政府・防衛省は16日、「防衛白書」を小中学生向けに「分かりやすくまとめた」(岸信夫防衛相)「はじめての防衛白書」なるもののHP掲載を開始しました(写真左、中)。「国防」に小中学生を取り込む策動を強めるもので、けっして軽視できません。
掲載開始が、「日の丸・君が代」「自衛隊」でナショナリズムが鼓舞された東京五輪の直後、天皇裕仁の「玉音放送」に由来する「終戦記念日」の翌日というのは、けっして偶然ではないでしょう。
「はじめての防衛白書」は、①国の防衛はなぜ必要か、から始まって、⑩自由で開かれたインド太平洋、まで全10章30ページ。イラスト、図表をふんだんに使っています。「中国」「北朝鮮」の「脅威」を前面に出し、自衛隊を「合憲」と強弁し、膨張し続ける軍事費を「必要なお金」と言い繕い、「日米同盟」=軍事同盟を「世界の平和を守るため」と美化するなど、歴代自民党政権の安保・自衛隊政策の要点を解説。新味は、現在の日米安保の重点である「インド太平洋」戦略が強調されていることです。
「自衛隊合憲」「専守防衛」「非核三原則」など事実を偽る一方、騒音・犯罪・環境破壊などの基地問題や辺野古はじめ基地反対の市民運動には一切触れず、戦争法(安保法制)による憲法違反の「集団的自衛権」行使にも口をつぐむなど、まさに偏向教材そのものです。
とりわけ、歴史認識に立って友好関係を築いていかねばならない中国や朝鮮民主主義人民共和国に対し、逆に敵愾心を煽って軍事的対峙の必要性を強調していることは、小中学生に計り知れない害悪をもたらします。
これを作成した目的について、岸防衛相はこう公言しています。
「「はじめての防衛白書」では、令和3年版の防衛白書の内容のうち、我が国周辺の安全保障環境や防衛省・自衛隊の取り組みなどについて、若年層向けにできる限り分かりやすくまとめたものとなっております。
特に、以前作成しましたトピック別の「まんがで読む防衛白書」とは違い、ターゲットを絞ったわが国の防衛政策について幅広く学べるコンテンツを、初めての試みとして新たに作成をいたしました。
国の防衛には、わが国の将来を担う若年層を含む国民の皆様の御理解と御支援が不可欠です」(10日の記者会見。防衛省HPより)
政府は「オリンピック教育」で「日の丸・君が代」の誤った歴史を教え、開会式や「聖火リレー」などで「日の丸・君が代」「自衛隊」との親和性を図りました(3日のブログ参照)。
天皇制帝国日本の侵略戦争・植民地支配責任(加害責任)を隠ぺいする15日の政府主催「戦没者追悼式」にも、中高生が動員されました(写真右)。
その直後の「はじめての防衛白書」です。
少子化の中、さらに日米軍事同盟の世界的深化がすすむ中、「若年層」をターゲットにした政府・防衛省の策動が強まっています。これまでも、文科省と一体となって、「自衛隊基地見学」や「防災教育」と称して自衛官を学校に呼ぶなど、小中学生と自衛隊との接触を政策的に行ってきました。「はじめての防衛白書」はその危険な動きを加速させるものです。