アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「菅・翁長会談」ー「取消・撤回」一言もなし。進む工事の既成事実化

2015年04月07日 | 沖縄・辺野古

         

 5日の「菅官房長官・翁長知事会談」で、「粛々」という言葉が大きく取り上げられました。安倍政権が辺野古の埋め立て工事を「粛々」と強行していることはもちろん言語道断です。しかし、この日の会談では、もっと注目すべき言葉があったはずです。
 それは、「埋め立て承認」あるいは「岩砕破砕許可」の「取り消し・撤回」です。

 「やっと実現した」(翁長氏)会談で、まずすべきことは、安倍政権の埋め立て工事強行への抗議であり、承認の「撤回」「取り消し」の表明だったはずです。「上から目線」かどうかという問題ではなく、工事強行の事実そのものを止める意思を明確にすべきでした。
 ところが、翁長知事は会談で、「埋め立て承認撤回」どころか「岩礁破砕許可の取り消し」にさえ、一言も口にしませんでした。

 結果、会談後も、安倍政権による辺野古埋め立て工事(ボーリング調査)強行は続けられ、工事の既成事実化だけが進行しているのです。

 翁長氏は菅氏との会談で、あえて「承認・撤回」への言及を避けました。

 「埋め立て承認の取り消し・撤回などを視野に『あらゆる手法で新基地建設を阻止する』といった法律論に言及せず、本土との温度差や肌感覚の違いを、沖縄の歩んできた歴史から解き明かし、メディアを通して国民に理解を求めた格好だ」(6日付沖縄タイムス)

 実は当初、翁長氏の発言原稿には「取り消し」に相当する言葉がありましたが、会談直前にそれを削除したと報じられています。
 「会談用の原稿には『政府が埋め立てを強行するなら、県は今後いかなる行政手続きにも応じられない、と申し上げる』という一文すらあった。ただ、ここにはペンで大きく『×』。、翁長氏が冒頭発言で行政手続きに触れることはなく、政治的な議論に持ち込む策をとった。背景には移設阻止に向けた戦略の変化がある。これまでの行政手続きによる対抗策が『やや無理筋になっている』(県幹部)という認識があるからだ」(6日付朝日新聞)

 翁長氏が直前に発言原稿を変えたのは、会談前夜に安慶田副知事が菅氏が宿泊するホテルに裏口から入り、事前に打ち合わせをしたことと無関係ではないでしょう。菅氏と安慶田氏の下相談については翁長氏も、「段取りがあり、避けられないものだったと思う」(6日付琉球新報)と認めています。

 翁長氏が「戦略の変化」で、承認取り消し・撤回を引っ込めたとするなら、きわめて重大です。
 そうでないなら、なぜ「会談」で一言も「取り消し・撤回」を言わなかったのか。
 そればかりか、「あらゆる手段で基地は造らせない」と言ってきていたのが、この日は「建設することはできない。不可能になるだろう」(冒頭発言)に変わったのはなぜなのか。

 関連して見過ごせないのが、菅氏と翁長氏が、「国と沖縄県が話し合いを進めていく第一歩になった」(菅氏、会談後の記者会見)、「今後の取っかかりとして大切にしないといけない」(翁長氏、同)と、今後「話し合い」を継続することを確認し合ったことです。
 
 いったい、安倍政権と翁長氏は、これから何を「話し合う」というのでしょうか。
 「『30分で、何か言い尽くしたような感じがしました』。会談後、翁長氏は満足そうに報道陣に語った」(6日付朝日新聞)といいます。翁長氏はこれ以上、政府との「話し合い」で何を主張するつもりでしょうか。

 5日の会談は、前半の30分は公開されましたが、後半の30分は、副知事らも排した菅氏と翁長氏の差しの会談でした。2人の密室会談でいったい何が話されたのでしょうか。

 会談後の記者会見で、「非公開の会談では何を話したのか」と問われ、翁長氏は「抑止力論争や日米同盟の意義、経済振興で私の考えを話した」(6日付沖縄タイムス)と答えました。
 これらのテーマはいずれも政府が辺野古新基地を強行するために持ち出す口実であり懐柔策です。それが非公開会談のテーマであったことは、これからの政府と翁長氏の「話し合い」でも、これらが論点となり、「妥協案」が探られる危険性が高いと言わざるをえません。

 翁長氏が安倍政権と「話し合い」を続けるというなら、少なくともその内容はすべて公開して、県民・国民に明らかにすべきです。

  会談後も工事を「粛々と」強行している安倍強権政権に対し、翁長知事は直ちに「埋め立て承認の撤回」を宣言すべきです。少なくとも「岩礁破砕許可の取り消し」を即刻行うべきです。農水省の裁定を待たずとも、知事がやる気になればそれは可能です。

 県民から託された「知事の権限」を封印したまま、政府と「話し合い」を続け、その間埋め立て工事の既成事実化はどんどん進んでいく。そんな事態は一刻も早く止めなければなりません。

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