アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

映画「終わらない戦争」-真実を見極める目

2014年06月17日 | 戦争・遺跡

PhotoPhoto_2  広島大学で韓国人准教授がドキュメンタリ映画を教材に行った授業に対し、産経新聞が1人の「男子学生」の感想をもとに攻撃を加え、日本維新の会の国会議員が同調した問題については以前(5月29日)書きました。
 その映画「終わらない戦争」(キム・ドンウォン監督)の緊急上映会が16日夜、広島市内でありました。緊急の企画にもかかわらず会場いっぱいの60人が駆けつけました。

 「4ヶ国5人の被害証言(「従軍慰安婦」=戦時性奴隷)は『洗脳』『反日宣伝』なのか、あなた自身で判断して欲しい」。それが主催者(しずく工房)の意図です。

 映画は、被害者の証言と、日本や韓国、国連などの研究者・当事者の証言、当時のフィルム、再現映像で構成されています。実際に見れば、産経新聞の「まったくのデタラメ」(5月24日付「産経抄」)という論評のデタラメぶりは一目瞭然です。

 「学問の自由」への攻撃ももちろん重大です。同時に、「まだ戦争は決着していない。たいしたことないと言いながらたいへんな事態を招く。同じやり方がいま集団的自衛権行使で行われようとしている」という、上映後の主催者のコメントにまったく同感です。

 そして、もう一つ。
 産経新聞(5月21日付)は、受講した「男子学生」が「慰安婦募集の強制性があたかも『真実』として伝えられたことに疑問を呈し」たと書いています。これが本当だとしたら、この映画を見てそういう感想を持つ学生がいることに、強い危機感を持ちます。

 5人の被害者の証言は、「慰安婦募集の強制性」という生易しいものではありません。強制連行、暴力的拉致以外のなにものでもありません。
 そして彼女たちの証言が真実なのか、ウソなのかは、実際に映画を見れば疑問の余地がありません。

 もちろん真実は多角的に追究されるべきです。しかし、それは真実への懐疑とは違います。真実は見極めていかなければなりません。その際、歴史の当事者の証言はなによりも尊重されるべきです。

 家族にも、だれにも言えなかった被害の実態が、渾身の勇気を振り絞って証言された重さを、私たちはしっかり受け止めなければなりません。
 ウソなのか真実なのかは、証言者の目を見れば分かります。それが分かるくらいの人間性は私たちにも備わっていると信じたい。

 来年は敗戦70年。「歴史の証言(オーラルヒストリー)」の重要性がますます増してきます。
もちろん、「戦時性奴隷」だけでなく、「原爆被爆」、そして「沖縄戦」。
 その「歴史の証言」にどう向き合うかは、私たち戦後生まれの日本人すべての大きな課題ではないでしょうか。

 <気になる世相>

 サッカーW杯と若者の熱狂


W 日本人は一体いつからこんなにサッカーファンになったのでしょうか?

 先に「ワールドカップと集団的自衛権」の「危険な関係」を書きましたが、その後の報道を見ていると、別の危険性を感じます。

 テレビニュース(特にNHK)で見る限り、その応援の熱狂ぶりは尋常ではありません。
 もちろんサッカーの熱狂的なサポーターは今に始まったことではなく、またワールドカップが特別なものであることは分かっているつもりです。

 それでも、多くの人々、特に若者が、「サムライブルー」のユニホームで統一し、「ニッポン、ニッポン」と絶叫している姿は、どうしても気になります。
 その中には、職場や学校で、周りの熱狂ぶりに乗り遅れまいと応援に加わった、にわかサッカーファンが少なからずいるのではないでしょうか。

 そこに、日本独特の「世間」「横並び」意識を感じます。
 「ニッポン、ニッポン」という「国家」連呼の中、現代日本社会の不気味さと危うさを感じてしまうのです。


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