾杯。
そうこうしているうちに、地元の方が徐々に集まりはじめた。 挨拶を交わし、酒を酌み交わしながらの楽しいお話。
焚き火を眺め、おいしい鹿肉の刺身をつまみながら、米作りや牛の種付けなどについて、興味深いお話を伺った。
 
楽しい宴。
***
翌朝。 朝から晴れてお米の勉強会には最高の日和。
 
地元下関からの参加者の方も来られ、庭に置かれたテーブルでお茶をいただきながら、エルコヨーテ氏からお米についての様々なお話を伺う。

早場米と遅場米の違い。 田圃の土による違い。
精米について。 玄米の研ぎ方、炊き方。 お米の等級分けの視点。
米袋の話。 一反で収穫できるお米の量。 などなど。

お米は毎日食べている主食であるが、実は何も知らないのだという事に改めて驚いた。
***
その後、お米作りをされている方が来られ、一緒に田圃を見て歩く。
 
歩きながら、米作りや昔の生活、鳥や鯉、亀のこと、子供時代の川での遊びのことなど、様々なお話を伺った。
その方は、かつて漁連に勤めておられたということでもあり、私が漁港や漁船に感心を持っているということから、工房に戻ってからは山口県の漁業談義に花が咲いた。 いやあ、面白い!
***
そうこうしているうちに、今年の新米が炊きあがり、漬け物、もろみ味噌をおかずに、卵かけご飯でいただいた。
『うーん、美味い!』
 
食後は、別の米作り農家の方から、籾すり機を見せていただき、お米作りのお話を伺った。
***
いやあ、本当にお米については何も知らないのだという事を再認識。 目から鱗の二日間であった。
地元の方との交流や勉強会など貴重な機会をいただき、またいろいろとお世話になり、ほんとうにありがとうございました!

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瀬戸内シーカヤック日記: あるくみるきく_お米について考える@下関(1)

2009年10月11日 | 旅するロードスター/アテンザ
2009年10月10日(土) この週末は、シーカヤック仲間であるエルコヨーテ氏からのうれしいお誘いで、お米についての勉強と新米の購入を兼ねて下関へ。
ここ数年、シーカヤック仲間が居る事や、気持ちの良い温泉があることなどから、年に何度も下関方面に通うようになった。 つい先日も、妻の誕生日のお祝いとして俵山温泉に一泊二日のドライブ旅行に行ったばかりである。

いくら高速1000円とはいえ、いつもと同じように、味気のない高速道路をただひたすら走って効率的に移動するだけでは面白くない。 集合時間は夕方6時。 せっかくだから、以前から気になっていたルートでゆったりまったり、ドライブ旅行を楽しむ事にしよう!
***
広島ICから高速に乗り、浜田自動車道を走って浜田へ。 今日は浜田から、益田、萩、長門経由で、豊田町に行くルート。

この辺りは、下関の綾羅木海岸から島根半島の日御碕まで尺取り虫方式で漕いだ『古代人ツアー』の、思い出深く懐かしい場所。
尺取り虫方式での瀬戸内横断を終え、目標を見失っていた時機に、当時私のブログを読んでくれていた友人の誘いでスタートした古代人ツアー。 美しくも、時折荒れて厳しい顔を見せる日本海を、その折々に偶然立ち寄り一夜のお世話になった漁港で様々な出合いに恵まれ、昔と今のお話を伺いながら漕ぎ進んだこの旅は、『あるくみるきく_旅するシーカヤック』の原点となる貴重な経験を積ませていただいた。

本当にありがたいことである。 そして、改めて車で走ってみると結構距離がある。 我ながら、こんな遠くまで何度も通い、そしてこの長い距離を漕いだものだ。
***
今日は、夕方までたっぷりと時間がある。 できるだけ海沿いの狭い道に立ち寄り、寄り道し、普段は通り過ぎる海岸線を探検。

狭い道を抜けると、そこには穏やかな湾があり、良い感じの漁港が。 そこは、須佐漁港。 車を停め、カメラを手に漁港を散策。
 
歩いていると、一人のおじいさんが居られた。 この方にはお話が聞けそうだ。

『あるくみるきく』の旅を続けていると、いろいろなお話が聞けそうな匂いがする人と、話し掛けても一言二言で終わってしまいそうな人が、なんとなく分かってくるものである。 宮本常一氏が、『話は、聞ける人からしか聞く事はできない』と書いておられたが、旅に出るとまさにそれを実感する。

