「尾道発」のドキュメンタリー映画「スーパーローカルヒーロー」を31日、シネマ尾道(尾道でただ1つとなり踏ん張っている劇場)で観ました。
尾道駅前の古民家でインディーズのCDや無農薬野菜などを売っている「れいこう堂」の店主・信恵(のぶえ)勝彦さん(55)の物語です(写真左・れいこう堂の前でアーティストたちに囲まれる信恵さん=中央)。
店の売り上げではとても食っていけない信恵さんは、早朝4時間の新聞配達などアルバイトをしながら、採算度外視でコンサートを企画。自らは裏方に徹し、アーティストたちから絶大な信頼を得ています。
それだけでも素晴らしいのですが、映画の主題は信恵さんの“もう一つの顔”にあります。それは東電福島原発事故で自主避難してきた親子たちへの支援です。
空家を見つけ、避難親子のたまり場をつくりました。困ったことがあればすぐに駆けつけます。口より早く手足が動きます。子どもたちにとっては楽しい遊び相手。避難親子から「月光仮面のような人」と慕われています。
監督の田中トシノリさん(写真右端)は、「3・11」当時、留学先のイギリスに。帰国して「何かしなければと思っていたことを、やっていたのが信恵さんだった」ことから、信恵さんに心酔し、その活動・生きざまを映画にすることを決意しました。
映画は信恵さんの行動、人柄を感動的に伝えますが、それだけではありません。
震災直後に東京から避難し、信恵さんと親しくなった母子が、やむを得ない事情で東京に戻ることになりました。別れの席で、お母さんは涙も拭わず語ります。「何が子どものためなのか。ほんとうに自分はどうしたいのか。取り返しがつかなくならないうちに、考えてほしい」
上映後のトークショーで、信恵さんは言いました。「自分ができることをやっているだけ」
田中さんも異口同音に、「自分ができることを行動で示す。行動しなければ何も変わらない」
「自分ができることをやる」。なんと単純で、なんと難しく、そしてなんと偉大なことか。
世の中が変わるのは、きっとこの「単純」なことを、名もない私たち一人ひとりが実行したとき。映画とトークからそう痛感しました。
タイトルの「スーパーローカルヒーロー」。「信恵さんのことではありません。私たちの周りで頑張っている一人ひとりのことです」(田中さん)
<気になるニュース>
「沖縄が求めているのは」?
5月30日付の中国新聞に、「沖縄の負担軽減へ 外務副大臣と面会 岩国基地周辺議長ら」というベタ記事がありました。
副大臣らとの面会を終えた岩国市議会の桑原敏幸議長はこう述べたといいます。
「沖縄が求めているのは、本土の人間の温かい気持ち。オールジャパンで本気で(沖縄の負担軽減を-引用者)考える場が必要だ」
この桑原議長の言葉を、本土のみなさん、どう思いますか?
一昨年11月に沖縄に行く前なら、おそらく私も別におかしいとは思わなかったでしょう。
しかし、今は違います。この発言には重大な問題が横たわっています。
「温かい気持ち」とは、温情であり、同情です。それはとんでもない思い違いです。
沖縄に過重な基地負担を押し付けている元凶はもちろん日米両政府ですが、それを許しているのは「本土の人間」にほかなりません。
「沖縄が求めている」のは、「本土の人間」がその自らの罪を自覚し、沖縄の負担軽減、さらには日本から軍事基地を撤去するために、自らの責任を果たすことです。
けっして温情や同情などではありません。
(沖縄タイムス30日付にも同行動についての記事はありましたが、桑原氏の発言は載っていませんでした)