「海自カレー8年目の熟成 艦艇・部隊レシピ再現 舞鶴市内で提供」―8月31日付京都新聞夕刊の1面トップ(横貫)記事です(写真中)。
「海上自衛隊の艦艇や部隊で食べられているカレーの味を再現し、舞鶴市内の飲食店が提供する「まいづる海自カレー」。8年目を迎えた今年は初の公式キャラクターが誕生し、知名度向上に向けた奮闘が続く。さらにカレー以外の食でも、海自と連携した取り組みがスタートした」
こういうリードで始まり、「舞鶴商工会議所は…盛り上がりを期待している」で終わるこの記事に、軍隊(自衛隊)が市民生活に入り込むことへの問題性・危険性の指摘は微塵もありません。
京都新聞には折に触れ「海自カレー」の記事が載ります。「公式キャラクター」が決まった時も写真付きで紹介しました(8月9日付朝刊=写真右)。キャラクターは海自の帽子(軍帽)を被っています。考案したのは市内の中学生。「海自カレー」キャンペーンは子供たちも巻き込んでいるのです。
「海自カレー」は広島県・呉にもあります。やはり地元の商工会議所が海自とタイアップして普及につとめています。呉と並んで主要な海自基地がある(ということはかつ海軍基地があった)舞鶴でも同様の状況であることにさほど驚きはありません。
目を疑ったのは、紙面の下段に大きく掲載された「京都新聞旅行センター」企画・実施の旅行広告です。「海上自衛隊朝礼特別見学と絶品のフレンチ料理 2日間」(8月5日付)。何度か朝刊に掲載されたほか、折り込みチラシでも入りました(写真左)。「京都新聞創刊145年記念企画」です。
内容の説明によれば、「呉にて海軍料理の昼食賞味。呉市海事歴史館の大和ミュージアムで見学。…翌日は特別に海上自衛隊第1術科学学校で朝礼を見学します」。
政府・防衛省は「災害出動」や「基地祭」などで自衛隊を市民生活に浸透させることを図ってきましたが、最近では「ブルーインパルス」に加え、「海自(基地)カレー」「部隊レシピ」もその手段になってきています。「食」を通じた自衛隊と市民の新たな融合です。それは舞鶴や呉に限らず、自衛隊基地がある所では各地で起こっているのではないでしょうか。あるいは今後起こってくる可能性があります。
いま、政府・防衛省が沖縄などで強行している自衛隊増強の特徴は、自衛隊が民間の空港や港湾を使い、基地を民間住宅の近隣に増設する「軍民混在」です。さまざまな手段を使った自衛隊の市民生活への浸透は、「軍民混在」戦略とけっして無関係ではありません。
さらに重大なのは、そうした自衛隊の動向・戦略をメディアが無批判に、あるいは後援するかのように報じていることです。それはメディアが「軍民混在」を後押ししていることに他なりません。
かつてメディアは「大本営発表」を垂れ流す戦争報道で国家の侵略戦争に奉仕しましたが、そればかりか、軍歌の歌詞募集など新聞社独自の企画で「国民」の「戦意高揚」を図りました。京都新聞の「海上自衛隊朝礼特別見学」企画はそれを彷彿させます。
自衛隊とメディアがタイアップしたこうした動きが各地で広がることが懸念されます。