『こんにちは。 あの、この船の前にある台みたいなのは何ですか?』 『おー、これか? これは、満潮の時に船に乗り込むための台や』

『えー、そうなんですか! 全部の船の前に置いてあるし、道具入れにしては構造が違うし、魚を入れる容器でもないし、不思議やなあって思うとったんです』 『潮が引いとる時はええが、満潮になったら舳先の位置が高うなるじゃろう。 そうなったら、特に年寄りには乗り込むんが大変なんよ。 じゃけえ、これを台にする』 『いやあ、私は漁港が好きでいろいろ回りよるんですが、こんな台を見たんは初めてです。 こりゃあ、面白いですねえ』

『このカゴに入っとる石は何ですか?』 『これか? これは敷網の重石に使うんよ』 『ほうですか! そりゃあちゃんと縛らんと糸が外れますねえ』 『そうよ。 じゃけえ、ええ形の石を選んどるんじゃ。 ええ石がある浜があって、そこに探しに行って、ええ形のを拾うてくるんじゃ』

『なるほど。 確かによう見たら、真ん中辺りに凹みがあるような石ばかりですね』 『その浜には、ええ石がえっとあるんよ』
 
『あんたは気づいとらんかもしれんが、あの竹を見てみんさい。 他の港じゃあ、錨を下ろしたりするが、ここじゃあ船の艢をあの竹に舫う』 『なるほど、確かにほかじゃあ見んですね』
『昔は松の木を使いよったが、今じゃあ大きい松がなくなって竹になった。 竹は傷むけえ、2年ごとに交換じゃ』

『向こうに、舳先にテントを張った船がありましたが』 『あれは、漁に出とる時、あのテントの下で網を修理したりするんよ』 『私の地元の豊島には、前にテントを張ったり屋根を付けて住めるようにしとる『家船』いうのがあるんですが、あれとは違うんですね』
 
『おお、広島の家船か! 知っとるよ。 昔はこの辺りにも来て、船で寝泊まりしながら漁をしよったなあ』 『え、そうなんですか! ここら辺りにも来とったんですね』
『広島の船言うたら、家船以外にも『茶碗』を売りに来る船もおったで。 毎年同じ時期に茶碗を船に積んでここに売りに来よったわい。 当時は木造船じゃったなあ』 『知りませんでした。 そんな船があったんですねえ』

『わしはもう80歳になるんじゃが、おそらくわしらがそんなのを覚えとる最後じゃろうなあ』 『80歳ですか! とてもそんなには見えません。 若いですよねえ』 『おお、みんなそう言うんじゃ。 若う見えるいうてなあ』
『いやあ、ほんまにありがとうございました。 ええ話を聞かせてもろうて』 『なあに、ええよ。 まあ、ゆっくり見学して行きんさい』 『はい!』

いやあ、今日もこの漁港を訪ねて良かった。 親切な方に偶然出会うことができ、今まで知らなかったお話を伺うことができた。 感謝!
『あるくみるきく_旅するシーカヤック』 旅を重ねるごとに、そして偶然の出合いを重ねるごとに、貴重な情報が集まり私の中に蓄積されていく。 うん、今回も良い旅になりそうだ。
***
その後も、海岸沿いの寄り道を楽しみながら日本海沿いのドライブをゆっくりと堪能。

有名な観光地ではなく、生活に密着した地味で小さな漁港の一つ一つが、私にとっては最高の場所。 人との出合い。 これぞ、私にとって何にも代え難い旅の醍醐味。
***
夕方、温泉で一日の疲れを癒し、エルコヨーテの工房へ。
 
今日は、地元の方も一緒になっての交流会! 楽しみだ。

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瀬戸内シーカヤック日記: 宮本常一写真講座

2009年09月27日 | 旅するロードスター/アテンザ
2009年9月19日(土) 周防大島にある東和総合センターで、第3回宮本常一写真講座が開かれる日。
午後2時から4時までの予定で、講演は今回のメインゲストである民俗写真家の芳賀日出男さん、トークセッションの聞き手は森本孝さんとなっている。

このうち森本孝さんは、観光文化研究所が発行していた幻の雑誌、『あるくみるきく』の元編集長でもあり、『舟と港のある風景(日本の漁村・あるくみるきく)』の著者でもある。 というわけで、『あるくみるきく_旅するシーカヤック』を標榜する私にとっては、お会いした事こそないけれど、漁村をメインに『あるくみるきく』を実践されてきた尊敬すべき大先輩。
これは行かねばなるまい。
 
