アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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核汚染水放出1年・韓国の反対運動に学ぶ

2024年08月27日 | 原発・放射能と政治・社会
 

 自民党政権と東京電力が地元漁協はじめ多くの反対を押し切って福島第1原発の核汚染水海洋放出を開始して24日で1年たちました。

 日本のメディアは、「周辺海域のモニタリング(監視)では、放射性物質の濃度が国などの基準を大きく下回っており、政府や東電は安全性への影響はないとの見解を示している」(毎日新聞24日付社説)、「モニタリングで海水などに異常は確認されていない」(24日付京都新聞=共同)など、政府・東電の言い分そのままに「安全」を強調。

 その一方で、「中国による日本産水産物の輸入全面停止が続き、全国の漁業者や水産加工業者が打撃を受けている」(同「毎日」社説)、「放出に強く反発する中国は日本産水産物の全面輸入停止を継続」(同共同配信)などと、反対しているのは中国だけだという論調を続けています。

 こうしたメディアの報道は、核汚染水の放出に反対する世界の現実を隠し、政府・東電に追随するきわめて危険な偏向報道と言わざるをえません。

 核汚染水の海洋放出に反対しているのはもちろん中国だけではありません。端的な例が隣国の韓国です。
 22日、韓国の国会議員会館で抗議集会が開かれました(写真左)。その内容はたいへん示唆に富んだものでした。ハンギョレ新聞を抜粋します。

<韓国国内の市民・環境団体で構成された「日本の放射性物質汚染水の海洋投棄を阻止するための共同行動」(共同行動)と「民主社会のための弁護士の会」(民弁)などは22日午前、ソウルの国会議員会館で討論会を開き、日本の核汚染水投棄に対する法律的争点と今後の課題について話し合った。

 キム・ヨンヒ弁護士は「投入された物質とその影響間の因果関係を証明する決定的証拠がなくても、廃棄物投棄による環境保護のために適切な事前措置を講じなければならない」というロンドン条約の「事前主義原則」に触れ、「福島原発汚染水に対しても適用されるべきだ」と強調した。

 さらに、「日本の核汚染水の放出問題は、韓国だけの問題ではなく、地球に住むすべての人たちの問題だ」とし、「中国政府や太平洋島しょ国の一部の国と共同で国際海洋法裁判所に提訴すれば、『公海上の海洋汚染』に対する問題提起ができる」と説明した。

 韓国と日本の原発問題を長い間研究してきた日本の松山大学の張貞旭(チャン・ジョンウク)名誉教授は「汚染水投棄問題は長期的被害を調べなければならないのに、韓国政府は『1年間何の問題もなかった』とし、汚染水に関する懸念を怪談だといって切り捨てている」とし、「この事案の原因をちゃんと理解していない。チェルノブイリ原発爆発当時にも即死した人は多くなかった」と指摘した。

 さらに張教授は「いま重要なのは、輸入水産物に対してストロンチウム89・90を測定した結果を必ず添付するよう日本政府に要求すること」だと語った。ストロンチウムはカルシウムと似た性質で、体内に入ると骨に簡単に蓄積され、骨髄がんと白血病の原因になりうる。>(23日付ハンギョレ新聞日本語電子版)

 こうした韓国の市民団体、学者、野党議員らの検討・議論は本来、汚染水の放出元(加害者)である日本でこそ行われるべきでしょう。

 日本のメディアは、中国を悪者にすることによって日本政府・東電の「正当性」を強調する偏向報道を改め、韓国はじめ世界(とりわけ環太平洋)の国々の市民、そして日本の市民・学者らが汚染水放出に反対している事実を公正に報道しなければなりません。


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