アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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”金メダルを噛む”だけが問題ではない―五輪の政治利用

2021年08月07日 | 五輪と国家・政治・社会

    

 名古屋市の河村たかし市長が金メダル獲得の報告に訪れたソフトボール・後藤希友選手の金メダルを突然噛んだ(4日、写真左)ことは、まともに論評する価値もないほど愚劣な行為ですが、これには河村氏だけの問題ですませられない側面があります。

 それは河村氏の行為が、「アスリートに失礼」「コロナ感染上も問題」なのはもちろんですが、本質的には政治家(政治屋)による東京五輪・メダリストの政治利用の問題だということです。

 政治家はメダリストとのツーショットがイメージアップになると考え、映像や写真を政治利用しようとします。メダルを噛むのは河村氏の特殊性ですが、メダルを自分の首にかけたり、ツーショット写真を後援会会報などに使うことは頻繁に行われています。

 問題は、こうした政治家による東京五輪の政治利用が、河村市長のような浅薄なものだけではないことです。

 1日の中国新聞2面に、次のようなベタ記事がありました。

<自民党の河村建夫元官房長官は31日、東京五輪で日本代表選手が活躍すれば、秋までにある次期衆院選に向けて政権与党に追い風になるとの認識を示した。

 萩市の会合で「五輪で日本選手が頑張っていることは、われわれにとっても大きな力になる」と述べた。

 新型コロナウイルスが感染再拡大する中での五輪開催に批判的な声があることには「五輪がなかったら、国民の皆さんの不満はどんどんわれわれ政権が相手となる。厳しい選挙を戦わないといけなくなる」とも語った。>(1日付中国新聞)

 河村氏(写真中)は、小泉純一郎内閣で文科相、麻生太郎内閣で官房長官を務めた自民党の幹部。同じ河村でも名古屋市長のそれとは発言の重みが違います。地元・萩市での支持者の会合で、思わず本音が飛び出したのでしょう。

 ここには菅義偉政権・自民党が「世論」の大きな反対を押し切って東京五輪を強行した政治的思惑が端的に示されています。

 それは、①コロナ対策の失政に対する批判を五輪で紛らわす②日本選手が活躍すれば五輪を開催した菅政権・自民党への支持も上向く―という二重の意味で、間近に迫った衆院選に向けて自民党に有利に働くという思惑・打算です。

 この河村元官房長官の発言は、菅首相が「五輪が始まれば空気が変わる」と再三述べていたことと通底しており、けっして河村氏だけの本音でないことは明らかです。
 菅・自民党による東京オリ・パラ強行は、こうした政治的打算・政治利用の産物にほかならないことをはっきり記憶に残す必要があります。

 


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