↑ 『舟と港のある風景(日本の漁村・あるくみるきく)』 、 私が所蔵している『あるくみるきく』
***
お昼ご飯は、周防大島で最近お気に入りのカフェで、500円のワンコインランチ。 いつもながら、シンプルだが素材の良さが活かされており、おいしいランチである。 食後は+150円のコーヒーを飲みながら、森本孝さんが編集された一冊、『あるくみるきく_糸満の海』を再読。 うーん、やっぱりええなあ。
 
***
まだ時間があるので、車を置いて久賀の町中を散策すると、『パンの店』の看板が目に飛び込んで来た。 覗き込むと、時代を重ねた良い雰囲気のショーケースにパンがきれいに並べられている。 おー、ストライクゾーンど真ん中!
これは、是非とも入ってみねばなるまい。
 
お店に入ると、『いらっしゃい』とおばちゃんが出てこられた。 『こんにちは。 このパンは、ここで作ってるんですか?』
『そうなんよ。 昔はいろいろと卸しよったからたくさん作りよったけど、いまは少しだけじゃけどね』

『いろいろありますねえ。 これは何ですか?』 『これはカレーパン。 こっちはバタークリーム』
『これは?』 『これはねえ、半分アズキ餡で、もう半分はクリームが入っとるんよ』 『じゃあ、カレーパンと、これと、これください』

『はい、じゃあ240円』 そう、パンは一つ80円なのである。 安いなあ!
 
***
『久賀というたら、昔は大島の中心だったそうですね』 『そうよ、この前の道もバスが走りよったんじゃけん。 それが、今じゃあ海沿いの新しい道を車が走るようになって、ここらは素通り』 『前は賑やかじゃったんですか?』 『ええ、そりゃあ店も多かったし、映画館もそこにあったんよ。 最近じゃあ、日曜日は店を閉める。 そしたら人が外に買い物に行く。 客が減って店をやめる。 悪循環じゃねえ』

『ここは、いつ頃からやっとられるんですか?』 『そうじゃねえ、70年位前かねえ。 私しゃあ、大島でも別の所からきたんじゃけど、じいさんの代からやっとるんよ』
『やっぱり、地の人が買いに来てんですか?』 『それがねえ、岩国や柳井から買いにくる人が多いんよ。 一度買うてみたら、懐かしいパンの味じゃいうて、口コミでいろんな所から買いにきてじゃねえ。 まあ、そがに言うてもたくさん売れるわけじゃないけどねえ』

『ほんまですね。 パンの袋や雰囲気も、私らが子供の頃に食べよったパンを思い出します。 明日の朝に食べるんが楽しみですよ』 『ほうねえ。 ありがとう』 『じゃあ、また寄りますけん。 ありがとうございました』
***
午後1時過ぎに、東和総合センターへ。
『あるくみるきく』を読みながら開場を待っていると、『こちらが森本先生』という声が聞こえてきた。
振り向くと、写真で拝見したお顔が。 その方々とのお話が終わるのを待ち、立ち上がってご挨拶。

『森本さんですか? 初めまして。 「瀬戸内シーカヤック日記」のカヤッカーです』 『あー、あの。 豊島の事とか書いておられる』 『はい! 先日は、ブログにコメントいただきましてありがとうございました』

しばし横に座らせていただき、海洋大学での集中講義や東北芸術工科大学でのフィールドワーク手法の継承を含む最近の先生の活動や、瀬戸内の家舟の事、あるくみるきくの事など、しばしお話しさせていただいた。
『もう会場にも入れるようですから、今日はゆっくり楽しんでいってください』 『はい、ありがとうございます』
 
***
午後2時。 講演会がスタート。 芳賀さんが、初めて宮本常一と歩いた九州旅行の写真と、その時のエピソードが話される。
熊本駅で落ち合い、宮本の希望で最初に向かったのが通潤橋。
 
なんという偶然であろう。 この春に妻と出かけた九州ドライブ旅行で偶然最初に訪れた場所が『通潤橋』なのである。 この時は、ナビの誘導に従って予定外のルートで走っていたとき、偶然見つけて立ち寄ったのが通潤橋。 たまたまそこで出会った地元のおばちゃんに、宮本常一が芳賀さんに話して聞かせたと言う通潤橋の建設に関わる言い伝えを聞いたのである。

まるで、これまでの旅で何度もあった、偶然を装った必然である!

