アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「精神科病院×新型コロナ」の驚くべき実態

2021年08月02日 | コロナ禍と政治・社会

    

 31日夜のNHK・ETV特集「ドキュメント精神科病院×新型コロナ」は、コロナがあぶり出した日本の精神科医療、人権蹂躙の驚くべき実態を暴きました。

 昨年5月、都内の精神科病院Xで新型コロナウイルス感染のクラスターが発生。感染者249人(患者190人、職員59人)。転院させて治療しようにも、転院先がみつかりません。やっと都立松沢病院が、コロナでギリギリの中、数名を受け入れました。

 感染した統合失調症の男性(60代)は訴えます。「大部屋で感染した。自分で保健所に電話して、退院したいと言ったけれど、だめだった。逃げられないと思った。社会に殺されると思った」
 
 精神科病院にはクラスターになりやすい要素があります。患者のマスク使用が徹底できない、患者に密着した治療・リハビリが不可欠などなど。NHKなどの調査では、全国で感染者が出た精神科は145病院、感染者は4600人以上。

 今年2月、都内の精神科病院Yでクラスター発生。患者239名中115名が感染、6名が死亡。はやり松沢病院が一部を受け入れることに。
 その患者(複数)の証言から、驚くべきことが明らかになりました。
 感染者は大部屋に集められました。中央に簡易トイレが1つ。壁も仕切りもありません。そして、部屋には外から無断で南京錠がかけられたのです(写真中)。

 「臭いし、プライバシーは一切ない」「ナースコールもないので、みんな叫びました「水がほしい!」」「こんな病院おかしい。助けて!」「死んじゃうと思った」―患者たちの痛切な叫びです(写真右)。

 さらに驚くべきことは、Y病院を視察した都の保健所、また都庁の職員が、この事実を見て見ぬふりをし、対策をとろうとしなかった、していないこと、取材にも答えようとしないことです。厚生労働省も実態を知っても改善指導をしようとしていません。小池百合子都政、菅義偉政権がこの現実を放置しているのです。

 古い、汚い、狭い。精神科病院の劣悪な環境には原因があります。それは、国の「精神科特例」です。「一般病棟」に比べ、医師の配置基準は3分の1、看護師は3分の2でいいとされているのです。そのため精神科病院はもともと医療スタッフが少ない。それがコロナ感染でさらに少なくなる。ある看護師は、「多い時は1人で20人の患者さんを担当しました」と言います。

 そのうえ、医療点数(医療収入)が正当に評価されていない問題があります。
 精神科病院の団体関係者は、「われわれは医療とともに、社会秩序・保安も担当している(社会に出れば暴れるなど“秩序”を乱す人たちを入院させている、という意味)。それでこの点数(医療収入)なんですから」と頭を抱えます。

 低予算で患者の人権を踏みにじって病院に隔離する。それが日本の精神科医療です。日本の入院患者は約27万人。世界の入院患者の約20%が日本の病院にいるのです。

 こうした隔離状態の根底には、国の人権蹂躙政策だけではない問題があります。

 松沢病院で献身的な奮闘を続けている医療スタッフの先頭に立っている斎藤正彦院長は、怒りを込めて指摘します。
 「患者を退院させようとするときの最大の抵抗勢力は社会です。(精神科病院の)塀の向こう側のことは見たくないんですよ、自分が怖いものは」「コロナはわれわれが見て見ぬふりをしようと思っている問題を明らかにしました」

 日本政府がつくり、「市民」が加担してきた日本の精神医療の恥部が、コロナ禍、オリンピック、そしてパラリンピックの裏で、「塀」を飛び越えてあふれ出しています。

 ETV特集「ドキュメント精神科病院×新型コロナ」は8月5日午前0時からEテレで再放送されます。


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