臨床社会学者の春日キスヨさん(77)が、中国新聞(くらし面)に連載していた「夕映えのあとさき」が9月17日で100回を迎えるとともに終了した。最終回のタイトルは、「星の時間」。
「コロナ禍や災害時の困難を、一人、もしくは夫婦で生きねばならない長寿期高齢者が増えている。そんな中、災害や人生に絶望せず、人の薄情さを恨まず、前向きに生きる力をどうやって保つか」。春日さんはこう述べている。
< 心の病に苦しむ人と向き合ってきた心理療法家、霜山徳爾氏は言う。「誰の一生にも、どれほど不幸な人の一生にも、その人なりの美しい瞬間、いわゆる星の時間がきっと一度や二度はあったにちがいない。そして誰でもが、この美しい瞬間によりすがって生き、かつ死んでいったのであろう」(「素足の心理療法」)と。
心を病むときだけでなく、人生には、不幸に打ちひしがれ、絶望し、生きる意欲を失うときがある。そんなとき、この言葉が支えにならないだろうか。
自分の「美しい瞬間」「星の時間」を思い浮かべ、数えることで励まされ、生きる力を取り戻せないだろうか。
「星の時間」は人それぞれ。亡き夫が優しかった。運動会で1番だった。みんなで花火を見た。祖父母に愛された。野原いっぱいのワラビを取った…。つらいことばかりでないはずだ。ならば「これまでよく生きてきた」と自分を褒め、支えてくれた人を思い出す。そうするうちに、しんどく、寂しい思いが和らいでこないだろうか。
自分を貶めることなく、自分を肯定し励まし、人とつながり、必要なら心を開いて頼る。長寿期に必要なのは、こうした力だと思う。>
春日さんはまた、連載終了にあたってのインタビューをこう締めくくっている。
「孤立する高齢者や苦悩する支援の現場の実情を、政治に携わる人たちはどれだけ知っているのでしょうか。生きづらい時代を招いている政治の在り方に、私は常日頃から、深い怒りを感じています。…パーソナル イズ ポリティカル。個人的なことは政治的なことなんです。政治の責任はやはり重大です」(9月24日付中国新聞)
私にも「星の時間」はある。いろいろある。それを大切にしながら、人に心を開いて頼る「力」を身に着けたい。そして、「パーソナル イズ ポリティカル」。最期まで、政治の変革を目指したい。