1時間の講演の後は、森本さんも加わってのトークセッション。


*** 以下、芳賀さんの講演、およびトークセッションより ***

『旅をして珍しいものを探すのではなく、あたり前の、ごく普通のものを見つける事が、宮本常一の凄いところ』 『見ようとして歩く事が大切だ』

『私ら写真家は、撮った写真をどこかに発表しようと言う気持ちがあるが、宮本常一の写真は、記録するための写真。 自分では覚えきれないからカメラに覚えさせる。 脳細胞の一部としてカメラを活用していたという事』 『普通ならフィルムがもったいなくてあんな使い方はできないが、オリンパスペンが出てきて、ハーフサイズになったから、あのような使い方ができるようになった。 オリンパスペンのペンは書くPenの事。 まさに、あのカメラのコンセプトが、宮本常一の使い方にピッタリであった』

『一眼レフが出てきてオリンパスペンが製造中止になったのは、偶然にも宮本常一が無くなった年であった』

『宮本常一の庶民精神は凄い。 どこかに飲みにいこうかと言われた時に、普通は鰻が食べたいとか、何が良いとか言うものだが、宮本常一は違った。 「気楽なところにしてくれ」と言うのだ。 気楽なところということで、その人の行き付けの店に行く事になる。 この、気楽なところにしてくれ、というのは本当に良い返事だ』

***

『宮本常一の知識は、本で勉強したものではなく、実際に旅をして学び、深めたものだから、その凄さが違う』

『宮本常一は普通のおじさんだ。 だが、同じものを見ても聞いても、宮本常一と言うフィルターを通して出てくるものが素晴らしい』

『宮本常一は、組織の中ではなく、一人で事を成し遂げる人』

『宮本常一の写真は、知識を持って撮った写真。 その知識があるからこそ、ごく普通のものの中から、意味のある、価値のあるものを撮ることができた』

*** 以上、引用終わり ***

あっという間の2時間が過ぎ、写真講座はお開き。 うん、良いイベントだった。 今回が3回目という事だが、機会があればまたぜひ参加したいものである。 森本さんにご挨拶をして、会場を後にした。

夜は、地元にあるお気に入りの居酒屋で一人で一杯飲り、海沿いの駐車場で車中泊。 なかなか充実した一日であった。
***
それにしても、数年前に宮本常一関連のイベントでお会いした香月先生と言い、森本先生と言い、観光文化研究所出身の民俗学者の方々は、皆さん気さくで話しやすい方々ばかり。
やはり、知らない土地に行って、初めて出会った地元の方々と親しくなり、着飾らない貴重な話を聞き取り、調査してまとめていくという仕事をするには、そういうキャラクターが必須なんだろうなあ。 良い勉強になった。

*追記: 帰りに道の駅で、周防大島名物のサツマイモ、『東和きんとき』を一パック買って帰った。 家に帰ってパッケージをよく見ると、そこには『宮本農園』の記載が。。。 ということは、あの宮本農園で作られた”東和きんとき”ということである。 偶然とは言え、これにも驚いた。

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瀬戸内シーカヤック日記: 妻とのんびりまったり_ロードスターで俵山温泉一泊旅行

2009年09月20日 | 旅するロードスター/アテンザ
2009年9月19日(土) この週末は、妻の誕生日である。 以前から、強アルカリ性のヌメッとしたお湯で気持ちの良い、山口県の俵山温泉に妻を連れて行きたいと思っていたのだが、彼女の都合がギリギリまではっきりしなかった。

土曜日の朝。 妻に、『どう、せっかくの休みやから俵山温泉、行ってみるか?』と聞くと、嬉しいことに『うん、今日はええよ』との返事。
じゃあ、ということで、早速以前お世話になった宿に電話。 すると、『今日はいっぱいです』 まあ、そりゃそうやあなあ。 シルバーウィークやもんなあ。 そら、しゃあないわ。

妻に、『聞いてみたけど、さすがにこの連休はいっぱいらしいわ。 もしかしたら泊まれんかもしれんけどええか?』 『そうじゃろうねえ。 それでええよ』
『じゃあ、行き当たりばったりの旅や! ほんま、これが楽しいんやなあ。 行くで!』
***
その日の朝に突然決めた俵山温泉の旅。 洗濯を済ませ、一泊二日の最小限の荷物をちいさなバッグに詰める。 もう8時過ぎ。 秋の連休に、こんな突然の、そしてのんびりした準備で大丈夫か?

息子達に、『ちょっと母さんと旅に出てくるわ。 せっかくの誕生日の週末やしな。 日帰りになるかもしれんし、宿が空いとったら泊まって帰る。 後は頼んだで!』
すると、いつもの事だとばかりニヤリとし、『ほいほい、どーぞごゆっくり』と返ってきた。
***
ロードスターの屋根を開け、清々しい秋の空気を感じながら廿日市から山陽道に入ると、事故渋滞との情報。 アチャー! まいったなあ。
途中で一旦高速を降り、岩国から再度高速に乗って西へ。 高速を降りてから途中でお昼ご飯を食べ、気持ちのよい温泉で汗を流し、小休憩。
 
再びロードスターで山道を走り、俵山温泉へと到着した。
温泉街を歩きながらケータイを取り出し、温泉に関係している会社へ電話。 『すみません。 今日、宿泊プランで二人空いてませんか?』 すると、『今日は連休なんで、宿泊プランは一杯なんです。 でも、もしかしたら、ちいさな宿が、部屋を出してくれるかもしれないんで、あたってみますけど。 どうされます?』 『ぜひ、お願いします』

『じゃあ、連絡先を』ということで、ケータイの電話番号と名前を告げ、しばらく待つと、電話がかかって来た。
『二人でとれました』 『ありがとうございます。 じゃあ、お願いします』 ということで、その宿へ。
***
俵山温泉の宿泊パックとは、一泊二日、朝夕二食と温泉に4回まで入れるチケット付きで一人7000円と言う格安プラン。 白猿の湯は一回700円必要だから、二日で3回入ったとしてもそれだけで2000円オーバー。 それに、朝夕の食事が付くのである。
以前、一人で訪れた時にこのプランを使ったのだが、あまりのリーズナブルさと、ここのお湯の質の良さに、いつかは妻を連れて来たいと思っていたんだ。 強アルカリの俵山温泉。 肌がツルツル、すべすべになるのだが、中年オヤジの私がツルツルお肌になっても仕方がない。 ここは、やっぱり妻と来なければ!
***
夕方、ゆっくりとお湯に浸かり、宿に戻って夕食を食べ、ビールで乾杯。 『いつもほんとうにありがとう。 誕生日おめでとう!』
 
食後はしばし休憩し、再び温泉へ。 湯上がりは、部屋の窓を開けて涼しい風を感じつつ、静かな温泉街の夜の風情を堪能した。
***
翌朝。 今日も晴れ。 妻が寝ている間に山道を30分ほど散歩して、7時から再び温泉へ。
30分ほどの朝風呂が、最高に気持ち良い。 おいしい朝食をいただき、宿の女将さんに挨拶して出発だ。
『どうもありがとうございました。 おかげさまでゆっくりできました』 『どうでしたか? お湯が良かったでしょう?』
『ええ、最高でした。 ほんま、ゆっくりさせてもらいましたわ』 『今日はどこへ?』 『はい、今から角島へ行ってみようと思うとります』 『そら、ええですよ。 晴れたら景色もいいですしね。 お気をつけて』
***
今日もロードスターの幌を降ろし、日本海に続く山道を駆け抜け角島へ。
 
高台で美しい景色を堪能し、角島大橋を渡る。 静かな海辺で散歩を楽しみ、再び角島大橋を渡って川棚へ。
***
少し早いお昼ご飯は、瓦そば。 熱々で香ばしい瓦そばを妻と一緒においしくいただいた。 『ごちそうさまでした』
 
今日は快晴で日差しも強く、帰りの高速をオープンで帰るのは、さすがに妻には過酷そうである。 幌を上げ、エアコンをONにして、山陽自動車道を東へ。

廿日市インターの出口で40分ほどの渋滞。。。 うーん、シルバーウイークの遠出で、これくらいの渋滞で済んだのならよかったかな。

途中で給油し、計算すると16.1km/L。 普段の通勤で15km/L前後である事を考えるともっと伸びて欲しかったが、行きはオープンドライブでも、帰りの高速はクローズでエアコンON、最後にほとんどアイドル状態だった渋滞40分を考えると、まあまあ許せる範囲か。
***
秋の連休前半。 念願であった妻との俵山温泉一泊旅行を楽しむことができた。 宿泊パックを利用した節約旅行ではあったが、それでも妻も喜んでくれたようだ。 ほんとうに、いつも俺を支えてくれてありがとう。

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